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魔道具と魔獣と年齢と

「――神様って存在は分からないけど……シンが元人間で、違う世界から来たってことは、私は信じる」


 フルミネから少し予想外な言葉が返ってきたので驚いた。


「自分で言うのもあれだけど、信じるの?」

「だって、そうじゃないとこの森にいるのが説明つかないから。【水帝】も知らないし……それに、ね……?」

「それに?」


 フルミネの遠慮するような話し方が気になり、シンは次の言葉を促す。


「シンの服、獣人用の服じゃないよね。干してる時に見たけど……尻尾のところ、きつそうだなって……」

「あ、獣人用の服ってちゃんとあるんだ」


 ――フルミネの言ったことは正しかった。

 僕の尻尾は腰辺りから生えていて、ここに来るまでずっと、ズボンが尻尾の付け根に当たっていたのである。


 思わず安堵の声が漏れてしまう僕に対し、フルミネは再び何かに遠慮するように様子を窺ってきた。


「どうしたの?」

「……あの、シン、下着も濡れてるよね。流石に下着の代えは無いけど……乾かすなら、渡して……」


 そう言って、フルミネは顔を赤らめた。

 ……パンツだけそのままだった理由ってそれか。


「分かった」

「……脱いだら言ってね」


 そう言って、フルミネは僕に背中を向ける。僕はローブを着たまま、一応しっかり隠しながらもその場でパンツを脱ぐ。


「へくちっ」


 耳に入ったのは可愛らしいくしゃみの声。フルミネの背中を見ると、少し湿っている。

 もしかして、ローブを上から羽織っただけで着替えてないのだろうか。


 そんなことを考えながら、僕はフルミネに脱いだパンツを渡そうとして――。


「へくちゅんっ」


 ――流石に、遠慮した。


「自分で干してくるよ。その間に下着、替えたら? 濡れたまま……なんでしょ?」


 フルミネは恥ずかしそうにしながらも頷く。直球すぎたか。言葉って難しい。


「外に出たらすぐそこに干す場所あるから……じゃあ、お願い」

「分かった」


 外に出ると、フルミネの言った通り、服が干してある物干し竿らしきものを発見する。

 その隣に放置されている二頭の巨大猪の死体が大変気になったが、その前に自分のパンツを干す。


 ――そして、気になっていた猪の死体を見てみることにした。今戻ってもまだ着替えているだろうから。


 この猪達は二頭とも横から頭を貫かれていたが、どちらも外傷はその一つしかない。これ、フルミネがやったのかな。


 そんなことを考えていると、着替え終わったであろうフルミネが外に出てきた。


「シン、どうしたの…………あ、それは私の今日のご飯だよ」

「そうだったんだ。僕も食べたけど……これ、不味くない?」

「まあ、あんまり美味しくはないかな――――え?」


 フルミネは再び固まった。まさか、また何か変なこと言ったか。


「何か駄目だった……?」

「……普通の人は魔獣を食べるなんてことできないの。食べても拒絶反応を起こして吐き出しちゃう。因みに、この猪も魔獣だからね」


 僕はなんとなくフルミネの言いたいことが理解できた。


「つまり、僕がこの猪を食べれるのはおかしいってこと?」

「うん」

「でも、そうなるとフルミネは普通の人じゃないってことになるよね?」


 そんな僕の疑問にフルミネは少し迷いながらも答える。


「……私、体の半分が魔道具なんだ」


 ――と、カミングアウトされても、魔道具がどういったものなのかを分からないのでピンと来なかった。


「魔道具の説明を求む」

「あ、魔道具は分からないんだ……機械なら分かる?」

「それは大丈夫」


 というか、この世界にも機械ってあるんだ。


「よかった。じゃあ説明するね」




 ~フルミネの説明time~


 機械は動かすためには電気を必要とする。

 それに対して、魔道具は魔力を必要とする。

 魔道具の場合、魔道具ごとの必要量の魔力を込めることで使用可能。


 魔獣とは、動物が突然変異によって魔力を保有し、体が肥大化したり変形したりして理性を失った状態だと言われている。

 "魔力を保有する"というところが重要で、魔獣を食べると魔力が回復できる。だが、それは現実的ではない。

 その理由は、人の胃ではその魔獣の魔力を分解、吸収ができずに拒絶反応を起こしてしまうからである。




「私は内臓も全部魔道具。だから、拒絶反応も起きないの」


 ――それは、逆に言えば魔力に依存していることを意味していた。


「魔獣を食べて補充しないといけないってこと?」


 フルミネはコクリと頷く。


「この左目も魔道具。普段は使ってないんだけどね」


 ――フルミネの魔道具もON、OFFが可能だが、生命に関わる機能をOFFにすることはできないらしい。

 そのため、魔力が残り僅かになると手足の魔道具が自動で停止し、その分の魔力を内臓の魔道具に回すといった仕組みになっているそうだ。


 ひとまず、フルミネが魔獣を食べれる理由は分かった。けれど、どうしても疑問が残ってしまう。


「僕が魔獣を食べれる理由って何だ……?」

「そういうスキルがあるのは聞いたことがあるけど……ステータスカードは分かる?」

「ああ、うん。それは分かる」


 そこで、僕はステータスカードを出してフルミネに渡す。


「私のも見ていいよ」


 すると、フルミネからもステータスカードを手渡された。


________________________________


フルミネ 20歳 女 人間


魔力:SS


魔法:[雷魔法]


スキル:[魔力操作]


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 ――嘘だ。


 僕が驚いているのは、魔力量でも、デュアルのことでもない。


「年上!?」


 僕は目の前の少女をずっと年下だと思い込んでいた。

 このステータスカードに書かれている年齢を見ても、この事実を信じられない自分がいる。


 この僕の反応に、フルミネは口を尖らせた。


「……だって、仕方無いじゃん。私、五年前にこの体になってから、成長止まっちゃったんだから……」


 ――因みに、これは余談だが、女性の成長期は15歳になると大抵は終わっている筈である。

 僕はあえてその話題には触れなかった。触らぬ神に祟りなし、だ。


 ……話題を変えよう。


「そういえば、フルミネさんってデュアルなんですね」

「今さら無理して敬語にしなくていいよ……というか、デュアルは知ってるんだ。じゃあ、私からもいい?」


 フルミネはため息を吐きつつ、僕から渡されたステータスカードを()()見せてくる。


「どうしてこんなに壊れてるの?」

「……壊れてること忘れてました。ごめんなさい」


 今までの非礼の全てを謝る勢いで、僕は頭を地に着けた。年齢のことも、その他のことも、色々と。


 ――そしてこれが、この世界に来てから初めての土下座になるのだった。

フルミネの生命維持装置(内臓)の魔道具ですが、そこまで大量の魔力を消費している訳ではありません。


フルミネは、普通に呼吸をしてますし食事も水分も必要です。その必要なものに魔力が追加されます。


________________________________


[魔力操作]


魔力の精密操作が可能になる。魔力を身に纏って即席の防具にしたり、魔力をそのまま放出して攻撃したり用途は様々。


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