第二十二話 描かり始める未来と変わらぬ過去
今回の話で三章が終了します!(唐突過ぎるだろ)
今回の話は、意外と後の物語に響いたり……?
どうぞお楽しみください!
「……コウマ様とはお話できましたか?」
「リサ……。あぁ、できたよ。少なくとも楽しい話題ではなかったが……」
部屋を出ると、リサが扉の前で待っていた。紅魔の世話をしようと思ったが、シャルが紅魔と話しているの聞いて入れなかったのだろう。
「シャル様? どうなさいましたか?」
「私は、力をつけてきたつもりだ。誰にも負けないように……皆が笑顔でいられるように」
「そうですね……。シャル様はとてもお強いです」
「だが、それは違った。私は……無力のままだった。小さい時から何も変わっていない。目の前の、大切な人の事を笑顔にする事も出来ないなんてな……」
「シャル様……」
その表情は、何処か寂し気で悔しそうだった。
シャルの言いたい事は、ずっと一緒だったリサにはよくわかる。彼女が今までどのような努力を積み重ね、どんな生き方をしてきたのか知っているからだ。
「なぁ、リサ……。今からでは遅いかな」
「な、何がですか?」
「コウマの心を……今から、楽しい思い出で埋め尽くしたい。それが、私にできる最良の事だと思うんだ」
「遅くないと思いますよ、シャル様。私も、そうした方が良いと思います」
話は所々しか聞いてないけど、コウマ様がどのような道を歩んできたのかは把握しました。
……彼は、とても優しい。短期間過ごしてきた私でもそう感じるのだから、誰にでもそうなのでしょう。
そんな彼の事を……。私はその人達を許せません。
「しばらく予定はなかったな、リサ」
「はい。もともと今は繁忙期ではございませんから」
「よし……明日から、コウマと出かける。忙しくなるぞ」
「はい!」
二人は部屋を後にして、計画を立てるべく歩いて行った。
「馬鹿だな、俺……。なんであんな話をしたんだろう」
シャルが部屋を出てから紅魔は一人後悔していた。
別にシャルの同情を求めてたわけではない。話してもいいかな、という感じだったが深く話し過ぎた。
「なんか、シャルさんに申し訳ないな……。俺の暗い過去なんて聞いてもつまらなかっただろうし」
話したところで、起きた事は変わらない。自分の心の傷など癒えない。
そんな事はわかっている。だから、紅魔にはどうしようもなかった。
「救われないと知っているくせに……未だに忘れられないんだよな……」
何度試しても無理だった。一度忘れた気になっても、ふとしたことですぐに思い出す。
最初は何度もそれを繰り返した。こんなトラウマ、すぐに払拭してやる。そんな思いで。
結局、それは叶わなかったわけだが。
「まぁ……それが叶っていたら今の俺なんて存在しないんだけどな」
それが克服できていたなら、俺はきっと……。
「……望んでも実現しない未来を考えてどうするんだ俺は」
紅魔はそのままベットに潜り、寝直した。シーツを掴む手は力強く握りしめられ、顔がうずくまっていたところは再び濡れ始めた。
「おい、今日も来たぞ村雨が! さっさと準備しろ!」
教室の中が慌ただしくなる。少人数が、あちこちに何かを仕掛け始める。
それを、止める者は誰もいない。ただ、成り行きを見ているだけである。
「皆、おはよう……ぶっ⁈」
紅魔が扉を開けた途端、頭上から降って来たバケツを頭から勢いよく被った。中には大量の水が入っていて、瞬く間に紅魔はずぶ濡れになる。
量が多すぎて、辺り一面水浸しになった。
「ぎゃはははは! だっせーなぁ、村雨君よぉ!」
「頭から水を被るって、どんくさいですねぇ!」
「……」
今日もか。毎日やっていて飽きないのだろうか。
俺の机にも……いつもと同じように『死ね』、『消えろごみクズ』、『くそ雑魚紅魔』と落書きされていた。
その机の中央には、花が入った花瓶が置かれてある。
俺の教科書などの私物は壊され、無残な姿で放置されている。中は生ごみで溢れかえり、異臭が立ち込めていた。
止める者など誰もいない。先生も、周りの同級生も見て見ぬ振り。
俺の信じ続けて来たものが徐々に崩れ始めてるのが分かる。だけど、俺はそれを失う訳にはいかない。
失う訳には……。
「おい、皆席に着け~……。お、なんだ、転校生でも来たのか?」
「……先生」
「何言ってるんですか、先生? こいつは村雨君ですよ~?」
「村雨……おかしいな、俺は村雨は事故死と聞いたんだが」
……とうとうここまで来たか。どうやら完全に俺をこの学校から亡き者にしたいらしい。
ここにはもういられない。ここにいては、俺の大事な何かが壊れる気がする。
「……さようなら、皆」
この出来事をきっかけに、俺は初めて転校というものをした。
だが、この転校が最初で最後になる事はなかった。俺はその後も各地を転々と移動する羽目になる。
だが、この話は今するべきではないだろう。
外はまだ薄暗く月が光っている。
部屋の一室、ベットに眠る少年は、涙を流し苦悶の表情を浮かべている。
「またお前は……こういう表情をして」
「絶対に成功させましょうね、シャル様……」
「あぁ……」
女性は、少年の涙を手で払う。そしていつまでも、頭を撫で続けた。
いかがでしたか?
前回、そして今回と私の実体験を少し混ぜて執筆したのですが……。
自分の頭の中と書きたい表現が不一致過ぎて何回も考え直してます(笑)。唐突にいい案が浮かんでも、書けない状況の時が多いので……。
いざ! っていう時には全て忘れて一からっていう状況ですかねぇ、最近は。
Twitterで聞いた時に教えて貰った、ノートに書くという作業を本格的にやろうかなと考えております。
(大まかな内容、キャラの設定などは書いているのですが)
ここからはおなじみお礼のコーナー!
いつも読んでくださっている読者の皆様! まことにありがとうございます!
これからも精進してまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます!
また、現在Twitterに置いて小説を募集しております!詳しくは私のプロフィールから!
それではみなさん、4章でお会いしましょう!