第89話 【湿地帯の交戦・1】
爆発音がした方へと走っていると、またさっきより大きな爆発音が聞こえ魔物達の叫び声がここまで聞こえて来た。魔物の叫びは様々で、ここの森に居るウルフ・スライム・ゴブリンと下位の魔物から下位ワイバーン・オーク等と中位魔物種までの叫び声も聞こえて来た。
ここで俺は1つ、思い出したことがあった。確かこの先の湿地地帯にはこの森の全種族の中で限りなく少ない高位魔物が住んで居ると…
「これは、もしかして他の高位魔物種が湿地地帯のボスに喧嘩を売りに来たのかもしれんな…」
「あれ?ご主人様この先に住んで居る魔物の事知ってるんですか?」
「んっ?ああ、前にライ達と出会う前にこの森を調べている時に一度だけ遠くの方から見た事があるんだよ。スライムの超巨大なキングクラスの奴がこの奥にある湿地帯のボスだと思う」
「キングスライムがこんな所に居るんですか?普通は、もっと奥地の方に生息するはずなんですがね…」
「まあ、そんな事は今はどうでもいいから早く現場に向かうぞ」
俺達は急いで爆発音の方へと走って行った。そして、爆発音があった場所と思わしき場所に着いた俺達は周りを確認した。周りには、スライムの核やスライムジェル、ウルフの死骸等が散らばっていた。
「これは…おかしいぞ」
「どうしてですか?先程の爆発に巻き込まれた魔物達でしょう?」
「いや、それはそうなんだがここには他の魔物、ワイバーンやゴブリン・オークも住んで居たはずなんだがそいつらの死骸が一匹も見当たらないんだよ。来る途中、エルダ達は見えて無かったと思うがスライムとウルフだけが逃げていなかったんだよ」
「…それは、少しおかしいですね。この先、何が起こっているんでしょうか」
「そうだよな…って、ライ・ラルどうしたんだ?」
俺とエルダが話をしていると、ライとラルが奥の方をジッと見つめていた。そして、それと同時に奥からウルフの遠吠えが聞こえラルが尻尾をピーンと伸ばし遠吠えに返事をするように吠えた。そして、その後もラルは吠え続けた。
「エルダ、ラルはどうしたんだ?」
「この奥に、ラルちゃんのお母さんがいるみたいです。それと、ライ君の親もラルちゃんのお母さんと一緒に居るみたいです」
「それは、どういう事だ?もしかして、ライの親がラルの親と戦っているのか?」
「いえ、それは違うみたいです」
「…エルダ、ライとラルが危険に合わないようにできるだけ守ってやってくれ先行して俺が行くからその後を着いて来てくれ」
俺はそう言って、後ろにエルダ達を守る様に前に進んでいった。奥に進むと、木々が倒れ広場が出来てる所が見えた。そして、そこにはライとラルの親であろう巨大なスライム、キングクラスのスライムとこれまたウルフの上位種の1体ブラックウルフのキングクラスが居た。そして、その2体の後ろにはスライムの軍団とウルフ種の軍団が居た。
「どうなってんだ、これ?…」
ここからだと、奥が見えず敵対している相手が見えなかったので少し近づいて行き奥を見ると、そこには体を黒色に染め肩に白色で何か模様が描かれていた。その魔物は、スライムとウルフの混合軍団に向け黒いボール、闇魔法の魔法を感じる物を投げつけた。
「ドンッ!!」
爆発音の正体は、やはり奥に居るあの黒い変異種の奴がやっていたみたいだ。そして、俺はそいつがボールを投げた瞬間、肩に描かれている模様がハッキリと見ることが出来その模様を見た瞬間驚いた。
「あの、模様は…エルダ、ライ達を絶対にここから奥には行かないようにつかまえておけ」
「ど、どうしたんですか、ご主人様?」
「この奥に黒色に染めた魔物、多分オークの上位種のオーガの突然変異種が居てそいつの肩にある教会の模様が書かれていた」
「教会?…まさかッ!」
「その、まさかだよ。ライ達の親と戦っているのは、邪信教の魔物だよ。神様に話は聞いていてこの模様を付けている者を見つけたら逃げなさいとその時、見せて貰った模様は覚えていたんだよ」
俺は、そう言ってこれから起こるであろう戦闘の為にアイテムバッグから戦闘用の装備を付けて行った。
「だ、大丈夫なんですかか?」
「安心しろ。前にも言ったが、俺は残り3年近くは絶対に死なない。それにこっちは魔力がほぼ無限に使えるからなあいつを消し炭にするまで魔法をぶっ放してくるよ」
俺はそう言って、エルダ達の頭を撫でてあげ隠れていた茂みから身を出し交戦が一瞬止んだ隙をついて出て行った。俺が出て来た事に、互いの魔物達は驚いたが一瞬にしてウルフの所に行き、先程ラルから取った毛を見せ、ウルフは毛の臭いを嗅いだ瞬間俺を睨んだが直ぐに「俺は、お前の子の飼い主だ」と言い傷ついたウルフ達に向かって回復の雨を降らせ俺が敵でないことを認識させた。そして、俺は「こいつは、俺が貰う」と言って突然変異した魔物へと向け【光線】を放った。受けた魔物は、平気な顔してこちらを見ていた。
俺は、この時魔物の後ろに隠れていた邪信教の模様を縫ったマントを着ている人間に気が付いていなかった。