第一話 異世界転生された件について
新作小説スタート!
ぜひ読んで行ってください!
広い謎の空間に、二人の人間がいる。
一人は先程まで家にいたのに、気付いたらここにいる紅魔。もう一人は紅魔に意味不明な事を言った一人の少女。
彼はこの状況を整理する事にした。
「え~っと……もう一度言ってもらっても?」
「はい。貴方は異世界転生する事が出来ます」
「そうですか……」
この人の言ってることがよく理解できないんだけど⁉
紅魔は後ろを向き、頭を抱える。行きたいとは願っていたが、現実になるとは思っていなかった。
「あ、あの~……。大丈夫ですか?」
「え、まあ……」
「あ、すみません! 名前言ってなかったですよね! 私は女神エルレシア。これから紅魔さんが行く世界で崇められているものです」
「は、はあ……」
別に自己紹介を求めて無い紅魔は適当に聞き流す。エルレシアは気にしてない様子で話を続ける。
「それでですね~。今すぐいけるのですが……どうしますか?」
「それって同意を求めなきゃいけないの?」
「はい。紅魔さんは死んだわけではありませんので。異世界に行ってしまうと、いろいろと……」
「いろいろとは?」
「そ、それは……まぁ、気にせずに!」
いろいろってなんだよ! ちゃんと説明しろよ! 怖いだろ!
女神の曖昧な説明に紅魔は異世界に行くのを一瞬ためらう。だが、せっかくのチャンスを逃す訳にもいかない。
彼は少し悩んだ。その間、エルレシアはずっと彼の事を見ている。
「……よし、決めた。俺行くよ、異世界」
「本当ですか⁉ 紅魔さんに関する記憶が消えちゃうのに⁉」
うぉい! なんだそれは! まさかさっきのいろいろってそれか⁉
エルレシアから衝撃的な事を聞いた紅魔は、彼の決心が揺らぐのを感じた。
「やっぱやめようかな、行くの……」
「わ~! 大丈夫ですよ! きっとなんとかなります!」
「……本当か?」
「本当です!」
少し不安が残るが、紅魔は異世界に行く事を決意する。
エルレシアは魔方陣を紅魔の足元に展開、異世界に転送する準備を整える。
「では、行ってらっしゃい! 貴方の事を見守ってますよ、紅魔さん!」
「は、はい」
魔方陣が輝き出す。それに伴い、紅魔の視界が奪われていく。あまりの眩しさに紅魔は目を閉じた。
(これからどうなるんだ、俺は……)
そんな事を思いながら。
「ん……ここは……?」
次に気付いた時には、紅魔は街の門によりかかるように座っていた。
彼の目に飛び込んで来た光景は、先程の空間でも、自分がいた世界とも違っていた。
奥に森林が見え、まだ整備されてない道が広がっている。振り返り街を見ると、教科書に載っているような街並みがあった。
「すげぇ……。本当に異世界に来たんだ……」
紅魔は感激した。行けると思ってなかった所に今自分がいる、それだけで。
門には門番とかがいなさそうだったため、紅魔は街の中に入る事にした。
「あ、でも俺今自分がどこにいるのかさっぱり分かんねえなぁ……。ついでにこの街に何がどこにあるのかも……」
彼は道を行きかう人に聞いてみる事にした。
……が、今まで人と話したことが無いぼっちだった紅魔。どう話かければいいのかさっぱり分からない。
そのため、彼はただただ人を眺めてるだけで終わる。
「あ、あの~……」
「ふ、ふぁい!」
そんな彼に声をかける人がいた。身長は紅魔と同じくらいの赤髪。発育は普通の人よりかはよさそうだった。
身長が同じくらいと言っても、紅魔の身長は普通の男性のより低い。女性にとっては標準である。
「お困りでしたら、力になりますよ……?」
「あ……は、はい。ありがとうございます。この街に来たばかりで右も左も分からず……」
紅魔はなんとか勇気を振り絞って会話をした。普通なら大したことはないはずなのだが。
(や、やばい……!ここからどうすればいいんだ……⁉)
普通に会話していても彼の内心はパニック状態。挙動不審な動きを女性の前でしていた。
「そうなんですか……。もしかして、冒険者になりたくて来たとかですか?」
「あ、はい! そんな感じです!」
紅魔は何をすればいいのかわからなかったが、父親が前に『異世界に行った主人公は冒険者とかになるんだよな~』とか言ってたのを思い出し、女性に話をあわせる。
「ならば、一緒にギルドに行きませんか⁉ 私、ユウナと言います!」
「できれば……。俺は村雨紅魔って言います」
「ムラサメコウマ……さん?」
「……紅魔でいいです。よろしくお願いします」
「こちらこそ! こっちです、行きましょう!」
ユウナは紅魔の手を引っ張るとギルドに向かって駆けだす。
(なんだなんだ⁉)
ユウナは楽しそうだったが、紅魔はわけが分からないという感じで引っ張られていく。ユウナに任せるように。
「登録料六十シアいただきます。よろしいですか?」
「……少し待ってください」
ギルドに着き、登録しようという所で紅魔に問題が発生する。
(登録料てなに⁉ 会員登録みたいなものに金かかんの⁉)
紅魔はこちらの世界に来る際、エルレシアから何も貰ってない。つまり彼は手ぶらの状態で来たのだ。
当然お金も持ってない。
「どうしたの、コウマ君?」
「いえ、それが……お金持ってなくて……。登録できないんですよ……」
紅魔はユウナに申し訳なさそうな顔をする。ここまで連れて来てくれたのに、登録できませんでしたなんて、情けない。
彼は今すぐこの場から逃げ出したくなる衝動にかられた。
「そっか……。じゃあ、能力検査はしたの?」
「いや、まだだけど……」
「じゃあ、してきなよ! 一定以上の能力値を出せば無料になるよ!」
ユウナに言われ、紅魔はもう一度カウンターに向かう。受付の人は笑顔で迎えてくれた。
「あ、あの……。能力検査してもらってもいいですか……?」
「はい! こちらにどうぞ!」
受付の人に案内され、紅魔はカウンターの奥に入った。中央に、巨大な不思議な装置がある。
「これに手を軽く触れて下さい」
「は、はぁ……。こうですか?」
「では、見てみますね……」
広間に沈黙が訪れる。紅魔の緊張も高くなる。
しばらくして、受付の人が機械を止めた。
「おめでとうございます! 能力値が基準値を超えた為、登録料が無料になります! ようこそ、我がギルドへ!」
こうして、紅魔はギルドに入った。同時に、異世界生活への第一歩を歩み始めた……
いかがでしたか?
次回もよろしくお願いします!