第87話 【気づいていなかったのは俺だけ…】
馬車(馬じゃなく木の魔物が引っ張ってくれたから馬車なのかどうか、分からないが)に揺られる事数時間、懐かしき山の麓にある洞窟前に着いた。出て行く時に、小屋は燃やして洞窟の中は全部綺麗に俺のバッグの中に入れたから実質初めてこの時と同じ風景を今見ている。
「ほぇ~、結構いいところですねご主人様ここが昔住んでた場所なんですか?」
「ああ、俺が3年ちょっとお世話になった思い出深い場所だよ。まあ、その前は竜の胃の中で生活してたからここが実際の所初めてまともな暮らしをしていた場所だよ。向こうには、果実が沢山実っててこの時期だと甘酸っぱい物が沢山生えてるから帰りに取って行こう。それで、向こうの少し木々が分かれてる道を行った先には湖があってそこには魚なんかも沢山住んでるから食料には困らない生活をしてたんだ」
「そうなんですか~、あっご主人様ここの樹木さん達が「おかえりなさい」って言ってますよ。ご主人様、ここの木さん達と仲良かったんですか?」
「いやいや、俺は木とは喋れないぞ?!それに、仲いいなんて俺は、木に何かやった事なんて無いぞ?」
「えっと~、「貴方様のお蔭で、ここまで成長できました。ありがとうございます」って言ってますよ?やっぱり、何かやってたんじゃないですか?」
「う~ん、俺の記憶には何もないが…」
俺は、エルダが先程から聞いている木を見て何かあったかな~と思い出そうとしたが何1つ思い出さなかった。
「ぴ、ぴ~、ぴ~」
「ああ、なるほどそうだったんですね。ご主人様、この木達はご主人さんが果実の栽培の為に作った肥料の残り物を分けて貰った事に礼を言ってるみたいですよ」
「ああ!確かにね肥料をやっていた時期もあったな、まあ肥料と言っても野菜屑なんかで作った物を毎年作って残ったのをここいらにばら撒いてたな…しかし、あんなので喜んでいたのか?」
「こんな山奥で、ここまで自然がありますと土地から補給できる栄養分は他の木との取り合いですからね~ご主人様が撒いてくれてた当たりの木達は凄く感謝してますよ」
「そうだったのか」
その後、少しエルダは周りを探索したいと言ったのでライ達と行って来ていいぞと言って出発した。残った俺は、流石にこのまま2日間過ごすのは都会に住みを経験した体ではキツイと思いエルダ達が練習の防御壁として作った木を取り出して少し大きめの小屋を作り始めた。
最近、物作りをしていなかっのでやり方を少し戸惑いながらも完成させていった。外観は、まあ仮小屋というのもあり豆腐建築だ真四角の物に扉と窓を設置した感じの物だ。中には、テーブルとイス、仮眠する為のベットを作りエルダ達の休憩スペースも作った。
「まあ、こんなものかな…」
その後、探索に行っていたエルダ達が果実や魚を取って帰って来たので遅めの昼食を取る事にした。取って来た魚を焼いて塩で味付けした物を俺とライとラルが食べエルダには魔石を渡し昼食を食べた。
「そう言えば、今後ここを開拓しようと考えてるんだがあの木達の様にエルダに話しかけて来た木ってどの位居た?」
「う~ん、ここら辺だと最初に話をしていた木の方達だけですよ。他の木は何もいいませんでしたね。まあ、木にも話せる木と話せない木がありますから偶々あの場所に話せる木の方達が集まっていただけで話せる木は限りなく少ないですから開拓する場合は躊躇わないでいいですよ」
「そうなのか、なら良かったけど…あの木達はどうしようかな~、流石に礼を言ってきた木達を切り倒す事なんて俺には出来ないし…」
俺は、「う~ん、どうしようか~」と悩んでいるとエルダが「なんとかしましょうか?」と言ってきた。
「どうにかなるのか?」
「ええ、はい簡単に言いますとあの木達を私みたいにすればいいんですよ」
「エルダみたいにって、どういう事だ?」
「んっ?もしかして、ご主人様気づいてないんですか?あの木達、トレントですよ?」
エルダは、魔石をボリボリと食べながらそう言った。俺は、エルダから言われたことに対し呆気を取られポカーンとした。
「なっ、本当かそれ?!」
「ええ、多分元々は普通の木だったんのがご主人様が作った肥料にご主人様の魔力が入っていてそれを吸収したあの木達は年月を経てトレントに進化したんだと思いますよ。それで、あの木達ご主人様の魔力で進化した事によって自動的にご主人様の従魔になってますから」
「マジかよ、全然気づかなかったというか木がトレントだと言う事自体今初めて知った。もしかして、ライ達はしってたのか?」
「ぴ~」
「わう~」
「「いつも、お話ししてましたよ?」「私もです」と言ってますよ。ラルちゃん達は気付いていたみたいですよ?」
「…だって、木が魔物化してるなんておもわないじゃんかよ…」
その後、使った食器を水魔法で洗いアイテムバッグの中に入れ話しかけて来た木達の所へと向かった。




