第185話 【修行の日々・1】
里にやって来て数日が経ち、大分この里での暮らしも慣れて来た。
この里は、王都の様な賑わいは無いが豊かな自然があり、王都よりも暮らしやすいと感じている。
まあ、王都の様な都会で暮らしていた時期より、自然の中で暮らしていた時期のが長いからかもしれないが。
「レイディア君おはよう。今日も早いね~」
ジンさんの修行を受けていると、気さくに挨拶をしてきたのは一緒に修行をしているチトセさんだ。
チトセさんは、俺のお迎え依頼が終わった後、自分も修行をすると言って少し離れた所で、俺と同じような訓練を始めた。
今やっている修行は、体の鍛えるのでは無く体の中を鍛える訓練をしている。
まあ、言ってしまえば〝瞑想〟である。
「ふ~……」
ジンさんはイアラ様から訓練をしてあげてと頼まれた際、この訓練方法を最初に思いついたと言っていた。
この訓練は、ジンさんが治めている国で行われている訓練方法で〝心〟を鍛える訓練方法だと言っていた。
今の俺にはもってこいの訓練方法で、里に来てからずっとこの訓練をやっている。
「今日もやってるようじゃな、レイ君」
「ええ、ちゃんと教えられた通りやってますよ。自分では成長してるのか、イマイチ分かりませんけど」
そう言うと、ジンさんは俺に近づいてきてジッと俺の事を見つめた。
異世界無双を既に行ったジンさんは、俺が持たない数々の知識や力を持っている。
その中には、人の心を読み取る力も持っているみたいだ。
「ちゃんと成長しておるよ。始めた時より、大分〝心〟の器も大きくなって居るから、このままいけば魂の融合も出来るじゃろう」
「そうですか……ジンさんの方の調子はどうですか?」
「うむ、儂も順調じゃよ」
俺の言葉に対して、ジンさんはそう答えた。
俺の訓練や里の人達の訓練を見ながら、ジンさんは自分の訓練もしている。
流石に邪信教が活発化してる中で、里の中でゆっくり暮らす気はジンさんの中ではなく、昔の感覚を取り戻そうとしている。
「まあ、日に日にジンさんから感じる強者のオーラが増してるので順調に行ってるのか分かってますけどね」
「むっ? そんなに出ておったか? これでも潜めてる方なんじゃがな?」
ジンさんはそう言いながら、首を傾げた。
それとクレナやラル達は、俺とは別の所で自分達の訓練をしている。
クレナは聖竜様から教えて貰った訓練方法を行っている。
ラル達は、それぞれ里の兵士達を相手に連日模擬戦をしている。
「そう言えば、昨日はライが10人相手に勝ったって言ってましたけど、今日はどんな感じでした?」
「さっき見て来たが、今日は倍の20人相手に模擬戦してたのう。20人全員が既にボロボロになって居ったから、今日も圧勝してるんじゃろうな」
「……ライの奴、本当に強くなったみたいだな……」
それからラルの方もジンさんに聞くと、ラルもまた訓練相手を既にボロボロにして楽しそうに訓練をしていると聞いた。
「ああ、それとじゃな王都に残しておいた里の者から連絡が入って、王都に竜人国の者が着いたようじゃ」
「もうですか? 竜人国って、結構離れてる所にあるって聞いてましたけど?」
「うむ、そこは竜の力で最短距離で飛んできたみたいじゃよ。他の地域で、数十匹の竜の群れを見て、混乱した地域もあると報告が上がっていたしのう」
ジンさんの言葉を聞いた俺は、竜が数十匹飛んでる姿を見たら俺も混乱するだろうなと心の中で思った。
その後、ジンさんは別の所で訓練をしている里の人の所へと行き、俺は訓練を再開した。