表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/114

vs【煉獄】第一ラウンド

「シンっ」

「分かってる!」


 僕は目前に迫る舌を紙一重で避ける。あの蛙もどき、頭が竜のくせに舌を伸ばすなと言いたい。

 蛙もどきの攻撃を避けた直後、次の攻撃が僕達に迫っていた。


「『水壁』っ」


 ライトが迫る炎を[水魔法]で防ぐ。しかし、その炎の後ろから岩の魔物が水壁を突き破ってきたのだ。炎の後ろに隠れてたのか。気づくのが遅れて避けることがができない。


「はあっ!」


 影からコンフィムが出てきて、転がっている岩の魔物の足元に複数の矢を放ち、軌道を右に逸らした。


「助かったっ」

「ここは任せて早く行ってっ」

「……頼む!」


 魔物の群れを抜けるまであと少し。皆が僕達を援護をしてくれている、そんな時だった。


「後ろから来てるぞ!」


 ライトの声で振り向くと、背後に大きな炎が迫ってきていた。


「『S極』っ」


 その炎を避けるのではなく、逃げ切ることを選択した。だから僕は、思いっきり踏み込み、前に跳ぶ――。




 ▼ ▼ ▼ ▼




「行ったね……」


 二人の背中を見送りながら、一息つく。

 これでボクの一つ目の役目は果たした。さて、次の役目を果たそう。


「アアアァァ!!」

「当たらないよっ」


 炎巨人の拳がボクを空振り、地面がへこんだ。当たったらただじゃ済まなさそう。でも、当たらなければ怖くない。


「はあっ!」


 矢を放っても、核に当たらずに炎の体をすり抜けてしまう。矢も無限じゃない。確実に当てなければ無駄にしてしまう。


「おらぁっ!」


 飛んできた石が炎巨人の核に当たって、その核にヒビが入る。すると、途端に炎巨人の動きが鈍くなった。


「こいつら、矢じゃなくても核に当たれば何でも効くぞ!」

「っ、ライトのお父さん、ありがとう!」


 それを聞いて、落ちている石を掴んで核をめがけて投げる。けど、そう簡単にはいかず、核に避けられてしまった。


「それより、何でこっちにいるの?」


 魔物達の攻撃を避けながら、ライトのお父さんに聞いてみた。ここは魔物の群れの後ろの方だ。ボクは今から皆のいる方に戻るつもりなのだけど、ライトのお父さんがここにいる理由が分からない。


「トトに頼まれてな、フィム嬢を絶対に死なすなってさ」


 お父さん……嬉しいけど、恥ずかしいよ。


「ありがたいけど、自分の身が最優先だからね?」

「分かってらぁ。いくぞ、フィム嬢っ」

「うんっ」


 皆で、絶対に、生きるんだ――!




 ▼ ▼ ▼ ▼




 魔物の群れを抜けて、森の中を跳んで進む。


「大丈夫か、シン」

「ああ……ライト、降ろす」

「は!? ちょっとま――うわっ!」


 ライトが何かを言いかけていたが、構わず僕は肩車を解除した。つまり、落とした。

 そして、そのまま魔人と思われる黒肌の男に突っ込んで殴りかかる。


「いきなりだなおイ」


 そう言って、男は体を少しずらして拳を避けた。驚いた様子は見られない。不意打ちは想定内か。


「遅かったからてっきり逃げちまったのかと思ったガ、もう少し待ってりゃよかったカ。まあいイ、やろうゼっ」


 男が横に手を払うと、火の粉が出現し無数に飛んでくる。一つ一つは小さいが、密度が濃すぎるため避けられない。


「『M極』――っ!」


 チクチクとした痛みが僕を襲う。『M極』でもこれか、威力が桁違いだ。


「あア? 効かねえのカ。なら、これでどうダ?」


 男が手を上に挙げると、僕の足元が光り出す。これは、喰らってはいけない気がする――。


「『特避』っ」


 すぐさまそこから離れると、僕のいた場所に巨大な火柱があがる。

 危なかった。火の粉も完璧に防げてないのに、あんな火柱に耐えられる訳がない。


 そして、気づいたことがある。この男は、攻撃する時に言葉を発していない。手を動かすだけで魔法を使えるようだ。


「これは避けたカ。なかなか楽しめそうなやつが来てくれたナ」


 男はカラカラと笑い今度は左手を前に出し――。


「『水嵐』!」


 ライトによって放たれた水の竜巻が背中から直撃、僕を通りすぎて木に激突する。


「ライト、来るのが遅い」

「悪いな…………あれ、何で俺が謝ってんだ」

「――今のハ、及第点だナ」

「「っ!」」


 しかし、男はまるで何も無かったかのように立ち上がったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ