第四話 自分勝手お嬢様
お待たせしました!
第四話です!今回は二人が……⁉
どうぞお楽しみください!
街を出てからすぐの草原で、紅魔は茫然と立っていた。
彼の目の前にはモンスターに杖を構えて立っているローラ。彼らはクエストでモンスターを討伐しに来ている。
だが、紅魔はクエスト内容を知らない。ローラが教えてくれないのだ。
「あ、あの……ローラさん。そろそろクエスト内容を……」
「安心してください! 大丈夫ですから!」
だから、俺が大丈夫じゃないから聞いてるんだって! 何かあったら困るし!
この子、自分勝手すぎ!
紅魔は何もやってないのに疲労を覚えた。少し変な人に遭遇したと思い始める。
やる気は凄いので、見ているが。
「あ、来ましたよ! ミニドラゴンです!」
「ミ、ミニドラゴン?」
「はい! あれをニ十匹討伐します!」
は⁉ ニ十匹⁉ 多すぎませんか⁉
紅魔は少し加勢する気でローラに近づく。流石に数か数。女の子一人には任せられない。
しかし、ローラは気にする様子はなく、魔術詠唱を始める。
(あ、そういえば魔術師って言ってたっけ……)
紅魔にとっては初めて見る魔術。どんなものか楽しみだった。
「全てよ凍てつけ! 氷の雨!」
「おお……って危なっ!」
ローラを中心に、辺り一面に氷の塊が雨のように降り注ぎ、地面に突き刺さる。氷の塊を直撃で受けたミニドラゴンは一撃で動かなくなる。
範囲が広いせいか、紅魔の方にも降って来た。慌ててかわすが、何回か掠る。
「コウマさん、終わりましたよ! ……いかがでしたか?」
「す、凄かったけど……こっちにも飛んできたよ……」
「ご、ごめんなさい! クエストは達成したので帰りましょう」
あの一回の魔術で討伐数を達成とは……。やっぱり凄いんだな、魔術って……。
ローラの魔術を見た紅魔は魔術の凄さに感心した。同時に魔術を使ってみたくなった。
剣士で使えるかどうかは分からないが。
ギルドに着くと、周りから変な視線の御出迎えを受ける紅魔。
どれも『うわ……。こいつ大丈夫か? 正気か?』というものである。その視線を浴びながらもカウンターに向かう紅魔。
カウンターに着いたところで、不機嫌顔のユウナと遭遇。
「あ、ユウナ。おはよう……」
「ちょっとこっちに来なさい。コウマ君」
昨日までと違うユウナの雰囲気に押され、言う事に従う紅魔。
ギルド内で人目がつかない所まで連れていかれると、普通は男子が女子にするはずの壁ドンをユウナにされる。
表情から少し怒ってることを紅魔は察する。
「あ、あの……。何でしょうか……?」
「何でしょうかですって……? 貴方は自分が何したかわかってないの?」
「う、うん……」
「……今後メンバー募集勝手にしたら許さないから。絶対に。あと、私を呼ぶようにして」
「は、はい……」
ユウナの剣幕に、抵抗できずに返事をする紅魔。彼は彼女が怒っている理由は分からない。
だが、従っとかないとこの後大変なことになると本能が彼に告げていた。そのため、おとなしく従う事にする。
それでも、怒っている理由ははっきりさせたい。
「あ、あの……なんで怒ってたんですか?」
「だ、だって……コウマ君が他の女に取られると思って……」
「え? なんて言った……」
「何でもない! ほら、あの子が探しているよ!」
え……すっごい気になるんだけど⁉ なんで教えてくれないの⁉
紅魔はなんとかして聞きたかったが、ユウナがうつむいたまま何も言わないため、仕方なくローラの所に向かう。
離れるときに小声で『馬鹿……』と聞こえたが、今は気にしない。
「あ、コウマさん! こちら報酬です!」
「あ、ありがとう……」
「そ、それで……仲間の件は……」
「あ~……その事なんだけど……。俺の仲間を紹介しても……」
『俺の仲間』という言葉がでた瞬間、先程まで明るかったローラの表情が一瞬で暗くなる。
ここまで人の表情が一瞬で変わる所を、紅魔は生まれて初めて見た。そんな気がする程。
「お仲間……。一人ではないのですか?」
「あ、うん……。紹介するからちょっとこっちに……」
ローラに少し怯えながらも、紅魔はユウナの所に連れて行く。
声をかけると、ユウナは笑顔で振り向いた。ローラの顔を見た瞬間、この世の終わりというような表情をしたが。
「は、初めまして……。ユウナと言います。コウマさんの仲間募集張り紙を見て来たんですよね? コウマさんも納得してるみたいだし……。これからよろしく?」
「こちらこそ初めまして。ローラと言います。早速ですが……コウマさんから離れてくれませんか? 邪魔ですので」
ローラは笑顔で内容は酷いことをユウナに言う。ユウナは笑顔を崩さずに聞き終えると、紅魔にあるエモーションを出した。
(何々……。イラつく、うざい、不合格、さっさとどっかに捨ててこい……)
少し酷いと思ったが、気持ちはわからなくもなかった。自分も言われたら同じような反応をする可能性があったからである。
「あはは……。何を言ってるのかな、この『自己中お嬢様』は。コウマさんはすでに私の仲間としてギルドに登録してあります。ですので……」
「なら、その登録を早く解除してください。コウマさんは私の『主様』ですから」
いままで笑顔だったユウナが、その言葉で何かが切れる。
「……ふざけんじゃないわよ! コウマ君は私のものなの! 大切な永遠の相棒なの!」
「貴方の方こそふざけないでください! コウマさんは私がずっと前から目をつけてたんです!」
「知らないわよそんな事! 先に声をかけたのは私だもん!」
「そんなの私だって知りません! とにかく貰っていきます!」
先程まで穏やか(とは言いにくい)やり取りはどこへ行ったのか、物凄い怒声で口喧嘩を始める二人。
その勢いは、紅魔が手に負えない域に達していた。周りはにやけながらその様子を見ている。
「あ、あの……。二人共仲良く……」
「コウマ君は黙ってて!」
「そうです! これは私達二人の問題です!」
「は、はい……」
何とか仲裁を試みるも、秒殺で言い返される紅魔。
しかし、彼の苦労……『モテモテ』はまだ序章にすぎない……
いかがでしたか?
次回もよろしくお願いします!