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vs【煉獄】ファイナルラウンド

「何で、ここに……?」

「ちょっとの間、頑張ってっ」


 僕の問いに彼女は答えず、右手に持った槍を男に向かって投げつけた。その槍は、まるで意思があるかのように変則的な動きをしながら男に襲いかかる。


「グッ、こいつハ、神器……!? 七聖はいないって聞いてたガ、なんダ、ちゃんといるじゃねーカ!」


 男はその槍を避けながら嗤い始める。それはまるで、新しい玩具を見つけた子供のように。


「シン、あの子を連れて逃げて」

「……分かった。『運搬』」


 ここにいたらフルミネの足枷になってしまう、そんな気がする。だから僕は、フルミネを信じることにした。


 聞きたいことはいっぱいある。けれど、それはこれが終わった後にでも聞ける。そのために、僕はフルミネに一つだけお願いをする。


「フルミネ、絶対に死ぬな」

「大丈夫だよ。私は七聖。魔人に対抗できる唯一の、選ばれた人類だから」


 フルミネは、右腕の魔道具から漏れ出ている黒い雷を右手に集め、槍を形成する。


「話は終わったカ? 七聖さんヨ」


 男の手には、赤い炎でできた槍。その槍からは、フルミネの槍に似た何かを感じる。

 男の耳に付いていたイヤリングは無くなっていた。ということは、あれが神器なのか――。


「シンっ、早くっ」

「――っ!」


 僕はフルミネの声ではっとする。そして、すぐにライトを回収しに向かった。男はそんな僕に反応せず、その目はまっすぐにフルミネを見据えている。


 二人は槍を構え、炎と雷が、真っ昼間の空の下でぶつかった――。




 ▼ ▼ ▼ ▼




「おラァ!」

「やあっ!」


 お互いの槍が何度もぶつかる。けど、その均衡は長くは続かなかった。

 私の槍が魔人の槍によって破壊される。魔人はその瞬間を見逃さず、私の心臓に槍を突き刺そうとした。


「『左腕:盾』っ」


 私はその槍を変型させた左腕で防ぐ。すると、魔人は驚いた顔で私に問いかけてきた。


「その腕、ミスリルなのカ?」

「だったら何っ」


 私は新しく生成した槍で横に薙ぎ払う。魔人が後ろに距離を取り、くいくいっと手招きをしてくる。


「投げてみろヨ」

「……?」

「ヘレグローザは投槍ダ。投げてこそ力を発揮できル。お前の力がどんなもんカ、やってみろヨ」


 よく分からない……けど、これはチャンスだ。ありがたく利用させてもらう。


「はああああ!!」


 私は魔人に向かって弧を描くように槍を投げた。槍は分裂して魔人に降り注ぐ。

 これで倒せるなんて思っていない。それでも、少しぐらい時間が稼げる筈――。


「『右腕:魔銃』っ」

「『(エン)』」

「な――ぐぅっ……!?」


 信じられないことに、魔人は私の神器を捌きながら反撃までしてきた。

 私の体に熱線が突き刺さる。お腹から血が吹き出す。痛い。けれど、内蔵の魔道具にぶつかったのか、その熱線が背中を突き破ることはなかったのが幸いだった。


 私は魔人に銃を向ける。


「おセェ、この程度カっ!」


 魔人の方が少し速かった。やっぱり、私じゃ駄目だったのかな。魔人は大きく槍を振りかぶり、私を切り裂く。


「やら、せる、かあああっ!!!」


 ――筈だった。


「ナッ!?」


 鮮血が飛び散る。私の血じゃない。


 どうしてここにいるの。逃げてって言ったのに。


「シンっ……!」

「フルミネっ、今!」


 シンの声で我に返る。シンがくれたこのチャンスを、無駄にはしない。


「『魔弾:黒砲』!」

「――ッ、ぐア゛ア゛ア゛ア゛!?」


 『魔銃』にヘレグローザを取り込むことによって放つ、残りの全魔力を込めた零距離の黒雷。それは、魔人を跡形もなく消し去った――。

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