第181話 【里へ向かおう・3】
「えっと……確かこの辺りの宿だったと思うんだけどな……」
街に入る際、ジンさんから待ち合わせ場所の宿の場所を聞いていたので兵士に確認してその場所に向かっていた。
しかし、その場所は宿が立ち並ぶ場所で2件ほど間違って違う所に入ってしまった。
「あの、すみませんこの宿に知り合いが泊ってると思うのですが……」
3度目の正直と、3件目の宿に入り受付でそう尋ねた。
対応してくれた宿の人は、俺の名前を確認するとこの宿で合っていると言われた。
丁度、ジンさんの部下は部屋に居ると言われたので、対応してくれた人に許可を取りその場所に向かった。
二階の一番の奥の部屋に着いた俺は、扉をノックして中から返事が来るのを待った。
ノックをして直ぐに中から物音と「はーい、今出ますねー」と声が聞こえた。
そして少し待っていると、和服をきた若い男性が扉を開けて姿を現した。
「すみません。レイディア・マグラットという者なんですが。ジンさんのお知り合いで間違いなですか?」
「あっ、はい。そうです。ジン様からレイディア様の事は聞いております。私、ジン様にお仕えしております。チトセという者です。どうぞ、よろしくおねがいします」
和服を着た男性は、俺の名前を確認すると綺麗なお辞儀をしてそう名乗ってくれた。
「しかし、思っていたより早かったですね。ジン様からは、時間が掛かると聞いておりましたが?」
「用事が思っていたよりも早く片付いたので、長く待たせるのも失礼だと思い早めに来たんです。」
「そうだったのですね。念の為、宿の滞在は一日ずつにしていて良かったです」
チトセさんはそう言うと、俺と一緒に宿の一階に降りて受付の人に宿を出る手続きを行った。
そして宿の外に出て、宿の傍で待っていたライ達を見て「これは、レイディア様の従魔ですか?」と聞かれた。
「はい、ウルフの子がラル。スライムの子がライ。そしてそこの女の子は本当は、レッドワイバーンという魔物の子で、今は人化をしているクレナという子です」
「レイディア様の情報はジン様より聞いてますが、その歳でこのような強い従魔を育てている何て、本当に凄い方なんですね」
チトセさんはラル達を見て、驚きながらそう言った。
それから街の外に出た俺達は、既に兵士にはクレナがレッドワイバーンという事は知られているので、街の近くだが人化を解くように指示を出した。
「馬車を用意しなくても良いと言われて、まさかと思ってましたが。もしかしなくとも、この子に乗って里まで行くのですか?」
「はい、馬車だと二日ほどだと聞いたので、だったらクレナに乗って行った方が早く着くかなと思いまして、高い所は大丈夫ですか?」
「大丈夫ですけど、逆に私が乗っても大丈夫なのですか?」
クレナに乗っても良いのか心配をしているチトセさんに、クレナはズイッと顔を寄せて「乗って良いよー」と軽く言った。
「本人が乗って良いと言ってますので、大丈夫ですよ。それに落ちない様に俺が魔法でカバーもしますから」
そう言って、チトセさんとラル達をクレナの背中に乗せ、俺達は里へと向かって飛び立った。
「いや~、空の旅なんて初めての体験ですけど、気持ちの良いですね~」
クレナの背に乗る事に、最初は戸惑っていたチトセさんは嬉しそうにそう言った。
現在、風の抵抗を和らげる為に魔法を使っていて、それによって丁度良い感じに風が体に当たり気持ちの良い空の旅をしている。
「馬車での旅もそれはそれで楽しいと思いますけど、この空の旅を一度味わったら近場だとこちらを選んでしまうんですよね」
「その気持ち分かります」
チトセさんは食い気味にそう言い、暫く空の旅を楽しんだ。
そして数時間後、チトセさんから「この辺りからは、歩いて行きましょう」と言われて地上に降り立った。
「里まで直行出来ないんですか?」
「出来なくは無いですけど、敵と間違われた時に面倒そうなので……」
「あ~、確かにそれがありますね」
チトセさんの言葉に俺は納得して、クレナに人化してもらい里まで歩きで向かった。
里は、森の中にあるみたで森の中を俺達は歩いていた。
それにしても、里に向かってる筈なのにちゃんとした道が無いな……
先程から歩いている場所は、完全に森の中で草木を超えて進んでいた。
俺はその事に疑問に思い、前を歩いているチトセさんに尋ねた。
「あの、里までってこんな感じの道が続くんですか?」
「そうですね。一応、里は外部との接触が殆ど無い所でして、ちゃんとした道っていうのが無いんですよね」
外部との接触が殆ど無いって、それ俺が入っても大丈夫なのか?
「そうなんですか? そんな所に俺が入っても大丈夫なんでしょうか?」
「そこは大丈夫ですよ。ジン様が招いたお客様ですので、里の者や今の長でさえジン様の決定は逆らう事は出来ませんから」
その後、何事も無く森の中を進み少し先に木で出来た壁が見えて来た。
「レイディア様着きましたよ。ここが我らの里〝ヤマト〟です」




