vs【地聖】想起×信頼
シンの視点から。
現在、地面に呑まれた僕は身動きができなくなっていた。
「どうしよう」
のんびりもしていられない。けれど、ここから脱出する方法が思いつかない……ん? そもそも、僕は何で喋れるんだ?
「『C極』」
喋ることができたので、僕は[能力改変]を使って自身がどうなっているのか確かめる。
「……風の音?」
どうやら、戦王はご丁寧に空気穴を空けてくれていたらしい。だから問題なく呼吸ができるのか。
「『S極』」
再び[能力改変]を使って、腕を動かそうと試みる。しかし――。
「固すぎるだろ」
やはり、地中ということもあって固さが段違いだ。足も動かそうとしてみたが、しっかり固められてしまって全く動けない。
それでも、諦めずに僕は手足に力を入れ続ける。
「――い゛っ、あっ、だっ、――! ――!」
その結果、力を入れすぎて両手両足全てつってしまった。手足が動かせないので悶えることすら叶わない。何だこの地獄……!?
僕は、唯一動かせる頭を、動かせる範囲でブンブン振る。意味はない。ただ、どこかを動かさないと手足が変になりそうだった。
その時――。
「いだぁっ!?」
僕は頭を振りすぎたために、思いっきり壁に打ちつけた。
すると、今まで動かせなかった手足に変化が起こる。
「……隙間ができた……?」
驚くことに、頭の動かせる範囲が広がるだけでなく、固められていた土と手足の間にほんの少しだけ隙間ができたのだ。
「……これなら、いけるか……!?」
そして、僕は一つの推測を頼りに、再び頭を打ちつけ――。
▼ ▼ ▼ ▼
「『土壁』」
地面からせり上がる土の壁によって、アルバの姿が見えなくなる。答える気はない、ということだと思う。
「それなら、後で一緒に聞く」
私は壁に向かって突っ込み、両腕で叩き砕く。
「『両腕:ワイヤー』」
両腕を変型させて、ワイヤーをアルバに向かって伸ばす。けれど、アルバは最小限の動きでそれを避けた。
「それならっ」
私は正面から突っ込むと同時に、アルバの横を通り過ぎたワイヤーを操作することで三方向からアルバを追い詰める。
「視えている」
「っ」
アルバはワイヤーを上に跳ぶことでそれを避け、私は頬を自分で伸ばしたワイヤーで掠めてしまう。
「『土砂崩れ』」
「――え!?」
空中に展開された魔法陣から大量の土砂が降り注ぐ。
私は、アルバは私には攻撃してこないと思い込んでいた……いや、もしかすると、思い込まされていたのかもしれない。
「『散雷』!」
魔法には魔法で対抗する。でも、私の魔法は[土魔法]と相性が悪い。だから、降り注ぐ土砂の半分も相殺することができなかった。
「『右腕:盾』っ」
土砂は目前。ワイヤーもかなり伸ばしていたため、腕の変型が間に合わない。
この時点で、私は自分の失敗に気づく。『散雷』を使った後に避ければよかったということに。真正面から受け止める必要なんてなかった……!
「――っ」
これから私を襲うであろう土砂に対して、私は強く目を瞑る。
これが悪い選択だということは、自分でも分かっていた。でも、痛いのは嫌いだし、怖かった。怖いから、目を瞑ってしまった。
「……?」
いつまで経っても私を襲う土砂の衝撃は来ない。だから、私は恐る恐る目を開けてみる。
――そこには、私を庇って地面に呑み込まれた筈のシンが、土砂を両腕で吹き飛ばしている光景があった。
「ごめん、意外に手間取った」
砂煙が立ち込める中、私にあっけからんと笑いかけるシンは、両腕を青く腫らして頭からは血も流れている。
この光景に、私は既視感を覚えた。
「それにしても、今の魔法……威力高すぎるだろ……」
……そうだ。どうして、今まで忘れていたんだろう。
「もしかして、戦王と何かあった?」
人のために平気で身を投げ出すような危なっかしい人であり、優しい心を持った人。
「……フルミネ?」
私にとって大切な人であり、師匠とはまた違う意味で……好きな人。
「……ただいま、シン」
忘れていた過去の記憶と、その忘れていた間の記憶が――一つになった。
▼ ▼ ▼ ▼
久しぶりに彼女の声を聞いたような、そんな感覚だった。
「…………おかえり」
言いながら、自然と頬が緩んでしまうのが自分でも分かる。
「心配、かけちゃったね」
フルミネにどんな心境の変化があったのかは分からない。
「……僕を忘れるなんて、フルミネは酷いよなぁ」
それでも、嬉しかった。普段泣くことがない僕が、泣きそうになるぐらいには。
「……ご、ごめんなさい……」
……ちょっと、苛めすぎたかな。
砂煙もそろそろ晴れてしまう。その前に、フルミネに伝えなくてはいけないことがある。
「冗談だよ。それより、一つ試したい作戦があるんだけど……この作戦、穴だらけの博打なんだよね」
「作戦って何?」
ノータイムで聞き返してくるフルミネに、僕は苦笑する。
「話、聞いてた?」
「私は成功するって信じてる」
そう言って、フルミネは微笑んだ。
それほどまでに僕を信頼してくれているのか、それとも疑うことを知らないのか…………今は、そんな彼女に甘えさせてもらおう。
「そうだね。信じていいよ」
だからこそ、絶対に成功させてみせる。こんな僕を信じてくれる彼女を、裏切らないために――。




