第90話 【湿地帯の交戦・2】
「ガァァァッ!!!!」
「ぐッ!」
変異種の魔物(今目の前に来て鑑定を掛けた結果オークの上位種オーガだった)が行き成り俺達の方へ向かって叫んだ。俺が一瞬後ろにジリッと下がった瞬間、変異種の魔物は俺に目掛けて突進してきた。俺の後ろには、未だ傷を回復中のウルフ達と体がバラバラになっているのを修復しているスライム達が居るから俺がここで避けたりしたらこいつらに被害が行ってしまう。
「ハァァァッ!」
「ガァァァッ!!」
俺は、無属性の魔法を手に纏わせ変異種の角を掴み身体強化魔法を発動し氷で自分の足を地面にくっつけた。
「ガァァッ!…ナカナカ、ヤルナ人間ッ」
「なっ、魔物が喋った?!」
って、エルダも常日頃喋っているから上位個体であるこの魔物も喋れて当たり前なのだろうがエルダは常時人化しているから魔物と言う事を時々忘れてしまう。
「…ソウカ、オ前ガ主サマガ言ッテイタ人間カ」
「なんだ、それ…お前の主ってのは誰だ」
「フフフ、気ガ付イテオルダロウ…邪神サマダ人間ヨ」
やっぱ、邪神と来たか…俺が、赤ん坊の頃から何かと邪絡みの事が起こっていたから、もしかしたら…って話をイアラ様としていた。
「何で、その邪神は俺の事を狙っているんだ?」
「サアナ、タダオ前ノ体ヲモッテコイトダケ命令ガダサレテイル」
「…って言うか、さっきから俺にそんな話をして良いのか?」
「フンッ、邪神サマガオ前ノ事ヲ捕マエル時ハ全力デ行クヨウニト仰ッテイタガ今オマエト手合セヲシテ思ッタ。オ前ハ、俺ヨリ弱イトダカラ質問ニ答エタ」
変異種の魔物は、そう言って「二ヤッ」と笑った。
「そうか、そうか俺がお前より弱いのか~」
「ガッ?!」
「豚野郎が進化してちょっと邪神の力を手に入れたからって「俺様最強」とでも思ってんのか?こちとら、お前よりもっと強く強大な邪竜と戦ってきたんだよ。少し手を抜いていたからって馬鹿にすんじゃねよッ!」
変異種の魔物(これからは、豚野郎(笑)と呼ぶことにする)を俺は、無属性で固定したままの角を引っ張り力を入れ上に持ち上げた。
持ち上がらされた豚野郎(笑)は、足と手を動かし「ハナセッ!」と叫んでいる。そんな、豚野郎(笑)に対して俺はそのまま前に進みウルフ達に危害が及ばない所まで進み、そこで俺は前後ろと地面に豚野郎(笑)を叩きつける行為を始めた。
たたきつけ始めて、1分もしない内に角が先に壊れ豚野郎はウルフ達とは反対方向へ吹っ飛んで行った。
「はぁ~、やっぱりこんな畜生以下の豚ではあの人には勝てませんでしたか、まあ分かっていた事なんですがね…」
そう言って、突然豚野郎(笑)の後ろからマントを羽織った(顔が見えないので、人型の魔物かも知れない)者が出て来た。
「いつから、そこに居た?」
「最初から居たよ。まあ、魔力はこのマントで消してたから君には分からなかったと思うけどね。魔力に頼ってばっかりの君には特に…」
声質的に男の声でそう言われた。俺はね言われた言葉少しカチンッと来たが確かに俺はこの世界に来てから魔力に頼りっぱなしで生きて来てたから反論が言えなかった。
「それで、その模様のマントを着ているって事はアンタも邪信教か?」
「うん、そうだよ。僕は、邪信教・四天王の1人だよ。まあ、最近四天王になったばかりだから新米だよ」
そう言って、マントを羽織った男は俺が吹っ飛ばして倒れている豚野郎(笑)の顔の所へ歩いて行った。
「それでさ~、君あんだけ秘密は守る物だって言われてたのによくもまぁ~あんなにペラペラと喋ったね~」
「す、すみませんセージ様…」
「うん、謝罪はいいよ。はい、死んでね~許しを乞いたいならあっちで死神くんにでもお願いしてね~まぁ、あの人は1番邪神様に忠誠を誓ってるから君みたいに邪神教の秘密を喋る者には…まっあっち行っても頑張ってね」
そう言って、マントの男は豚野郎(笑)の首を持っていた剣で切った。斬られた豚野郎の首は、空中を舞いボトンッと地に落ちた。
「さてと~、この後何だけどさ、ごめんけど僕は帰らせてもらうね。流石にこの状況は僕的にもフリかもだから~」
「まあ、そうだろうな…だが、タダで帰してもらえると思うか?」
そう言って、俺は魔法を展開し始めた。俺が展開するより前に、回復したスライムとウルフ達、そして森の上位個体の魔物達が増援として来ていて男を取り囲んでいた。
「う~ん、じゃあそうだね。1つだけ君に教えてあげるよ~」
男は、そう言って懐から一本の刃物を出した。俺はねその出された刃物に見覚えがあった。
「じゃじゃ~ん、これは何と君を殺した男の刃物で~す。そして…僕は、君を殺した男で~す」
「ッ!」
男は、深くかぶっていた頭部分のマントを取り顔を俺に見せて来た。その顔は、少し若くなっていて種族も人間では無かったが確かに俺を殺した男の顔と一致した。
「んじゃ、そう言う訳でバイパ~イ」
男は、一瞬の隙をついて俺をすり抜けて行き俺達が来た方とは別方向に逃げて行った。男が逃げる間も俺はただ呆然と見ているだけだった。