第187話 【修行の日々・3】
「ふふ、レイ君は本当に顔に出やすいの」
美味しさを噛みしめながら食べていると、対面に座っているジンさんが笑みを零しながらそう言葉にした。
「そ、そんなに顔に出てました?」
「出ておるよ。風呂では凄く気持ちよさそうな顔をしておるし、食事の時は本当に美味しいと気持ちが顔に出ておるの」
「知らなかった……」
まさか自分が顔に出るタイプだとは……
「まあ、良い。今日も修行を頑張ったんじゃから、沢山食うんじゃよ」
「はい!」
その後、俺は出された食事を完食して借りている部屋へと移動した。
既に風呂と飯を済ませた俺は、寝間着に着替えて横になった。
クレナ達、従魔組は今は風呂に行っているので部屋には俺一人だけだ。
「ふぅ~、今日も訓練疲れた~」
体は動かしてないけど、精神的な疲れが有り体動かした訓練の時よりも疲労感で言えばこっちの方が高い気がする。
そんな事を考えながら、横になっていた俺は疲れが溜まっていたのでクレナ達を待たずして眠りについた。
その後の修行は、相変わらず瞑想ばかりしていた。
流石に体も動かしたいと思った時は、ジンさんは意見を取り入れてくれて偶に模擬戦もしてくれた。
そのおかげで自分の中で迷いが出来ていた戦い方を、新たに発見する事が出来た。
そうして一ヵ月という短い訓練期間は、終わりを迎えた。
「レイ君。よく頑張ったの、これで訓練は終わりじゃよ」
「ありがとうございました。ジンさん」
最後の日、訓練を終えた俺は最後までやりきった俺に対しして労いの言葉を掛けてくれたジンさんにお礼を言った。
最初の頃は、一日を通して瞑想をすることが出来ないかった。
しかし、今では日の出と共に訓練を開始して陽が落ちる時間まで、集中を解く事無く続けられるようになっていた。
変わったのはそれだけではなく、瞑想によって心が鍛えられた俺は以前よりも体が軽く感じ、頭の中も以前に比べて雑念が無い状態になっていた。
「レイ君。たった一ヵ月という短い期間で、よくそこまで瞑想を極め心を鍛えられたの」
「訓練の環境が良かっただからですよ。美味しいご飯に気持ちの良い風呂、そしてこの自然に囲まれた修行場所のおかげです」
そう答えるとジンさんは、嬉しそうにニコニコとした笑顔を浮かべて俺達は一度家に戻った。
家に戻った俺達は風呂で汗と疲れを取り、ジンさんの部屋で話し合いをする事になった。
「これは以前から決めて居った事じゃが、この後イアラ様にお呼び出しされるじゃろう。そこでイアラ様から判断が下されば、レイ君は二つの魂が融合すると言っておられた」
「そうですか……もう一人の俺も頑張ってましたし、合格したいですね」
「そうじゃな、儂の見立てではレイ君自身の心の鍛え方は儂の予定よりも遥かに上に行って居るから、儂の意見としては合格するんじゃないのかと思って居る」
ジンさんはそう言うと、俺の顔を見て「レイ君の頑張りは、儂が一番知って居るからの」と続けて言った。
「それにもしもし駄目でも、まだ少し猶予はあるからのう。外の情報によると、竜人国はナロウディ国へと到着しておるみたいじゃ」
「覇竜様の国でしたっけ? 来てくれたんですね」
「うむ、儂も少し心配じゃったが覇竜の奴はナロウディへ数百の戦士と共に来たようじゃ、個々の強さが尋常じゃなく強く今はナロウディの兵士と共に訓練をしておると聞いたぞ」
覇竜様の国の戦士、聞いた話だと戦士一人一人の能力はAランク冒険者と変わらないって聞いた事が有るな。
そんな凄い戦士が数百って、覇竜様は凄く王様に恩義を感じてたんだな。
「ッ! ジンさんすみません。話の途中ですけど、イアラ様から呼び出しがかかったみたいです」
「うむ、そうか。頑張って来るんじゃよ」
「はい。必ず成功させて戻ってきます」
ジンさんからそう言われた俺は、返事をしてから神界へと向かった。