第195話 【襲来・1】
王都へ戦士達が集まり、一週間程が経過した。
混乱状態だった王都の民達は、その戦士達の姿を近くで見る事で恐怖に怯える日々は緩和された。
それと物資の移動に関しても、覇竜様が一緒に連れて来た竜人さんが護衛をしたり、背に荷物を乗せて国の物資を届けまわってくれている。
そのおかげで、餓死をする状態には今の所なってはいない。
「覇竜様の国と縁があって本当に良かったな……」
そうじゃなかった場合、今のような落ち着いた日常はまだまだ送る事は無かっただろう。
「レイ君、今よいか?」
「んっ、良いですよ。ちょっと瞑想してただけですので」
癖というのは中々取れず、里での訓練を王都に戻ってきても早朝から朝食までの時間行っている。
そんな訓練中の所に、ジンさんはやって来た。
この一週間、ジンさんは俺の王都の家で暮らしている。
万が一の時に直ぐに動けるようにという理由と、シズク達が守りやすいという理由からだ。
「レイ君の友人が来ておるぞ」
「友人ですか?」
ジンさんの言葉に、誰だろう? と思いながら立ち上がり家の中に入った。
ディーやシフォン達かな? と思いながら、客間に向かうと部屋の中には、タブとタブの仲間達が居た。
「タブ。どうしたんだ? この一週間、姿を見なかったけど?」
「ああ、会議の後にギルドに行ってワイバーンが居る場所を教えて貰って、今日までそこに行ってたんだよ」
俺の質問に対してタブは、真顔でそう答えた。
エルダの時よりクレナに反応してたが、そこまでしてワイバーンが欲しかったのか……執念というか、根性が凄いな……
「んで、一応レイディアにはアドバイスを貰ったし、顔合わせをしておこうと思ってな。こいつが俺の従魔にしたブラックワイバーンのヴェルだ。ヴェル。レイディアに挨拶をしろ」
タブはそう言って、新しく加わっていた黒いコートを着た人を俺に挨拶をするように言うと、顔を覆っていたコートを取らせた。
「あっ、初めまして僕はタブ様の従魔になりました。ブラックワイバーンのヴェルと申します……よ、よろしくおねがいします!」
タブに挨拶をするように言われたブラックワイバーンが人化したらしき相手は、オロオロとしながらそんな風に挨拶をした。
「……なんか思ってたのと違うんだけど、タブ何をやったんだ?」
「実はな……」
そう言ってタブは、このワイバーンとの出会いを話してくれた。
ギルドで最近目撃されたワイバーンの情報を得たタブ達は、その場所に行くと一匹の黒い竜を発見した。
見た目から邪竜だと勘違いしたタブ達は、問答無用に襲い掛かると泣きながら逃げ回り始め、違和感を感じたらしい。
「んで一度捕まえて話を聞くと、こいつ実家でグータラ生活してたら追い出されたらしく一人でその辺で生活していたんだ……」
見つけたワイバーンは、実家から追い出された〝引きこもりの駄竜〟だと聞かされたタブは、このワイバーンを見なかったことにしようとした。
しかし、タブとの戦闘でブラックワイバーンの住処は壊され、更に人間に自分の情報が渡っている事に気付いたワイバーンは、タブに縋りついたらしい。
「そういった経緯で、こいつを仲間にしたんだよ。一応、ワイバーンとしての能力自体は高いし、王都まで俺達を乗せて来る事も出来たし中々使える奴ではあるぞ」
「そ、そうなのか? それならまだ良かった。のかな?」
俺はそう困惑しながら、タブにそう言葉を返した。
「それとレイディア。こいつダボ着いた服しか着たがらないから分からないと思うが、一応女だからレイディアのワイバーンの友達として紹介してやってくれないか?」
「声質的にどっちか分からなかったから、教えてくれて助かるよ。それとクレナへの紹介も分かったよ。今からちょっとクレナを連れてくるから、待っててくれ」
そう言って俺はタブ達を部屋に残したまま、クレナが居る地下の訓練場へと迎えに行った。




