第194話 【団欒・2】
その後、一度自分の家の方にも顔を見せに向かった。
俺の家の方には、ジンさんが居ない間一人で暮らさせるのは忍びないとシズクを家に泊って貰っていた。
「ただいま」
そう言って玄関から入ると、リビングの方からヒョコッとシズクとクリティが顔を出して驚いた顔をした。
「れ、レイ君!?」
「主様!?」
二人は俺の登場に驚き、二人してバタッと床に転んだ。
「だ、大丈夫か?」
「「大丈夫」です!」
シズクとクリティは声を揃え、そう発すると慌てて俺の元に近づいて来た。
興奮してる二人を取り敢えず宥め、リビングに移動して話をする事にした。
「その、レイ君。さっきは驚いて言えなかったけど、おかえりなさい」
「あっ、おかえりなさいませ主様!」
シズクとクリティは椅子に座ると、そう俺に言ってくれた。
二人からそう言われた俺は、改めて「ただいま。シズク、クリティ」と言った。
「それにしてもレイ君。雰囲気がちょっと変わった感じがするね」
「そう? まあ、この一ヵ月間ジンさんに鍛えて貰ったから、そのせいかもね。ちょっと筋肉もついたし」
シズク達には俺がジンさんと修行に行くのは、邪信教との戦う為と言っている為、魂の融合部分等は話せない。
なので筋トレをして付いた筋肉を見せながら、そういう風に言うとシズク達は納得してくれた。
「それでこっちはどんな感じだった?」
「う~ん、ちょっとピリついてる感じかな? やっぱり、いつ邪信教が襲ってくるか分からないから皆不安なのかな」
「成程な……変わった点とかはあった?」
「変わって点ですと、食料や装備品の物価が高くなってました。以前と比べて、物の価値が高くなってるんだと思います」
俺の質問に対して、クリティはそう王都の様子を説明してくれた。
一応そういった時の為に、この家と実家の方に俺が貰った金を沢山置いて修行に出ていた。
「まあ、やっぱりそうなってたか。金を置いて行ってて良かったよ」
「主様のおかげで飢える事はありませんでした。ありがとうございます」
その後、シズク達には他に変わった事、気になった事を聞いて王都も大分被害が出ているみたいだと感じた。
「ディー達とは、連絡とってたりしてた?」
「うん、ディー君達も王都からは出てないみたいだったから、定期的に知り合い同士で集まって情報の交換はしてたよ」
「そっか、ディー達も元気なら良かったよ……」
そう言った後、暗い話はここまでにして、シズク達を連れて俺はもう一度実家の方に戻った。
そして父さん達とシズク達と一緒に、ちょっと早めの食事をする事にした。
里で食べさせてもらった料理は、こちらではあまり食べない物ばかりだった為、少し前からジンさんにお願いしてちょっと多めのお土産を用意してもらった。
勿論、金はちゃんと支払っている。
「凄く美味しそう!」
里の料理を見た皆は、声を揃えてそう言って食べ始めると美味しそうに食べ進めて行った。
俺に気付かせない様にしてはいたが、父さんと母さんの顔に疲労が出ていた。
多分、変わってしまった王都で子供やシズク達の事を気にして、疲労が溜まっていたのだろう。
そんな顔も美味しいご飯を食べる事で、少しだけ和らいでいた。
「んっ? レイは食べないのか?」
父さん達の様子を見ていた俺に、美味しそうに食べていた父さんが食べていない俺を見てそう聞いて来た。
俺はそんな父さんに対して「いや、食べるよ。父さん、それ多分好きだと思うよ」と言った。
すると、父さんは俺が教えた料理を口に入れると凄くパァと笑顔を浮かべ「美味いな!」とパクパクと食べ進めて行った。