表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/114

恋〇感〇相談

 ――レツ/27カ――


 【煉獄】との戦いがあった翌日、私はコンフィムの家に訪れた。"ある相談"をするために。


 私がコンフィムを外から呼ぼうとした時、ちょうど集落長さんが中から出てくる。


「集落長さん、コンフィムいますか?」

「ああ、七聖様ですか。娘なら家の中にいますよ。カカは出かけています。私も今から少し出かけるのでもてなすことはできませんが、どうぞくつろいでいってください」

「は、はい……」


 やっぱり、目上の人に敬語を使われるのはムズムズする。昨日、私がシンのことを報告しに行った時に「敬語はやめてください」と言ったら、集落長さんは「七聖様は七聖様ですから」と言われた。

 それでも私はもう一度「お願いします」と頭を下げたら、「集落長としての立場があるのです。すみません」と、逆に頭を下げられてしまった。


 話を聞くと、七聖という立場は、王様の次に偉い立場らしい。師匠からは、一度もそんな話をされなかったから全然知らなかった。




 私は、集落長さんを見送ってから中に入り、コンフィムの部屋がある二階に上がった。


「コンフィム、いる?」


 でも、コンフィムからは返事がない。おかしいな、集落長さんからは中にいるって聞いたのに。


 部屋に入った瞬間、後ろから目隠しをされて耳元で囁かれる。


「さて、ボクは誰でしょう。忘れんぼうのフルちゃん?」

「……ごめんね、コンフィム」


 私は師匠とホムストに一度だけ来たことがある。師匠の家に行く途中でここに立ち寄り、三日間滞在していたのだ。

 その時の私は"師匠以外の人"が怖くて塞ぎ込んでいた。そんな中、私によく話しかけてくれていた女の子がいた。その子がコンフィム。


 けれど、私はコンフィムのことを忘れていたため、昨日助けた時も、突然"フルちゃん"と呼ばれて少しびっくりしてしまった。

 そんな子を忘れるなんて、私って酷いよね……。


「わわっ、ごめん、冗談だって冗談。ボクは気にしてないからっ、そんなに落ち込まないで? ね? それに、あの時はボクが一方的に話しかけてただけだし――」




 その後、コンフィムに慰められて、私はなんとか自己嫌悪状態から復活することができた。


「それでフルちゃん、相談って何?」

「こ、コンフィムはさ、その……もし、もしだよ? 突然、告白されたら、どうする?」

「シンに告られたの!?」

「うにゅえ!?」


 何で分かるの!? 私ってそんなに分かりやすい!?


「フルちゃんの身近な男の人ってシンしかいないと思ってたんだけど、その様子だと当たったみたいだね」

「そ、そうだった……!」


 私、馬鹿だ。逆に何でこれでバレないと思ったんだろう。


「じゃあ、まず聞くけど、フルちゃんにとってシンはどういう存在?」


 私は考える。友達とは違うと思う。親友……も違うよね。家族でもない。でも――。


「大切な人……」

「それ、もう答え出てるよね?」

「ち、違うっ、そういう意味じゃなくてっ!」


 自然と声に出ちゃったけど、それはまた違うっ、多分!


「好きか嫌いかで言うと?」

「好き……」

「お幸せに!」

「だから違うぅぅぅ!! っていうかその質問狡いよ!」


 明らかに狙ってたよね。コンフィムは私の相談をまともに聞く気はあるのだろうか。私だって、怒る時は怒るんだよ?


 私がそんな感じでムスッとしていると、コンフィムは深いため息を吐いた。


「フルちゃんは何をそんなに気にしてるの?」

「……私もシンのことは、好きだよ。でも、それはコンフィムが両親を好きっていうのと同じなの」


 恋愛的な意味ではない。ただ純粋に好きなだけ、だと思う。

 だから、分からない。シンの言う"好き"がどういうものなのか、判断ができない。


「ああ……なんとなく、フルちゃんの言いたいことが分かった気がする。例えば、義理の弟がいきなり告白してきたからどうすればいいか……聞きたいことってこんな感じかな?」

「そんな感じかも……」


 弟とも思ったことはないけれど、事例としては大体合ってる気がする。


「じゃあ、答えを出すのはゆっくりでもいいと思うよ。シンも特に催促はしてないでしょ?」

「だけど、それはそれで申し訳ないというか……」


 シンをあまり待たせてしまうのも、少し気が引けてしまう。それに、七聖として復帰するためにも、こういうのは早めにはっきりしておきたいって思う。


「ボクからアドバイスできることは何も無いかな。やっぱり、自分で考えて答えを出した方がいいよ。それより、そろそろ戻った方がいいんじゃない? お昼はフルちゃんが作るんでしょ?」


「……そうだった」


 あまり作り始めるのが遅くなると昼食も遅くなってしまうので、今日はお開きになった。




 * * * *




 シンが療養している家に戻り、部屋を覗くとシンはまだ寝ていた。


「よし、やろうっ」


 今日の朝は集落長さんがご飯を持ってきてくれたけど、お昼は断った。私もシンに何かしてあげたかったから、まずは料理を食べてもらおうと思ったのだ。

 今日のお昼は、シンのためにお粥を作ることにした。風邪じゃないけど、食べやすいものと言えばやっぱりこれだと思う。


 お米は集落長さんから既に貰っている。お粥は初めて作るけど、多分大丈夫だよね。

 約六年振りの料理。少し不安だけど、シンに美味しいって言ってもらえるように頑張ろう――。

さあ、過去に猪を火だるまにしたフルミネは、お粥を作ることができるのか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ