第39話 【女神の対談】
そして、シズクとの別れの日の前日、俺達はアマンダさんの宿屋でちょっとしたお別れ会をしていた。
「寂しくなるわね~、レイ君はリゼちゃんやゼンちゃんが連れて行くのは前々から予想してたけどシズクちゃんも里に帰っちゃうなんて~」
「すみません、アマンダさんどうしても今の力じゃ満足できないので一回お祖父ちゃんの所戻って強くなりたいんです」
「分かってるわ、私は止めないわよ。でも、いつか戻ってきてくれると嬉しいわ」
「はい、分かってます。私もアマンダさんにはお世話になりましたから絶対に会いに来ます!」
そう言って、シズクとアマンダさんは泣きながら抱き合った。俺は入らないでおこうかなと思ったがアマンダさんとシズクから見られたので俺も抱き合うのに参加した。そして、シズクがグランさんの家の厨房で作っていたハンバーグをアイテムバックから出し、ジュースも一緒に出し乾杯をしてハンバーグを食べた。アマンダさんはシズクが料理を作ってくれたと聞いて、また泣き出し(乙女泣きじゃなくて、男泣きで)ハンバーグを食べていた。
☆★☆
レイ達がお別れ会をしている時、レイのいる世界とはまた別の世界【神界】にて三人の女性が集まって話し合いを始めようとしていた。話し合いに参加しているのはこの世界の神々の中でもトップクラスで強く美しい女神の3柱
・作物豊穣と子の成長を司る女神イアラ
・鍛冶と魔具を司る女神セーラ
・魔力と魔法を司る女神リュアン
三神は、丸テーブルを囲むように座って真ん中に置いてある。レイからの御供え物であるクッキーと各自の手元にはジュースが置かれていた。
最初に、クッキーに手を付けたのは魔力と魔法を司る神リュアン、クッキーを口の中に入れた後ジュースをゴクッゴクッと飲んだ
「はぁ~、良いわねイアラ、こんなおいしい物をお供えしてくれる使徒が居て~」
次に、手を付けたのは鍛冶と魔具を司る神セーラ
「そうね。それも、これを私達に黙って1人で食べてたんでしょ~、それはそれは美味しかったでしょうね~」
二人はクッキーを食べ、ジュースを飲みながらイアラへ冷めた目を向けていた。
「ごめんってばセーラ、リュアン本当は教えたかったんだよ。でも、私が送った子今まで他の神に取られて今回は、もう取られたくないと思って誰にも見つけられないようにしたかったの!」
「そうね~、確かに今まで取られた時私達の所に泣きついてきてたけど…それと、これは別よねリュアン」
「そうね。美味しい物、それもお菓子を私達に黙って食べていたなんて許されないよ?」
「うう、だって~」
イアラは、二人からのそう言われて涙を浮かべ反論しようとしたが、二人からの冷めた目で見られテーブルに顔を伏せて泣き始めた。
「はぁ~、ま~たそうやって泣いて、だから転生者の子から逃げられるのよ」
「うう、今回はまだあの子に見られてないもんッ!」
「威張る所じゃないわよ。その、泣いた時の「~もんッ!」も止めなさいと前から言ってるでしょ。」
「私の口癖だもの、ちゃんとあの子の話すときは威厳を溜まったままの姿で話してるもんッ!」
その後、イアラはある程度泣き終わった後、リュアンとセーラから許してもらい皆でクッキーとジュースを美味しく頂いた。
「それにしても、今回の子は中々面白そうね。保険付けてたお陰で今生きてるけど、付けて無かったら邪竜の胃の中で死んでたんでしょう?」
「ええ、一応私があの子の危険を察知して保険を付けるように言ったのが良かったわ」
「…そうだ、セーラ」
「何?」
そこで、イアラは何か嫌な予感を察して逃げようとしたが手をリュアンに掴まれて逃げれなかった。そして、リュアンはセーラにある提案をした。
「あの子に、私たちの分のクッキーをお供えできるように私達の加護を与えてみない?そしたら、今まで美味しい物を取って来たイアラの分も回収出来るわよ」
「いいわね。それ、乗ったわよその提案」
「ええぇ!!やめてよ2人とも、私のレイ君を取らないでよ!もうすぐで信仰心のレベルも高くなってきてるから契約も出来るんだから!」
イアラは二人の提案に対し猛反対した。
「いつから、イアラだけの転生者になったのかしら?転生者の子が神を選ぶのよ?それに、私達は別に最初は狙ってないわよ。流石に友達の使徒を横取りして契約を最初に結ぶことはしないわよ」
セーラは、イアラを宥める様にそう言った。言われたイアラは、セーラからリュアンの方を向いた。
「うう、本当に?リュアンも?」
「分かってるわよ。私も友達の使徒を横取りしようとは思わないわよ。まあ、私は美味しい物目当てだし、それに今は他に誰も契約してる子がいないからセーラより多くの加護を与えれるわよ。そしたら、あの子の技術も上がってもっと美味しい物を作れるわよ」
「それだったら、私もバンバン加護を与えてあの子を強くさせてあげましょう。…って、そう言えばその、転生者のステータスを見てないんだけどリュアンは見た事ある?」
「私も無いわね。イアラ、参考までに見せてくれるかしら?」
「ええ、良いわよ。あっ、でもここにはあの子も知らないことが書いてあるから教えちゃだめよ」
「?本人にも隠してる事?」
そう二人は、疑問を浮かべながらレイのステータスを見た。それを見たリュアンとセーラは驚き、立って居たのに椅子に倒れる様に座った。
「な、なによこのステータス、というかスキルが可笑しいわよ。どうして、こんなことになってるのよ」
「えっと、あの子に成長の加護を与えたら色々と頑張ったみたいで、それについつい私も手を貸した結果がコレなのよ…だから、あの子にも私が完全偽装したのを見せてるの」
「…ハァ、呆れた。これ、私達の加護無くても世界の覇権握れるわよ?いっその事世界征服でもさせてみたら?この間来たばかりの転生者の勇者君より十数倍以上の強さ持ってるじゃない」
「それはダメ。あの子はあのままがいいの。それに本当に危なくなった時に私が教えるから2人は黙っててね。そうじゃないと、加護を与えるのは私の方からレイ君に言って受け取らないようにするから」
「はいはい、分かったわよ。あの子には言わないから」
そう言って、リュアンとセーラはイアラにレイとの仲介人となって貰う事でレイに加護を与える準備を始めた。
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アマンダさんの所でのお別れ会も終わり、外は日が沈み始めていたので俺は少し早歩きで家に帰った。家に帰ってきた俺は、この間からハンバーグをギンさんと共に味を高める事を目標に夜の料理には俺も参加していた。
俺は女神様の分、ギンさんはグランさん達の分を作っていて、今日も今までより良い出来に仕上がったハンバーグ冷めないうちにアイテムバックに入れ、練習場から庭の出来上がったばかりの小さな教会風の建物にお供えしに行った。
「イアラ様、今日も美味しく出来上がりました。どうか、お食べ下さい…」
俺は、そう言ってお祈りをして、戻ってご飯を食べようと思い顔を上げると、そこにはイアラ様とイアラ様に似たオーラを感じる2人の女性が立って居た。




