第186話 【修行の日々・2】
再開後、誰かに話しかけられる事も無く、ただひたすら訓練に集中をした。
集中すればするほど、この訓練はより良い効果があるとジンさんも言っていた。
なので俺は、ひたすら訓練に集中をして気付いた頃には、辺りには陽が沈みかけていた。
「レイ君、今日の修行はここまでじゃよ」
「……はい」
自分の修行を終えて俺の所へと戻って来たジンさんにそう言われて、俺は瞑想を止めた。
そして楽な体勢をして、ジンさんを見上げた。
「どうじゃね。修行にはなれたかの?」
「はい。大分慣れてきましたよ。コツも掴んできましたので、最近は直ぐに頭をスッキリさせて瞑想出来る用になりました」
「ほほう。それはそれは、その領域に行くのは何年もかかるのじゃがレイ君は要領が良いの」
その言葉は心の底から思ったととれるほど、ジンさんの顔は感心したような顔をしていた。
そんなジンさんの隣に、少し離れた所で一緒に訓練をしていたチトセさんがやって来た。
「近くで見てましたけど、本当にレイ君の瞑想は私のより遥かに質が良いと感じましたよ」
「そうじゃろうな。儂もあの領域に辿り着くのには、数年掛ったんじゃが……レイ君は、何か瞑想みたいな事を以前からしておったのか?」
「どうなんですかね?」
瞑想みたいな事? う~ん、特に思いつかないな。
ああ、でも昔森で住んでた頃に神様に祈るって習慣がついてて、こんな感じの事をしてたな。
「多分ですけど、俺小さい頃から神様の像に向かって祈りを捧げてたんですよね。多分、それのおかげで瞑想も良い形で出来てるんだと思います」
「祈りか、確かにそれは瞑想に近しい物があるのう。多分、それのおかげでレイ君には瞑想の基礎が出来ておるんじゃな」
「凄いね。小さい頃って、今でも十分若いのにそんな昔から祈りを捧げてたなんて」
ジンさんは納得したような表情で、チトセさんは凄いな~と感心したような表情でそう言った。
その後、チトセさんとは別れた俺達は、ジンさんの家へと帰宅した。
帰宅した後、直ぐにジンさんと一緒に風呂へと入った。
「ふ~……この温泉に入れてるだけでも、この里に来てよかったと思いますよ」
「気に入ってくれたようで良かったの~、レイ君も風呂好きで儂も嬉しいよ」
「これでも前世では温泉に週一で通ってましたからね。ラノベと温泉が生き甲斐でしたから」
俺の風呂好きは、早くに亡くなった両親から受け継いだものだ。
幼い頃から家族で温泉旅行に行ったりしていて、特に和風の露天風呂は最高に好きだ。
その俺の好きな要素が詰まっているこのジンさんの家の風呂は、この里に来た日から毎日2回以上は入っている。
「若い子なのに温泉が好きとは、良い趣味を持っておったんじゃな」
「はい。ジンさんも温泉は好きだったんですか?」
「ふむ、儂も前世では散々色んな温泉に入りに行ったのう。儂のお気に入りの温泉は、福岡の温泉じゃったな。あそこは飯も美味かったし、思い出も深い場所じゃった……」
前世の事を思い出しながら、ジンさんはそう語った。
それから俺達は、前世での温泉話に花を咲かせ、2時間程風呂に入っていた。
風呂から上がった後、他の所で修行していたクレナ達も帰ってきており、既に食事の準備が出来た部屋で待っていた。
「ごめんな皆、ちょっと長風呂してたよ」
「すまんの~」
そう俺達は軽く謝罪をしてから席に座り、直ぐに食事を開始した。
「ん~、風呂も最高だけどこの料理も本当に美味しいな~」
里の料理は基本的に和食で、今目の前に出ているのも和食だ。
採れたての野菜に、新鮮な魚を塩焼きにした焼き魚。
更に里で作っている米は、この世界で食べた米の中で一番美味しく、本当に里に来て良かったと、俺は常々感じている。