第19話 【豚撃退・親の強さ】
街に着いた俺は、まず冒険者ギルドに行く事にした。何故、ギルドに行くかと言うとエルダの従魔登録をしておかないと後々面倒な事が起こりそうだと思い、女神像作りより優先してギルドへと向かった。
ギルドに着いた俺達は、中に入り受付の順番を待つことにした。そんな時、受付を待って居る俺の肩を誰かがポンポンと叩いてきた。
「んっ?何だ?」
俺は、後ろを振り向くとそこには腹がぼよ~んと出ていて、顔には汗をタラタラと流している貴族らしい服を着た豚男が立って居た。男の横には、執事であろう男が一緒に立って居た。
「お前が持っている。その奴隷、いくらで売るか?」
「…は?」
いきなり、そう言われた俺は一時の間固まった。しかし、俺はこの男は俺の横で待って居た〝エルダ〟を奴隷と思い、それを買いたいから俺に言ってきたのだと理解した。
「俺は、奴隷何て持ってませんよ?」
「嘘をつくでない、その横に居る女はお前の奴隷であろう」
「いや、だから俺は奴隷は持ってないって言ってますでしょう?この子は、俺の従魔ですよ」
俺がそう言うと、横に立って居たエルダは「私、魔物だから奴隷じゃないよ」と言った。それを聞いた豚男は、何故か嬉しそうに笑った。
「ほう、それだったら安値だな、どうだ1金貨で売るか、そうか売りたいか、よーし良いだろうバズ金をこの男に」
「いや、だから売らねって言ってんだろ、何勝手にエルダの手を捕まえてんだ」
俺は、いきなりエルダの手を掴んで連れて行こうとした男の手を叩き、男の手よりエルダを奪い返した。俺が奪い返したのに驚いた豚男はいきなり大声で叫びだした。
「貴様、何をする。その者は私が買うと言ったのだ大人しく売ればよいのだ、それによりにもよって私の手を叩いたなパパにも叩かれた事無い私の手をッ!!私はブータリッヒ公爵家次男、タブ・ブータリッヒだぞッ!!」
「知らねえよ、人の従魔を奪おうとしたお前が悪いだろう。どう見てもよ」
そう言って、周りで見てた冒険者を見ると、周りに居た冒険者の人達も「そうだな」「当然の事だ」と言っていた。流石、日夜自分の従魔や奴隷と生活してるだけある。
「どうしましたか」
騒ぎを聞きつけてきた受付の人がこちらへと来てそう言った。
「そこの者が、私へと危害を加えたのだ公爵家次男の私にだッ!」
「それは、誠でしょうか…」
「まあ、たしかに手を叩きはしたがまず最初に人の物に手を付けたのは、そこの豚男だぜ?従魔を勝手に奪われそうになったから俺は取り戻しただけだ」
俺がそう言うと、受付の人は困ったような顔をした。すると、奥の扉から1人の女性が現れた。
「「ギルド長!」」
「ギルド長?」
女性の方を向いて、他の冒険者や受付の人が敬礼をしていた。俺は今何が起こっているのか、良く分からず女性が近づいてくるのをただ見てるだけだった。
「また、貴方ですかぶt…タブ・ブータリッヒ前言いましたよね。次騒ぎを起こしたらギルドへは出禁にすると」
「いや、しかし今回はそこの者が私の言う事を…」
「あのですね。貴方がどう騒ごうと私はどうでもいいんですよ。ですが、この子は貴方が相手して良いような子でしないんですよ」
「そんな、子供が私より上だというのか?」
「…貴方の目は脂肪で隠れている様ですね。はあ…見てわかると思いますがこの子の髪色は銀髪です。それもこんなきれいな銀髪を持っているのはこの街でこの子と後1人だれですか?」
「銀髪…ま、まさかッ!!」
豚男はいきなり、震えだした。
「ようやく、気が付きましたか?そうですこの子はあの方【白銀の魔女】ことリゼ・マグラットの息子様ですよ。貴方がもし、この子に危害を加えたと知ったら、あの方が貴方に対しどんな事をするか想像つきますでしょう?」
「ず、ずびまぜんでじたー!!」
豚男は、泣きながら執事と共に冒険者ギルドを走り去っていった。その後、俺は受付にもう一度並ぼうとしたらギルド長に呼ばれ奥の部屋へ連れて行かれた。
「すみません、あの場で貴方の身分を明かしてしまって」
中に入ると、突然先程会った女性、ギルド長が謝って来た。俺は、慌てて止めに入り頭を上げてくださいと言った。
「別にいいですよ。それに、俺の身分何てただの平民ですしバレた所で…」
「いえ、貴方に関しましてはこのギルド、いえマグラット領では貴族以上の扱いをするでしょう。」
「…どうしてですか?それと、俺の事は〝貴方〟ではなくレイと呼んでいいですよ」
「そうですか、ではその意味を教えます。単刀直入に言いますとレイ君のご両親が関係してあるのです。レイ君のご両親はこのギルドでは凄く有名であり、他のギルドへ行っても名前を言えば皆が知っているような人物なのです。まず、母方リゼ様は現在冒険者ランクはCランクではありますが実力はBランク以上でAランクの人にも勝るようなステータスを持っています。それに、魔法の操作が上手く稀に見る五属性使いなのです。」
「ご、5ッ!!」
「はい、五属性の魔法を使いこなすリゼ様は法魔術ギルドにも加入しており、年に数個は魔法技を編み出しているのです。それもあり、リゼ様は冒険者ギルドではCランク、魔術ギルドでは今現在五人しかいないSランク魔術師として知られております。」
俺は、この場で初めて自分の親の凄さを知らされた。まさか、自分の親が俺以上にチートなのが分かり驚きを隠せなかった。
「驚くのは、まだ早いですよレイ君、レイ君の父方のゼン様は武器や魔法は使えませんが、自分の身体だけでこの国の剣聖様と互角に戦えるのです。剣聖様は人族の筋力ステータスでは最高峰の方ですそんな方と互角に戦えるゼン様は、魔術が使えない剣士や武闘家の憧れの的です。」
「…まさか、両親共々そんなに有名とは思いも知らなかった。」
「グラン様は教えにならなかったのですか?」
「聞いたけど、「会ってからのお楽しみだよ」って言われて、はぐらかされてた。…」
(ちょっと待てよ、俺両親と会った時に自分の力を見せようと思ってたんだが、これじゃ両親の足元にも及ばないんじゃないか?)
その後、俺はギルド長と少し話をした後エルダの従魔登録をして冒険者ギルドを出て行った。出て行く時、周りの冒険者がヒソヒソ声で「あの子がゼン様の息子さん…」だとか「リゼ様と同じ銀髪で、あの美形、良いわね…」だとか言われていた。前の言葉は、まあ有名な人の息子だからこうなるのは分かってたが、後の言葉女性から言われてたら良かったんだが生憎とさっきまでギルドに居た中には女性は1人も居なかった。
俺は、この街で二度目の危機感を味わいながらもグランさんの家へと向かって歩いて行った。