第18話 【新・従魔】
次の日、俺は朝から家を出て街の外に向かい森の方へと来ていた。何故、俺がこんな所に来てるかというと洞窟拠点を出る時に一緒に燃やした〝女神像〟を作る為に材料の木を取りに来ていた。
だが、森に来て30分位経ったが中々良さげの木が見つかっていなかった。
「う~ん、中々こう女神様に合った木が無いな…」
「わう~」
「ぴ~」
今回、森に来たメンバーは俺、ラル、ライの3人(1人と2匹)で来ていた。ラルとライは既に俺の木選びに飽きたのか近くで虫を捕まえて遊んでいた。そんな時だった、俺の探知魔法にもの凄い魔力をした何かが俺達の方へとゆっくりと近づいて来ていた。
(ラル、ライ、隠れろ)
俺は、小声で2匹に指示を出し、ラルとライは直ぐに気が付き草むらの中に隠れた。俺も、木の上に登り近づいてくる。〝何か〟の方を見てみると…
(なんだ、アレは…)
そこに居たのは、大きな木だった。それも、ただの大きな木なら驚かなかったがその木はなんと地面から根っこを出しシュルシュルと鞭のように使い木々を折りながら此方へと向かってきていた。まず、あれが何か分からないので、俺は鑑定魔法・全で鑑定して見ることにした。
✤
名前:エルダートレント
レベル:???
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.
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✤
(ちっ、見えたのは名前だけか、しかしエルダートレントって事は魔物なのか?)
そう、考えていると、エルダートレントから伸びて来ていた。根が俺の足を掴んで引っ張った。
「うおッ!」
俺は、落ちる寸前腰に差していた剣で根を斬りなんとか木の上で持ち直した。しかし、自分の根っこが斬られたことに気が付いたエルダートレントはこちらの方を向いて、こう言った。
「…いたい、なにするの~」
「喋れるんかいッ!」
俺は、思わず魔物が喋れることに突っ込んでしまった。
「当り前、だって私これでも上位種喋れることだって出来るんだよ」
「そうか、それはすまなかった…って、そうじゃなくてッ!何で魔物が人間の俺でと気軽に喋ってるんだ!普通、ここは俺に気が付いたお前が俺を襲う所だろう!」
「私、争うの嫌いだから里から出てきた。それと人間襲わないのは興味あったから」
「いやいやいやいや、まず魔物が人間に興味持ってどうすんの?!それも、お前上位種だろ襲って来いよ!」
「…人間襲われたいの?変な趣味…」
「ふっざけんな!誰が変態だ!俺は普通の事を言ってんだ!!」
俺は、初めてこの世界に来て声を大にして叫んだ。その後、ラルとライは危なくないと分かり茂みから出てきた。俺も、木の上から降りてエルダートレントの前に行った。
「それで、何でエルダートレントのお前がこんな所に居るんだ?ここは、人間の街から近いぞ」
「里から出て来て真っすぐ進んできたらこの森に着いただけ、別に何処に行こうかは決めて無かった。それに、街が近いなら良かった。人間に興味あったから、見てみたかった」
「いや、あのな俺だからこうやって普通に喋ってるがエルダートレントのお前を見た時点で人間だったらほとんど奴らは逃げて、この森に危険な魔物が居るって連絡されてお前討伐されるんだぞ」
「そんな…私、人間襲わないのに…」
「いや、普通上位種の魔物が〝人間に興味があってきました〟とか言っても誰も信じないし、お前が〝襲いません〟と言ってもまず街に入る事すら無理」
「うう、そんなー…どうしたら、人間の街に入れるの?そこに居る、ウルフの子とスライムは貴方の仲間なんでしょ、その子達がどうやって人間の街には入れてるの?」
「そりゃ、俺の従魔として契約してるからだ、契約さえしてればこいつ等は悪さできない、というか元々悪さはしないように躾けてある。なっ、ラル、ライ」
「わう」
「ぴ~」
従魔として契約する時に魔物は主人の命令に従うようになっていたが、俺は自分が作った料理をラルとライにあげながら〝もしね俺の命令に逆らったら、ご飯は抜きだ〟と教え込んだ結果、こいつらは俺の命令はちゃんと聞くようになった。
「なら、私も貴方の従魔になる。それなら、街には入れるんでしょう」
「…まあ、従魔として登録はしてやるが、そんな巨体では街の中で通行の邪魔で追い出されるに決まってるぞ」
「大丈夫、これでも上位種【人化】だって出来る」
そう言った瞬間、エルダートレントの姿が消え、そこには緑の髪に肌色の女の子が立って居た。それも、生まれてきた赤子の姿の様に何も着ずに
「うわああああ、これ着ろッ!」
俺は、慌ててアイテムバックから予備の着替えを投げ渡した。エルダートレントは、投げ渡した服を拾い「どうするの~」と聞いてきたので、俺は目を瞑った状態で頑張って服を着せた。
「はぁ、はぁ、何でこんな目に…」
「これなら街でも動ける。従魔の契約して」
「…分かったよ」
俺は、その後エルダートレントに従魔契約の魔法を使い、また従魔にする時の決まり事で名づけとして、エルダートレントには【エルダ】と名付けた。
「エルダ…これが、私の名前気に入った。ありがとうご主人様」
「…そんな、キャラだったか?」
「従魔になったら、こう言うんじゃないの?その子達が言ってたよ?」
エルダはそう言って、ラルとライの方を指さした。
「んっ?エルダは、ラルとライの言葉が分かるのか?」
「うん、だって私魔物だよ?魔物語が分かるのは当たり前」
「わう、わうわう~」
「ぴ~、ぴ、ぴ~」
「今、此奴らは何て言ったんだ?」
「ラルちゃんは【ご主人様と話せて良いな~、私も早く上位種になりたい~】って言ってて、ライ君が【俺も俺も~】って言ってる」
エルダがそう言うと、ラルは首をウンウンと頷き、ライはぽよーんぽよーんと跳ねていた。
「あっ、そう言えばご主人様は丈夫な木探してたんでしょ」
「ああ、そうだよ。像を作りたくて、探していたところにエルダに出会ったんだ」
「それなら、私が木作るよ」
エルダがそう言って、近くの木に触れると木がいきなりグンッと大きくなり、幹の太さもさっきまでの2倍近くになっていた。俺は、エルダに何したのかと聞くと「私の能力で木を成長させてあげた」と言っていた。まあ、これで、今日の目的だった木の入手は終わったので、街に帰ることにした。