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〇愛〇情相談

 ――レツ/28カ――


 家を出る前に、私は棒状に変型させた左腕を取り外してシンに渡しておいた。シンはゆっくりなら多少動けることが分かったので、杖があれば一人でトイレに行けるかなと思ったから。


 そして、私は今日もコンフィムのところに訪れていたのだけれど――。


「フルちゃん、そんなに動いて大丈夫なの? あと、腕、どうしたの……?」

「走り回ったりしなければ平気だよ。腕はシンに杖の代わりに貸してきたの」


 昨日、短い距離だけど走ってしまったのはコンフィムには言わないでおく。心配させたくはないから。


「それで、昨日はシンと何かあった?」

「……何も、無かったよ?」

「言うの忘れてたけどボク、[真偽判定]あるからね」

「先に言って!?」


 結局、私は昨日の出来事を話させられた。昼食を食べさせあったことと寝る時に頭を撫でられたこと。あと、トイレのことも。


「うん、なるほどね。トイレのことはどうでもいいとして、二つだけ言わせてほしいな」


 コンフィムの顔が怖い。笑っているけど、笑っていない、そんな表情だった。


「ど、どうぞ」

「まず一つ目……前提がおかしいよっ!? 一人用のベッドに二人で寝るって何っ!? 部屋、他にもあったよねっ!?」


 私は何も言い返せなかった。私もシンも、一緒に寝ることが習慣になってしまったから、これが私達にとっては"普通"なのだ。


「二つ目。食べさせあったって言ってたよね」

「う、うん。それは、ちょっとした仕返しをしようかなって思ってたら、流れでそうなっちゃった……」

「バカップルかっ!」

「ええっ!?」

「いや、"ええっ!?"はこっちが言いたいよ!?」


 だって、バカップルって……コンフィムはどうしてそんな結論に至ったのだろう。


「まさか、本気で分かってないの?」

「い、いくらなんでもバカップルは……」

「フルちゃんに質問します。男女が1つの食べ物を交替しながら相手に食べさせあう光景を見て、どう思う?」

「……仲の良い、カップル、です……」


 どうして気づかなかったんだろう。明らかに距離感が友達とかそういう枠を越えちゃってる。

 でも、昨日コンフィムに相談した話だと、シンは義弟(おとうと)の立ち位置だから、そう考えればおかしくはないような……。


「家族って考えれば、おかしくはないと思う……よ?」

「家族でも流石にそんなことしないからね?」

「……もう、分かんないよぉ……!」


 そんな私を見かねてか、コンフィムは「よしっ」と謎の気合いを入れて――。


「一つ、手っ取り早い方法があるよ」


 自信満々の顔で、私に言ったのだった。




 * * * *




「おかえり……あれ、コンフィム?」

「やっほー、調子はどう?」

「絶好調ではないけど元気だよ」


 先にコンフィムが部屋に入り、私はそれに続く。


「ただいみゃっ…………ただいま」


 噛んだ。凄い恥ずかしい。相談内容がシンのことだから、いざ本人を目の前にして変に緊張してしまった。


「フルミネもおかえり」


 シンは私が噛んだことに触れないでくれた。そういう優しいところは、彼の良いところだと思う。


 それにしても、コンフィムの言う"手っ取り早い方法"って何だろう……?


「シン、ちょっと起き上がれる?」

「起き上がれるけど、何故に?」


 コンフィムの質問に、当然の如く疑問を覚えるシン。私も、コンフィムの考えていることがよく分からない。椅子は部屋に置いてあるから、私達はそっちに座ればいいのに。


「隣に座りたいなーって思ってさ」

「別にいいけど……」


 そう言ってシンは起き上がり、コンフィムはその隣に腰掛ける。そして私はというと、コンフィムの目の前に椅子を置かれ、その椅子に座らされた。


 今、私の頭の中はハテナマークで埋め尽くされている。コンフィムは、何を考えてこの座り方にしたんだろう。


「えいっ」

「「――!?!?」」


 私もシンも、あまりに突然のことに驚いて固まってしまう。コンフィムが、シンの右腕に抱きついたのだ。


 ――その硬直から先に抜け出したのはシンだった。


「えっと……どういうこと?」

「ふっふっふっ。シンは目を瞑ってじっとしててね」

「この光景をライトが見たら、僕はどう弁解すればいいんだよ……」

「まあまあ、すぐ終わるから」


 シンは、コンフィムに言われた通りに目を瞑って前を向いている。その顔は、何がなんだか分からないといった顔だった。


 コンフィムの方を見ると、私の視線に気づいた彼女は、まるで私に見せつけるかのようにシンの腕に頬を擦り付け始めた。


 ……擦り付け始めた!?


「だ、だめっ!」

「――わっと」

「うぐっ!?」


 私は二人の間に強引に割って入った……というよりは、私がシンの右腕に飛びついてコンフィムからシンの右腕を奪うと、シンからは苦しそうな声が聞こえた。


「フルミネ、あんまり引っ張らないで……」

「あ、ご、ごめんね」


 私は、自分がシンの腕に強くしがみついていることに気づく。それは、ほとんど無意識だった。私はシンに謝りながら、シンの腕に負担にならないように手を緩める。


 ――そしてコンフィムは、微笑みながら私に告げた。


「フルちゃん、それが答えだと思うよ」

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