第180話 【里へ向かおう・2】
能力の確認を見終わった後、エルダを連れて洞窟拠点の中に入り皆のステータスを書いた紙をテーブルに並べた。
「エルダ的に俺以外のステータスを見て、どう思う?」
「そうですね……」
エルダは俺の問いに、並べられた紙を確認して発言をした。
「私の意見ですと、トレン君とレント君を除いた4匹の従魔のレベルは高い方だと思いますよ。レベルが100近い魔物は、ランク問わず強い個体です。それに加えて、ラルちゃんとクレナはそれぞれ高位の種族です。戦力としては潤っていると思いますよ」
「エルダもそう思うよな。……だけどそれは、普通の生活内での戦闘を想定しての戦力だよな? 邪信教を相手に戦うと考えた場合、今の戦力はどう思う?」
俺のその言葉に、エルダは紙を確認せず悲しそうに「無理です……」と呟いた。
「ご主人様のこの能力でやっとでしたので、私達の能力値だと足止めになれたらいい方だと思います」
「そうか……」
エルダの返答に俺はそう言葉を零し、今後の課題についてエルダと話し合った。
その後、俺達は旅の準備に取り掛かった。
準備と言っても殆どの物は、王都で準備していたので食料の追加位で旅の準備は終わった。
「エルダ。お前はどうする? トレン達は非戦闘員だし、このままこの地に残すのは決めてたんだが彼奴らだけでこの森の管理は厳しいだろ?」
「そうですね。それでしたら、私もここに残りますよ。幸い、私の場合この地でも自身の強化は出来ますからね。ご主人様達が戻ってくるまでに、更に強くなって待ってますよ」
それからライ達の所に戻り、エルダとトレン達はこの場に残ると告げた。
エルダと離れる事にライ達は、悲しそうにしていた。
別れを惜しむライ達に、エルダは「頑張ってね」と応援の言葉を掛けた。
その後、上空から少し確認したがこの地の変わった所を確認する為、エルダ達と拠点回りを歩く事にした。
「俺が住んでた時に比べて、明らかに住みやすい環境になってるよな……」
「いつかご主人様が帰って来る事を想定して、色々と作りましたからね」
エルダは一つ一つ自慢するように新たに作った畑や果樹園等、色んな所を見せてくれた。
全ての場所を見終わり、天候も悪くないのでこのまま出発する事にした。
「それじゃ、エルダ。後の事は頼んだ」
「はい、ご主人様のおかげで今まで以上に森の魔物達との連携も取れますし、益々住みやすい環境を作って待っていますよ」
「ああ、楽しみにしておくよ。それと、渡した魔石だがこれから暫くは届けに来れないから大切に使うんだぞ」
「分かっておりますよ。私、そんな考え無しでは無いですから……お気をつけて、いってらっしゃいませ」
エルダは俺の言葉にムッとした表情で返すと、笑顔を作りそう言ってくれた。
その言葉に俺は「行ってくる」と言い、クレナの背中にライ達を乗せて、クレナに飛ぶように指示を出した。
そして徐々に上昇する中、見送りに集まってくれた長達が手を振ってるのに気づき俺も手を振り返した。
皆の顔が段々見えなくなってくると、少し寂しさを感じた。
それは俺だけでは無く、ライ達も同じ気持ちのようだった。
「ラル、ライ、クレナ。頑張ろうな」
「わうっ!」
(うん!)
「はい、頑張ります」
俺の言葉に、ライ達はそう返事をして洞窟拠点を旅だった。
旅の最初の目的地は、ジンさんに修行を付けてもらう為にシズクの故郷に向かう事は決めていた。
最初はジンさんと行く予定だったが、俺が洞窟拠点に用事があったので別々に向かう事になった。
「えっと、確かこの辺りに……おっ、見えて来たな。あの街だな」
洞窟拠点から一時間ほどが経ち、最初の目的地である街に辿り着いた。
その街では、ジンさんの部下で里への案内をしてくれる人と会う約束をしている。
街から少し離れた所に降りるようにクレナに指示を出して、少し歩いて街の門に辿り着いた。
すると門では、兵士達が慌ただしくしていた。
何かあったのかな? と思い話を聞いてみると、竜が出たと騒ぎになっていたみたいだ。
「……すみません。その竜、俺の従魔です」
慌ただしくしている兵士達にそう言って、俺は人化しているクレナに竜の姿になるように言った。
その後、兵士は俺の冒険者カードを見て、クレナが従魔と確認して街の中に入る事が出来た。
結局、騒ぎが起きてしまったが無事に街の中に入れたので、ジンさんの部下がいる宿へと俺達は向かった。




