第196話 【襲来・2】
ソレは何の前触れも無く、突然起こった。
クレナを連れて来て客間でタブ達と話をしていると、一瞬嫌な予感を感じ取った俺は話の最中だったが窓の外を見上げた。
「ッ!」
まだずっと先、王都からかなり離れた位置に邪信教の集団を感じ取ったと同時に王都へ強大な魔力の魔法を感じ取った。
誰よりも早く感じ取った俺は王都の上空へと転移魔法で移動し、その魔法に対して同程度の魔法を放った。
そして魔法を相殺した俺は、そのまま城壁に降り立つと真上から強大な魔力を感じ取り見上げた。
「ほう。手加減していたとはいえ、我の魔法を相殺するとは中々やるではないか小僧」
「だ、誰だ!」
急に近くに現れた強大な魔力を持つ男に、俺は身を構えながらそう叫んだ。
しかしそんな俺だったが、脳内ではこの男が誰なのか予想がついていた。
こんな有り得ない魔法を使える奴何て殆ど居ない、話でしか聞いた事が無いがこの男はきっと……
「我か? 我は邪神様を崇める使徒にして、最高最強の魔法使いアーク。我の魔力に恐れず歯向かうその心意気。気に入ったぞ、小僧」
やっぱり、当たっていたか……
予想が当たっていた俺は、内心毒づくとそんなアークに対して話しかけるもう一人の男が現れた。
「アークさん。その子、僕のお気にだからとっちゃ駄目ですよ?」
「んっ? というとこの小僧がセージが言っていた転生者か……成程成程。興味を持つ理由が分かるな、我もこの数分間で気に入ったな」
「だーから、とっちゃ駄目ですよ? それにアークさんにはもっといい相手がいるんでしょ?」
そうセージ言うと、王城の方から数名の魔力の高い者達が現れた。
覇竜様、聖竜様、アルフさん、ジンさん。
そして邪信教と戦う為に集まってくれた人達も、続々と王都の外へと出て来た。
「ほらほら、出てきましたよ。アークさんが戦いたいって言ってた爺さんが」
「うむ、そうだな。我は先にあっちと勝負をするとするか。小僧。セージに勝つんだぞ? 我と遊ぶためにな」
「ちょっと! 何で敵を応援してんですか!」
アークと呼ばれた男はそう言うと、俺から目線を外し下に居るジンさんの所へと降りて行った。
「お久だね。転生者君? あれからどうかな~?」
「……」
「あらら、僕とは話してくれないのかな? それとも早く、やりあいたいのかな?」
セージはニタッと笑みを浮かべると、隠し持っていたナイフを取り出し俺に急接近して来た。
俺はそのセージの攻撃を読み回避をして、剣を取り出して構えた。
「いいねぇ、いいねぇ、いいねぇぇぇ! 前の時と目つきも雰囲気もぜんっぜん違うねぇ! さあ、さあ僕とやりあおうかぁぁぁ!」
興奮しだしたセージはそう叫ぶと、魔力を高め先程よりも速いスピード攻撃を行った。
上下左右、足払い、目突き。
セージの戦い方は型にはまった戦い方では無く、我流で読み辛い戦い方を繰り出している。
そんなセージに対して俺は、ジンさんとの模擬戦で培った対人戦の対処法。
もう一人の俺が神様の攻撃を見てスキルとして体現こそしなかったが、それに近しい能力。
相手の次の攻撃を先読みする【千里眼】の力を使い、俺はセージと激しい攻防を行った。
「強くなったねぇ、転生者君! 僕、ビックリしちゃったよ。あんな能力付けてたから、てっきり戦いはしたくない子かと思ってたけど、違ってたんだねぇぇ!」
戦いながらセージは、笑みを浮かべながらそう言った。
楽しそうに戦いをするセージとは反対に俺は、険しい表情を作り戦闘をしている。
こんな変な戦い方の癖に、隙が全くねぇ……
以前と比べ能力値も戦いの技術も向上している俺だが、それでもセージとは互角の状態だった。
前回、どれだけ舐められていたのか痛感し、あの時、舐めてくれていた時にやっていれば良かったと俺は心の底から後悔した。




