第6話 【出会い】
「ふんふーん、ふーん」
黒竜の胃の中から出て数時間後、睡眠をとり終わった俺は、鼻歌を歌いながら湖で魚獲りをしていた。
「ほいっ、お~またでっかいのだ、大量大量っと、よしここらで帰るか」
俺は、大量の魚が入った革袋を持って洞窟拠点へと帰った。帰ってきた俺は、入り口付近で火魔法で火を点け魚を棒に刺して焼き始めた。
焼き始めて数分後、良い焼色が付いた魚を取り口に運んだ。
「ん~、美味しい~」
俺は、また魚を焼いて今日獲って来た分の魚を全部平らげた。魚を食べ終わった後、火を消して、洞窟の中へと入った。
洞窟の中は光魔法で明るくして、洞窟の入り口には木で壁を作ったので安心して眠れる。
次の日、俺は朝早くに目が覚めた。
「夢じゃなかったんだな…よーし、今日は周りの探索をしよう。知らない土地で、いざという時に動けないのはだめだからな」
俺は、護身用にナイフとアイテムバックを持って、湖とは反対方向へと向かって歩いて行った。
「んっ、あれは?」
「グギャッ!ギャ」
木の上に生っている木の実を石を投げて取ろうとしている子供くらいの大きさの何者かが居た。しかしそいつらは子供と違うのが有った、緑の姿に棍棒って事はゴブリンか?よし、鑑定だ
【ゴブリン】:群れを成す種族、1体見つけたら100体は居ると思え
魔物確定ッ!しかし、この説明文どこかで見た覚えが…まぁ、いいかまずは今迄さんざん練習してきた魔法を使ってみるか
「くらえ、【ファイヤー】」
「グギャァァァ」
ゴブリンは俺の火魔法が当たり、倒れた。そして、1体のゴブリンの叫び声が聞こえたのか周りに隠れていたゴブリン達が俺の方へと来た。
「ほいっ、ほいっ、っと、はッ」
「グァッ!」
ゴブリンが、怒って俺に棍棒を振り回してきたのを俺は、横へ後ろへと軽く避け、最後に隙を見せたゴブリンの喉にナイフを刺した。
それを、繰り返していき最後にゴブリンを倒した時には周りに数十体のゴブリンの死体が転がっていた。
「流石にこのままにしておくと、アンデット化するかもしれないから一気に焼くか」
俺は、ゴブリンを一纏めにして火魔法で焼いた。焼いた後、俺は森の探索に戻り夕方近くになった頃に拠点へと帰った。今日は途中で見つけた食べれる木の実を洗って食べて、入り口に木を立てて安全を確認して眠った。
そんな、生活をして洞窟で暮らすことになって3年が経った。その頃には、もう既に洞窟拠点の周りには小屋も作ってたりしていた。
森の中も広い範囲の探索は終わり何処に何が有るかが分かるようになっていた。
「ふう、さてと今日はなにしようかな…」
「ドンッ!!」
「な、何だ?この音の方は森だよな」
俺は、洞窟拠点からナイフを持って音がした方へと向かった。そして、近付き見てみると、そこには盗賊と騎士が戦っていて、騎士の後ろには馬車が止まっていた。馬車は、車輪が取れたのか傾いた状態だった。
(盗賊か、今の俺なら行けるよな…)
前回、というより前世の時は上手く立ち回れず死んだが、今回はステータスも上がってるし何より保険で今は死なない期間だ。よし、行くぞ
「なんだ、ガキ何処から出てきた!」
「森の奥だよッ!」
出るな否や、俺の事を見つけた盗賊の一人が俺に襲い掛かって来た。
「おせーよ」
俺は、そう言って一瞬にして盗賊の後ろに回り込み盗賊の頭を掴み喉にナイフを刺した。人間を殺すのはこれで初めてだったが、流石に異世界に来て大分時間も有ったし、ゴブリンで慣れていたのですんなりやれた。
そして、俺のそんな早業を見ていた盗賊と騎士は俺の方をボーっと見ていたので、騎士はともかく盗賊よ敵の前で唖然としておくとは馬鹿だな、と思いながら移動して1人1人確実に殺って言った。
「大丈夫か?」
「えっ、ああ、助かったよ少年」
俺は盗賊を殺し終わった後、今だ唖然としていた騎士に話しかけた。
「災難だったな、盗賊に会うなんて、というかここらで盗賊何て珍しいから気が抜けてたか?」
「ああ、いゃ最近こちら側へ盗賊が流れていたのは分かっていたんだが罠に引っかかってしまってな、突然の事で皆焦って動けなかったのだ」
「そうか」
こっちに、盗賊来てたのか、それは危なかったな、まぁ俺じゃなくて盗賊だが…理由はまぁ後から分かるだろう。
「あの、隊長すみません馬車の車輪がどうもやられていて、動けない様です。」
「ふむ、困ったな、まだここから町まで距離が有るのに…」
そう騎士が悩んでいたので、俺は自分の性格ゆえにこう言ってしまった。
「車輪なら俺が作れると思うから、作る間俺の家で休むか?」
「少年、車輪を作れるのか?」
「ああ、だけどそこにあるのと全く同じ奴を作ろうとしたら少し時間が掛かるから、こんな盗賊が出るようなところではなく、俺の家のが安全だから移動して作ろうか?」
「頼めるのなら、そうしてくれ」
隊長と呼ばれた人は、そう返してきたので俺は直ぐ家へと向かおうとしたが、馬車の中にいる人たちの事を忘れていたので、出てくるのを待った。
そして、馬車の中から出てきたのは白髪を生やした老夫婦と子供が2人俺と同じくらいの少女と俺より少し上位の少女の兄であろう男子が出てきた。俺は、隊長と呼ばれた男と騎士が3人それと先程の老夫婦の家族と共に家へと向かった。
「すごいな、こんな山奥に立派な家だ。少年、これは誰が作ったのだ?」
「俺だよ。それとその少年ってのは止めてくれ、俺にはレイと言った名前がある」
「ああ、すまない、そうだ私も自己紹介がまだだったね。私はグランだ、よろしく」
「よろしくグランさん」
俺は、そう返し、家の中へと案内してやった。俺は貯蔵庫から木の実のジュースを人数分と最近作れるようになったクッキーを出した。
「ッ、これは美味しいね。それに、こっちのはクッキーだろう、こんな甘いクッキーは食べた事が無いよ。」
「そうか?まあ、たしかに少し甘い気がするが、砂糖は豊富にあるからなまだ試作段階なんだよ。それじゃ、俺は車輪作りに行ってくるから、中でゆっくりしておくといい」
俺はそう言って、家を出て行った。余談だが、俺が出したクッキー全員に人気が有ったらしく少し取り合いをしたらしい
「さてと、まずは車輪の大きさを測るか、【大工:メジャー】」
俺が呪文を唱えると、まだ馬車にくっついている車輪から数字が出てきた。
「この、大きさかなら木材置き場に丁度いいのが有ったな」
そう言って、俺は木材置き場から1本の木を取って来た。それを俺は【大工:加工】と言って全く同じ大きさの木にした。そこから、俺はやすりで研いでいき、丁度良くなったら【大工:作成】と言って車輪を完成させた。
実際の所、直ぐに終わったがこんな変な魔法の使い方している所話見せたくなかったので、俺はあえてあの人達から見られない場所へと送ったのだ。
しかし、本当に便利だよなこのスキル、というか女神さまから貰ったスキルだけど…
そう、これは約2年前に戻る。
「うーん、中々上手くできない…」
それは、俺が家作りに手を付け始めた頃だった。その時は【大工】と言ったスキルは無く、黒竜の胃から出た時からそんな変わっていなかった。
「はぁ…今日も諦めよ。さてと、今日もちゃんとお祈りをして寝るか」
そう、俺は黒竜の胃の中に居た時に信仰心というスキルをゲットしていて教会で働けると書いてあったが、働く気が無かったが拠点に女神さまの像だけは作ろうと思い、1年の年月をかけてやっと出来栄えの良い女神像が出来たのだ。そして、俺は出来てからずっと、像に向かって頭を下げお祈りをする日々だった。
そんな、ある日俺は寝たと思ったら、昔来た覚えがある場所に居た。
「ここは、女神さまの所?」
「ええ、そうよ。久しぶりね貴方、よくここまでこれたわね」
「女神様ッ!」
そう、俺は眠ったと思ったら女神様の所へと行っていたのだった。俺は、もしかして土砂崩れにでもあって死んでしまったのかと聞くと
「いいえ、違うわよ。それ以前に貴方は12歳まで絶対死なないって言ったでしょう」
「あっ、そうでしたね。それでしたら、何故ここに俺は居るんですか?」
「それは、貴方の信仰心が強かったからよ。強ければ強い程、私に会えるんだけど、実際の所私の姿を知っていない人は私以外の神や天使に相手をさせているわ、でも貴方の場合信仰心も誰よりも強く、そして私の姿を知っていたからこそ、ここに来れたのよ」
「そうなんですが、良かったです。一生懸命お祈りをしたかいがありました。あっ、そうでした。女神様、俺を邪竜から助けてくださり、ありがとうございます。」
「いいわよ。折角転生したのにあんなトカゲの胃の中で終わるのは可哀そうだと思い使いを出しただけですから、それで今日ここに呼んだのは、貴方の信仰心が強いのも有るんだけど他にも用事が有るのよ」
「他にもですか?」
「そう、本当はこれは人の世界で言う教会で行うんだけど貴方、街に行かなかったからできなかったのよね。」
「すみません、サバイバルに憧れてましたので…」
「いいわよ。好きに生きなさいと言ったのは私だから、それで呼んだのは貴方にはスキルを選んでほしいの」
「えっ?スキルですか?スキルなら前に決めたじゃないですか?」
「ええ、決めたわよ。でも、こっちの世界でもレベルが上がれば教会でスキルを選ぶことが出来るようになっているの、ポイントの概念がこっちでもあるって感じよ」
「なるほど、でもそれでしたら俺が街に行った時でも良かったのではないですか?」
「貴方の場合、変な溜め方をしたせいで異常な数値なの、これで教会で見て貰ったら貴方の人生そこで終わるわよ?」
「終わる?」
終わるとはどういう意味なんだろう?だって、ポイントが多いだけで人生って終わる者なのか?
「ええ、だってこのまま街で見て貰ったら貴方、勇者扱いされて首輪をつけられるわよ」
「く、首輪…」
女神様が教えてくれたのは、俺が竜の胃の中で変なレベルアップを繰り返したせい+自分の加護のせいで勇者扱いされて俺の人生が終わるかもしれないと思って、今回俺を呼んだのだという。
「な、なるほど、それで見つかる前にここでポイントを消費して行けと言う事ですね。」
「そう言う事よ。スキル設定は前とおんなじだから、でも今回はポイントが多すぎるからポイントの数値をこちら側で上げてるから、変に高いのはそう言う物だと分かって」
「はい、女神様それでは、設定始めますね」
と言う訳で、俺は異常なポイントの量をスキルへと変換して、今回の大工や調理スキルを手に入れたのだ。
(よし、そろそろ良い時間だな…)
俺は、車輪を馬車にはめ込み動くか数回回してばっちりはまってるのを確認して家へと戻った。