第5話 【脱出】
竜の胃の中へ入って、5年経った。あれから、ずっと俺は竜の胃の中で過ごしてきた。まあ過ごすと言っても日替わりで魔法を適当に撃って、魔力が切れたら寝るという生活を送っていた。食べ物とかは無かったが加護のお蔭で俺は餓死することなく生きて来れた。というか、その前に飢えと言う物が来なかった。多分加護のお蔭だと思う。
それと、毎日俺が女神さまに感謝の気持ちを込めて祈って居たら信仰心というスキルが手に入った。これは、女神様からの神託が下りるとスキルの説明に書いてあった。もしかすると、もう一度女神様と話せるかと思い俺は毎日寝る前に祈っている。
(そういえば、昨日ステータス見るの忘れてたな、見ておくか)
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名前:レイ
年齢:5
性別:男
種族:人族【平民】
属性:火・水・光・無
加護:イアラの保険【成人までの限定・完全偽装】 女神の成長祈願
レベル:301
筋力:6090(+20)
体力:6140(+20)
魔力:6160(+20)
敏捷:6090(+20)
【魔法系統】火魔法≪5≫ 水魔法≪5≫ 光魔法≪4≫ 無魔法≪6≫
【術系統】剣術≪1≫ 弓術≪1≫ 体術≪1≫
【向上系統】毒耐性≪1≫ 魅了耐性≪1≫ 恐怖耐性≪8≫ 混乱耐性≪8≫ 夜目≪7≫
【便利系統】鑑定・全≪5≫ 経験値補正≪5≫ 信仰心≪2≫ 異世界言語≪-≫
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(ふむ、一昨日からまた1レベル上がってたのか、もうそろそろこの中でのレベルも限界に近いかな…というか、外に出たいッ!)
俺は、そう思った。だって5年間も同じところに居るんだぜ?それも、目を開けたら俺の周り以外は全て真っ暗、夜目と光魔法のお蔭でなんとか周りを認識することが出来てるくらいだ、これで発狂してないのは多分スキルの混乱耐性のお蔭だろう。しかし、スキルも結構上がったな、元々自力でやろうと思ってたがまさか竜に食われるとは思わなかったからな…
俺がそう考えていると、いきなりドンッと大きな音と揺れがすると、下へ落ちていく感じがしてきた。
「ガァァァ――――」
(まっ、まさかこの黒竜が何者かに攻撃されたのかッ!?)
黒竜の叫び声が聞こえ、焦っていると、また大きな音と地面に打ち付けられた感じがした。そして、黒竜の今まで聞こえていた鼓動が聞こえなくなった。
(ま、マジで黒竜が死んだのかッ!?)
俺は、黒竜の胃の中から、口の方へと歩いて行った。そして、口元に近づくと5年間見たことが無い強い光が見えた。
(外だッ!)
俺は、5年振りに見えた光の方へと走って行った。そして、俺は口から外に出た。
「眩しッ、あっそうか、夜目してっからそれに上乗せされて光が見えてんのか〝【夜目】解除〟…ふぅ、もう大丈夫か、あっあそこにあるのは木の実ッ!」
俺は、5年振りに見た食べ物に水魔法を上手く調整して木の実を木から落とした。地面に落ちる前に上手くキャッチして手に取った。
「それじや、いただきま~、すの前に鑑定っと」
【ラクの実】:甘酸っぱく、デザートとしてよく出される。毒は無し
「よし、大丈夫だな、いただきます。ん~、甘~5年振りの食事最高~!」
俺は、5年振りに食べた食べ物に感動した。そして、ある程度木の実を取り、黒竜の胃の中で見つけていたアイテムバックに入れた。あっ、それと俺は真っ裸では無いぞ?黒竜が飲み込んだ物を溶かされる前に俺がアイテムバックに確保していたからな、今はローブとちょっとぶかぶかな皮靴を履いている。
「しかし、いきなり黒竜が倒されるなんて思ってもいなかったぜ、ってかこの黒竜昔見た時は博多ポートタワー位あったと思ったんだが、福岡ドーム位の大きさだったんだな、しかしこいつを殺ったのはいったい誰なんだ?」
『その、黒竜を殺ったのは儂じゃよ』
「んっ?何処から声が聞こえてんだ?」
『ここじゃ、上を見なさい』
「上?って、また竜ッ!!!」
上を見ると、黒竜より3倍位の福岡タワーと引けを取らない位の大きな白竜が居た。
『この姿じゃ、ちょっと話しにくいの、ちょっと待ってなさい』
白竜はそう言うと、バッと消えた。そして、森の奥から1人老婆が出てきた。
「君が、女神様が言ってた転生者かな?」
「あっ、はい一応転生者です、あのお婆さんは誰なんですか?」
「儂は、さっきの白竜の人化した時の姿じゃ、儂は女神様から頼まれたんじゃ転生者が邪竜に食べられたから出してあげてと」
「女神様がですか、それはありがとうございます。って、え?俺を食べたのって邪竜だったんですか?」
「ああ、まぁ邪竜族のチピじゃがの強い子が生まれて危険だと思ったんじゃろうて、お主を食べて死んだと思って呑気にここらで低空飛行してたから儂が上からぶっ放したら一撃で死んだわい」
「あの、それぶっ放する時、俺が邪竜の胃の中に居る事ちゃんと覚えてました?結構な揺れ有りましたけど?」
「んっ?あったが、お主は女神様の保険に入ってるって聞いておいたから躊躇いなくやったわい、いや~数百年ぶりに良いブレスを放てたわい」
「…さいですか」
俺は、この婆さんに助けられたが、恩を感じなかった。その後、人間の国の近くまで送ってやると言われ背中に乗せて貰い、俺の生まれ故郷に連れて行ってもらった。しかし、そこはもう既に荒れ果てた地になっていて、人が住んでる気配は無かった。俺は近くの山の麓に降ろして貰う事にした。
「こんな、所で良かったのか?儂なら人間の国に入っても特例で認められてるから大丈夫じゃぞ?」
「いえ、サバイバルもしてみたいと思っていたので丁度いいですよ。それに、白竜に乗って来た子供とか変だと思いますのでもうちょっと期間を開けて人間の国へと向かおうと思います。」
「そうか、また何かあれば信仰スキルで女神様に言ってくれれば儂か儂の眷属の奴等が来ると思うからすぐに呼ぶんじゃぞ」
「はい、有難うございます。」
俺がそう言うと、白竜は飛び立っていった。俺は、山の麓から水辺が近い洞窟を探すことにした。そして、運よく湖と洞窟が近くて、開けた土地を見つけた。草木に隠れて周りを確認したが魔物は居ないようだったので洞窟の中に入って行った。
「うん、丁度いい広さだな、奥も行き止まりで奥から何かが来ることはなさそうだ。よし、拠点つくりを始めるか」
俺はそう意気込んで、アイテムバックから色々と出していった。まずは、寝場所の確保で外から木の丸太を取ってきて俺が寝れるだけの窪みを作りそこに、竜の胃の中で見つけていた布団を入れた。これでベットの完成だ。あっ、ちゃんと布団は水魔法で洗って、火魔法で乾かしてから入れたから汚れと匂いは大丈夫だ。
次に、食料だが湖に魚が沢山居たので、後で獲ってそれを焼けばいいだろう。
「いや、一回してみたかったんだよな、サバイバル」
俺は、これから始まるサバイバル生活に楽しみを感じながら、魚獲りへの準備を始めた。