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第五話『暴力兔』

というわけで展開が進みます。

新キャラも登場です。

テンプレといえばテンプレですが、設定はこれるように頑張ります笑


※17.12.15

文章一部改訂しました





 世界最弱。

 その名をほしいがままにする種族が卯人族である。


 武芸や魔術において、最も不相応な力をもつものの集まりである。

 特徴として、人間の形をしているが、即頭部に耳を付けている人族と同じように、耳の神経が即頭部にある。

 筋肉の発達の影響なのか、その耳は横にではなく縦に伸びるようになり、まるでそれはウサギの耳を模したものである。 聴覚だけなら世界で最も優秀な種族と進化する。


 もう一つ特徴を挙げるなら、童顔の者が多く、女性などマスコットとして『かわいい』が相応しいと知られる。

 なぜかはわからないが、童顔、低身長に対して胸部が育ちやすい種族でもある。

 要するに男性の性欲の対象になりやすいのだ。

 奴隷としての人気も高く、人攫いの対象になっている。


 普通の卯族ならば、人攫いに出くわしたら、種族特有の隠密性で逃げるか、逃げ切れずにつかまるか。

 殺されることはないのが幸いなのか、それとも殺されずに生き地獄を味わうことが不幸せなのか。


 そんな世界最弱の種族と呼ばれる卯人の中に、獣人族最強の拳闘士がいた。


 その拳闘士は卯人族の英雄になれる素質はあった。

 しかし、性格に問題がある。


 凶暴すぎるのだ。


 一日に一回、必ず他人を殴る習性があるのだ。

 無差別に、種族老若男女問わず、彼女に近づいたものはそれだけで必ず殴られてしまうのだから、説得のしようもない。


 無論、なんとかいさめようと試みるものもいたが、あまりの凶暴さに拳闘士を捕らえることを卯人族はあきらめ、村八分のごとく、拳闘士とその家族を差別することで危険を避けるようになる。

 不思議と拳闘士はそれを受け入れており、滞りを同種族にぶつけるようなことがなかった。


 アンバランスな拳闘士の性格を考慮した結果、それに接触するもの、命の保障しかねるというお触れまで知れ渡っている。





◆◆◆◆◆◆◆◆




 ユタカとチヨが主従契約を施して数日。

 チヨの案内で洞窟から出発することに成功したユタカは、その世界の壮大さに驚かされることになる。


「こ……、これは……」


 都会育ちで、森や山とのかかわりの薄い生活を送っていた稲妻地裕という男にとって、目の前の草原広場には新鮮さが溢れている。

 空気がおいしいという感覚はユタカにはわからない感覚ではあるが、なんとなくそれがわかるような気がする。

 大きく深呼吸をして、それを実感した気がした。


「あまりここの空気、吸わないほうがいい。魔力で空気、汚れてる」


 ただの気のせいだった。


 排気ガスとは違うものではあるが、この場所は魔力が空気を汚すようだ。

 異世界転生ものの小説にほんのそうさくぶつを参考にするなら、その魔力は瘴気とでも呼べるのだろうか。

 ただの人間がこの魔力を吸ってしまうと、身体の中から魔力によって汚染され、病のもととなるらしい。


「呪いとは言わなくても、結構面倒」


 今の時代のことはわからないことではあるが、チヨの知識によると、空気と共に流れる魔力を吸い込むことで肺から血管を通って全身に魔力をいきわたらせる。

 それが魔術という技術の第一関門なのだそうだ。

 しかし、その魔力が汚染していた場合、血管から通って身体機能を変質させるのだろうだ。


「それが獣の身体に変異したり、耳が大きくなってしまったりっていうゆえん。」

「ふーん。」


 世界にはいくつか種族がいる。

 人族、魔族、獣人族、森人族エルフ、竜人族、海人族。

 全てもともとは人族だったのだが、その汚染された魔力によって分別されてしまったのがその六つの種族であると言われている。

 だから、たまに人族と人族の間に生まれた子供が獣人族だったり、森人族エルフだったりすることもあるのだそうだ。


「ってことは、要するにチヨに呪いを掛けた魔王も、実は人族だったってこと?」

「先祖の話。 人族も昔はサルだったっていうのと同じ」


 なるほどなと納得したユタカ。

 確かに、日本を含めた地球にも、人間の祖先は猿だったりするといわれているが、それと同じ話になっているようだ。


「私たちがさっきまでいたとこ、汚染した魔力の充満していた洞窟。迷宮と呼ばれてるところ」

「うん? じゃああの部屋にいた人たちは?」

「もちろん、抵抗できないような種族はすでに全滅している。昔はもっといろんな種族がいたらしい」


 チヨのいた時代から何年経っていたのか、眠っていた本人がわかるわけがない。もしかしたら種族の均衡などは変わっているかもしれない。もしかしたら種族間交流が悪い展開になっていて、戦争が勃発しているかもしれない。逆に交流が良い展開になって友好関係にあるのかもしれない。

 ここまでくると現地にてそれを確かめる必要がある。


「大抵は体内の魔力で汚染された魔力の抵抗は身につく。あの人族たちはこの迷宮に来ても正常に保てるほどの実力者だったのかもしれない。詳しくは……わからないけれど……」


 自分の目の前で亡くなった三人の人間を思い、チヨは声を失った。

 本当ならば迷宮で閉じこもっているはずだった彼女。未だに眠っているはずだったのだ。

 それが三人の人族のいたずらによって呼び起こされ、やらなくても良かった殺しをやってしまった。

 それがどれだけ嫌な思いなのだろうと思うユタカには、その規模を想像することはできなかった。


「でも、ユタカが魔王を倒してくれる。信じてる。」


 魔王が死ねば呪いが解呪されるのだろう。

 チヨがそれを望んでいる。チヨはそれを信じている。 チヨは……


 こうして会話ができるのも、ユタカとチヨが二人しか生物がいないからだ。

 草木も生物と考えるのなら制限なく枯れてしまうだろうが、変わらず周りは草木で生い茂っている。なぜかこの呪いは植物には通用しないらしい。植物には音を聞き分けることができないからかもしれないが、それは推論でしかない。


 ユタカはチヨに連れられて迷宮から離れ、どんどんと森の奥深くを進む様子を問に思うことは不思議なことではない。

 恐らくチヨは昔の記憶を頼りに咲きを進んでるに違いない。

 そうであってほしいと願う。


「で、オレたちはどこに向かってるの?」

「さあ」

「ハイィ?」


 字面にするとわからないが、チヨの口にした『さあ』という言葉は『さぁ、おとぎの国へ行こうぜ!』というものではなく、『さっぱりわからないです』といっているものだった。


「え、道わかんないの!?」

「ん、」


 悪びれることなくうなずくチヨ。


「あのなぁ、ならなんでそう言わなかったんだ?」

「だって……ユタカが止まってたから……」


 つまりチヨの思考回路はこうだ。

『あれ、ユタカが止まってる。どこに行くんだろう。まぁいいや、歩いちゃえ』

 ということで適当に歩いていた結果がこれだ。


「いやいや、言おうよ!? わかんないんだったら!! 言ったところで何ができるかわかんないけどさぁ!?」

「ん、次からはそうする。どうするの?」

「とか言われてもなぁ……」


 言われたので言ってみました。

 そういうように清らかな目でユタカを見る。

 そんな彼女には何を言っても無駄かなぁと思ったユタカは、ため息をつきながら言った。


「とりあえず人里を目指したいなぁ……」

「それな……っ」


 会話を続けようとすると、急に口を噤んだチヨ。

 その様子をさらに疑問に思ったユタカだったが、その答えを示すように指をある方角を差した。


 示された方向に視線を向ける。

 その先は変わらず生い茂った木と草で覆われて視界を防ぐ光景だった。

 四方八方木に囲まれているユタカにとって、代わり映えのしない光景が映し出されていた。


 しばらく凝視していたユタカ。

 その場ではユタカとチヨの固まる姿だけが存在していなかった。

 しかし、次第にチヨが急に口を噤んだ理由がわかってくる。


 時間が過ぎていくに連れ、ユタカの耳にも聞こえてきた。

 草を掻き分ける音だ。

 何らかの生物がユタカらに迫っているのだ。


「誰かいたってことか?」


 ユタカは問いかけながらチヨを見た。

 黙ってチヨはユタカを見つめてうなずいた。

 ぜんぜん気づかなかったユタカは素直に関心する。


「よくわかったね。すごいなぁ」


 そういわれ、チヨは豊かではない胸を張って、無表情ながらなんとなく笑っているような顔を映しだす。

 最初は意味がわからなかったユタカだったが、なんとなくわかってきた。

『すごいでしょ、ドヤァ』といっているのだ。


「すごいすごい」


 ほほえましいものを見た気がして、若干癒されたユタカは、再び警戒を音のした方向に視線を戻す。

 その音はどんどん大きくなっていく。

 明らかにユタカらの存在に気づいていて、それを目指して向かってきていることがわかる。


「誰かいるのか?」


 その方向にユタカは声を掛けてみる。

 しばらく返事がないため、明らかな敵意を持っているものと思い、ユタカはなんとなく構えてみる。

 武器やら武術の心得はないが、なんかパンチしたら相手を倒せるくらいに強い力を身に付けちゃってるユタカなので、なんの意味も無いわけでもないと思っている。

 しかし、その何かはどんどん音が遠ざかっていく。

 もしかしたら立ち去ったのだろうかと思ったユタカがチヨに視線を向けると、顔を横に振っていた。

 未だにユタカらに向かってきているのだ。


 しかし、もうすでに草を掻き分ける音は聞こえない。

 ここまでくると、どこから何かが来るのかがわからない。


 何をするでもない、気づいたら背後から人が飛び出してきていて、ユタカがわずかな音に気づいて視線を向けたらその人影はユタカに向かってコブシを振り上げていた。

 唖然とするユタカを置いてけぼりにしたその人物は


パーン


 と、まるでほほをはじいたときのような音を立てて止まった。

 その拳はユタカのほほを捉えており、恐らくそのまま殴ったのだ。

 しかし、すごい音がしたように聞こえたユタカは微動だにしなかった。


「……え?」


 その人影が思わず上げてしまった声に、ユタカは再び頭に疑問符を浮かべる。


「あれ? どうして?」


 ユタカが疑問符を覚えたその理由。

 その声音がかわいい女の子の声だったからだ。

 まるで萌えアニメに出てくる女の子で、声優が媚を売るように作った声を天然で出しているのだ。


「えっと……」


 ユタカは意味がわからないままその人影のコブシをほほに付けられながら声を出す。

 すると、人影は忘れていた我を取り戻して一気に後ずさる。


 ずざざーっ


 着地すると同時に、その人影はひざを垂直に曲げ、頭を地面に接触させる。

 ゴンっと大きな音を立てていたので、頭には相当な痛みが走っているはずだ。


 その様子に唖然とするユタカとチヨ。

 人影は、息を切らしながらこういった。


「申し訳ありません!! わざと殴りました!! 仕返しに殴ってください!!」


 兎のような形の耳を生やしたその少女は第一声にそんなことを言うのであった。


「え、なに? なんなの? この娘……」




ウサ耳少女登場です。

僕、ウサ耳、大好き。

でもバニーガールはちょっと…という感じの変なやつです。


と、そういうわけで、次回。

ウサ耳少女とあれこれ。

それでは、また。

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