第201話 【破壊神対創造神・1】
目前まで迫って来た巨大な岩。
次の瞬間、その大きな岩は目の前でスパンッと消え去った。
破壊では無く、その場から一瞬にして消え去った。
「ッ! セラ様!」
「うむ、アルが出て来た様じゃから妾も出て来たんじゃよ」
パッと上を後ろを振り向くと、そこには神界で何度も会った創造神であるセラ様が居た。
セラ様の登場に俺は安堵していると、横に居るアルフさんが「あの神様は誰なんだい?」と尋ねて来た。
そう言えばセラ様って、少し前まで引きこもっていたからアルフさんも知らない神様なのか。
「アルフさん、あの方はこの世界の創造の神。セラ様です」
「えっ、創造神って確か部屋にずっと引きこもってるって聞いてるよ。本物?」
「本物じゃよ。異界から来た転生者」
セラ様は疑ったアルフさんに対して、目を細めながらそう言うと少しばかり力を解放させた。
その光景をみたアルフさんは「す、すみません」とすぐさま謝罪をした。
「レイ。そこの者と共に周りに居る者達を下がらせるんじゃ、アルは妾が相手をする」
「分かりました!」
「勝手にさせないわよ」
セラ様の指示に動こうとした俺に、破壊神は腕を振るい次元の裂け目を作り上げた。
しかし、それと同時にセラ様が次元の裂け目を造り直し、裂け目は消えた。
「破壊をしたところで直ぐに修復させられるぞ、大人しく話を聞くのじゃアル」
「今更何?」
セラ様と破壊神は互いに見合い、先に破壊神が動いた。
破壊神はセラ様がどうにかしてくれる事を信じ、俺はアルフさんと共にその場から離脱した。
「レイ君。あの方がこの世界の創造神なのかい?」
「はい、そうですよ。取り敢えず今は、下で戦ってる人達を回収して王都まで戻りましょう。聖竜様も手伝ってもらえますか?」
丁度俺達の所に到着した聖竜様にそう声を掛けると、聖竜様は「ええ、分かったわ」と直ぐに状況を察して協力してくれた。
それから俺達は、神々の戦いに邪魔にならない為に、王都の中へと避難した。
現在、王都の外に居るのは、巨大な邪竜と戦っている覇竜様。
アークと未だ壮絶な戦いを繰り広げているジンさん。
そして敵の親玉である邪神・破壊神アルとセラ様。
後はまあ、有象無象の存在と化してる魔物と邪信教だが、それぞれの戦いが激化して魔物達は王都に辿り着く前に消えて行っている。
「なんか、もう王都の外にすら出れない状況になったね」
アルフさんの言葉通り、王都の中に避難した戦士達は外の戦いを見て唖然としていた。
まあ、そうなるよな……怪獣対戦、強力な魔法の撃ちあい合戦、神と神の戦い。
どれもこの中の人達じゃ、太刀打ちできない戦闘風景だ。
(レイ君。今良いかしら?)
(……イアラ様ですか?)
突然脳内にイアラ様の声が聞こえた俺は、慌てずそう聞き返した。
(ええ、今は現世に降臨して念話でレイ君に話しかけてるのよ。そっちの状況はどうかしら?)
(今の状況ですか? えっと……)
イアラ様からの質問に対して、今現在の外の様子を伝えた。
(成程、セラはアルと戦ってるのね……)
(はい、壮絶な戦いをしていますね。イアラ様は今どちらに居るんですか?)
(一応、ナロウディ王都内に居るわよ。でも今はちょっと手が離せないくて、レイ君に状況を聞いたのよ)
(そうなんですね。他の神様も下界に来てるんですか?)
(居るわよ。加護を貰ってるレイ君なら、セーラ達の姿を確認出来ると思うわ)
イアラ様からそう言われた俺は、バッと上を見上げた。
するとそこには、俺に加護を与えてくれている神様達が居た。
(あっ、セーラ様達居ました)
(セラがもし負けそうだったら、加勢に出るようにしてるのよ。セラは絶対に負けないって言ってるけど、心配だからね。相手は、アルだもの……)
イアラ様はそう言うと、また何かあったら連絡してと言って念話を解除した。
イアラ様との話が終わり視線を感じて隣を見ると、アルフさんから不思議そうに見つめられている事に気が付いた。
「レイ君。さっきから挙動がおかしかったけど、何かあったの? 上を見上げたりしてたけど……」
「あっ、イアラ様と念話をしてたんです。他の神様達も下界に降りて来てるって言われて」
俺のその言葉にアルフさんは「そうなの?」と言って、俺の時と同じように上を見上げた。
「あっ、本当だね。沢山来てるみたいだね」
アルフさんも俺と同じように沢山の神々から加護を貰ってる為、その姿を確認出来たようだ。
そんな風にアルフさんと話をしていると、王都の外から高威力の魔力と魔力がぶつかり凄まじい振動が王都の中まで響き渡った。
そしてそれから数秒して、王都の門からジンさんが疲れた表情で入って来た。
「ふぅ~、久しぶりにあんなに動いて疲れたの~」
そういう言いながら入って来たジンさんは、ドサッと地面に座った。
俺は慌ててジンさんに近づき、回復魔法でジンさんを癒した。
「すまんのレイ君。流石にアークとの戦闘で魔力は空っぽになってしまって、自分に回復魔法をかける余力すら残らんかったわ」
「それだけの相手だったんですね。ジンさんが居なかったら、相当被害が出ていたでしょう。本当にありがとうございます」
「レイ君がお礼を言う事は無いぞ、それに久しぶりにあのような者と戦えて儂は楽しかったしの」
ジンさんは満足そうに言うと回復魔法の気持ちよさ、更に魔力を限界まで使った事で睡魔が遅い気持ちよさそうに眠りについた。
そんなジンさんを俺は安全な場所であるシェルター内に転移魔法で移動させ、ベッドに寝かせてアルフさん達の所へと戻った。




