第62話 【レイの弁当】
俺の弁当を見て、呆気に取られていた3人は目をゴシゴシと擦った後もう一度見直した。
「レ、レイお前、それって何なんだ?」
「えっ、弁当だけど?まあ、ちっょと作り過ぎちまったがな」
「いや、ちょっとって言うレベルじゃねえだろ」
「レイ君、それを1人で食べようとしてたの?…」
俺は、ディーとシズクから呆れた風な目で見られた。マールは、「レイ君が、この中の全部作ったの?すご~い」と言ってくれていた。よし、マールには後でクッキーを上げよう。(まあ、結局シズクとディーにも上げるとは思うけど)
「ディー達も今日はそれだけなんだろ?一緒に俺の弁当食べようぜ」
「それだけって、まあ、確かに今日は人が多くて余り買えなかったが…いや、久しぶりにレイの料理を食べたいし一緒に食べさせてもらうよ」
「わーい、レイ君ハンバーグ入ってる~?」
「ああ、入ってるよ。それも、マグラットに居た時は小さいのしか作れなかったがこっちで肉屋のおっちゃんと仲良くなって、肉を安く売ってくれたから今日のハンバーグは爆弾ハンバーグって言う名前の大きなハンバーグだぞ」
こっちに来てから、邪竜討伐をしてから街の人とは結構仲良くなり肉屋のおっちゃん以外にも八百屋のおっちゃん・おばちゃん夫婦に魚屋の兄さんともよく話すようになって今日試験に行く時に弁当を作ると言ったら、安く売ってくれた。まあ、おっちゃん達は俺の料理で酒のつまみを期待してるみたいだし入学が決定したら作りに行くか…
「おっきな、ハンバーグ?!やった~、早く食べよ~」
「ああ、そうだな、っとと、ディー下の箱を抑えててくれるか引っ張ったら崩れそうだ」
「…ああ、分かった」
ディーは、俺にまた呆れた目をして倒れそうになった重箱の下を抑えてくれた。俺は、4段ある箱の上2段を取り箱の横に並べて行った。
1つは、ラニアが米を買った商人と連絡が取れ大量に買った米と俺が山に居た時に作った塩で作った塩おにぎりが1段分入った物、2つ目は、先ほど言った爆弾ハンバーグが4つと普通サイズの肉団子が8つ、3つ目は、この世界でもあったのかと驚いたタケノコでタケノコご飯とこれまた、ビックリした物でこの世界にはつくしも有り、つくしで作ったお浸し、魚の塩焼きを入れた。4つ目の箱には、俺が今まで女神様達に送る為に考えたお菓子が入っているが、これは最後に開けよう。そうしないと、先にこっちに手が伸びて本来のご飯を食べて貰えないかもしれないから…
「「「おおぉ~!」」」
まあ、そんな心配は無さそうだけどな、箱を開け中身を見た3人は三者三様の驚きを見せた。ディーは、弁当の中身が未だ湯気を放って居る事に驚いた。それは、俺のアイテムバックの中は時間が起たないようになっているので、ハンバーグやタケノコご飯、塩おにぎりはアツアツのままだ。
次に、驚いたのがマールだ。まあ、俺が作った爆弾ハンバーグを見て目がキラキラと輝かせ「早く、食べたい~」と叫んだら、俺の横に座っているディーからチョップを食らっていた。
最後に、シズクだがなぜかシズクは俺の料理を見て「…折角、お祖父ちゃんに料理習ったのにレイ君のが凄いよ…」とボソボソ言っていた。
「さて、余り驚いていたら試験の練習の時間が無いから、食べるか」
「ああ、そうかレイ達は午後にも試験があるのか、僕とマールは午前だけなんだよ」
「まじか、じゃあ一緒に帰れないのかもうちょっと話したかったのにな…」
「それなら、大丈夫だレイ、今日はレイの家に泊まる事になってるからな」
「そうだよ~、レイ君今日は、レイ君の家に泊まりに行くんだよ~」
「うぇッ?!マジで、母さん達から何も聞いて無いぞ?」
んっ、待てよ確か五日くらい前に家に手紙が届いていたな、もしかしたらアレにディー達が泊まり行くって書いてたのか?とすると、母さん達は俺に内緒で決めてたのか、まあ、俺は受験だったから他の事を考えないようにしてくれたのだと思うが教えて欲しかったな…
「いいなあ、皆でお泊り会…」
「シズクも来るか?あっ、でも流石に親が来てるか?」
「行ってもいいの?!」
「ああ、母さん達ならシズクの事も知ってるから多分いいと思うぞ、でも親が来てるなら…」
「大丈夫、来てくれたのはお祖父ちゃんだけだしお祖父ちゃんにちゃんと説明してからレイ君の家に行く」
「なら、いいか…あっ、俺シズクと一緒に帰れないは、そう言えば」
危ない危ない、楽しみが増えて忘れるところだった。放課後は、あの先生と学園長の所に行かないと行けなかったんだ。俺は、3人に何で一緒に帰れないか説明した。
「…レイ、そこまで魔力が高かったのか、いや邪竜討伐したと聞いた時から試験でやらかすんじゃないかと思ってはいたが、まさか最初に測定器を壊すなんてな思いもしなかったよ」
「いや、アレは測定器が悪いんだって、万が一のことを考えて容量を1万で作っておかないから壊れたんだよ。」
「いや、1万ってなんだよ。アレは数字は出ないだろ。普通どう考えても、Sランクまでしか出ないのを壊すなんてな」
「いや、だからあの測定器を鑑定したら容量が5000って書いてあったから、俺は最後の順番になる様に席を決めたんだから、そこは褒めてくれてもいいだろ」
俺は、そう言って、爆弾ハンバーグにかぶりついた。すると、俺と同じようにハンバーグを食べているマール以外のシズクとディーがこっちも見ていた。
「今、測定器を鑑定したって言ったか?」
「ああ、そうだ…いや、何でもない、いやー自分で作ったが美味しいなー」
俺は、またやっちまったと思い棒読みでそう言いながら爆弾ハンバーグにかぶりついた。ディーとシズクはその後、何も聞かずにハンバーグを食べると「美味しい!」と言ってくれ、他の料理も勧めて食べさせると全部の料理を「美味しい」と言ってくれた。作ってる身からすると、笑顔でそう言ってくれただけで作った甲斐があるなと思いながら、流石にでかく作り過ぎたと反省しながらまだ半分も行ってない爆弾ハンバーグを口に入れた。




