第177話 【話し合い・3】
準備を始めてから30分程が経過した頃、一番最初にウルフ族が会場にやって来た。
ウルフ達は匂いに釣られて速足でやって来たみたいで、涎を垂らしているウルフも居る。
「食い意地がはった奴等だな……」
窓の外でソワソワとしているウルフ達を見て、俺は笑みが零れながらそう呟いた。
その後、クレナと一緒に準備を少し早めて大量の料理を用意した。
4種族全員が集まると、まあまあな数になるので簡単で大量に用意できる料理にした。
従魔達は基本的に、野菜が主食だと言っていた。
しかし、肉類を食べない訳でも無いらしく、食べる機会があれば食べるみたいなので、そこら辺は変に考えずに料理を用意した。
「これ全部、ご主人様が作ったのですか?」
「凄く美味しそうですね!」
ウルフ族が来てから少しして、ゴブリン族とコボルト族が会場に来て並べられている食事を見て目を輝かせながらそう言った。
「まあ、簡単な料理だけどな、好きな所に座って待っててくれ」
「「分かりました」」
そう言ってリグル達は、自分達の種族の者達を連れて行った。
後、来ていないのはスライム族だけか。
「まさかスライム族が一番遅いとはな、でもスライム族が一番数が多そうだし準備に手間取ってるんだろうな」
他の3種族とは違いスライム族は、かなりの数が暮らしている。
ゴブリン族やコボルト族の所も、少し前までは多かったらしいのだが邪神教の襲撃が数が減ったと聞いている。
それから10分程経った頃、スライム族が会場へとやって来た。
(すみません。遅くなりました)
「気にしなくて大丈夫だ。席はもう殆ど埋まってるから、スライム族はあっちに座ってくれ」
(はい、ありがとうございます)
ライムはそうお礼を言って、スライムを引き連れて指定した場所へと移動した。
全ての種族が集まったのを確認した俺は、前に出て皆の視線を自分に向けた。
そして、ちょっとした挨拶を言い、パーティーを開催した。
一番早くに到着して、ずっと目の前で料理を眺めていたウルフ族は、他の種族よりも料理をガツガツと食べ始めた。
そんなウルフ族を見て、他の種族も負けじと料理を口に運び、美味しそうに食べ始めた。
「ご主人様、皆気に入ったみたいですね~」
「ああ、準備はしたものの食べれるか心配だったけど、要らぬ心配だったな。さあ、俺達も食べようか、じゃないと皆に食べつくされてしまうしな」
「そうですね。いただきまーす」
エルダはそう言って、取り皿に野菜を取ってムシャムシャと食べ始めた。
それから俺も自分の取り皿に料理を取り、飯を食べながら新たに仲間となった者達と距離を縮める事にした。
「へぇ~、ゴブリン族は畑も作ってるんだな」
「はい、森に取りに行ったら危険があるかも知れないので、出来るだけ自分達の住処内で食料を取ってるんです。後は、近くに川も流れているので魚とかを獲れる時に取って干しておいて非常食にしてたりもしてます」
「意外とそう言った事も出来るだな……」
ゴブリンと言えば、知能が低く暴れるだけの種族だと思っていた。
しかし、リグル達は自分達の身を守り生きる為に、色々と考えて生活してきたみたいだ。
「まあ、こういった知識は全てスライム族からの教え何ですがね。スライム族の長は、私等よりも長く生き博識なんですよ」
「ほう、それは知らなかった。そうだったのかライム?」
ルドリーの言葉に俺は、小さなスライムに料理を上げているライムに声を掛けた。
(ええ、といってもそんなに私も知識がある訳ではありませんよ? ただ逃げて逃げて、人間の生き方を観察していたんです。そうして得た知識を自分と同じ境遇の者達に教え、一緒に生き延びて来たんです)
「逃げて生活って、ライムは元々この森で生まれたんじゃないのか?」
(いえ、もう少し人里の近くの生まれです。ここと余り変わりませんけどね)
ライムのその言葉に、リグル達は「そうだったの!?」と驚いた様子だった。
(言いふらす事でもありませんし、前の長達には伝えてありますよ。知りませんでしたか?)
「全く知らなかった……」
「私も知りませんでしたよ……」
リグルとルドリーがそう言うと、料理に夢中だったラルネアが顔を上げて話に混ざって来た。
「私は知っていたよ。というか、一番最初にライムに出会ったのは私だからね」
(そうでしたね。ラルネアも当時は、小さなウルフでしたね。私が念話を使ったら、飛び跳ねて驚いたの今でも覚えてますよ)
「……それは忘れて欲しいな」
ライムとラルネアは当時の事を思い出し、ラルネアは恥ずかしそうに耳をシュンと垂らした。
それから昔のラルネアの事をライムが話し出すと、ラルネアは「やめてくれ!」とライムに飛びつきじゃれ合い始めた。
「スライム族とウルフ族、特に仲が良いと思ってたけどこういう理由だったんだな」
長同士が仲が良いから、その下の者達も仲良くしているのだろう。
その後もパーティーは続き、夜遅くまで楽しんだ。
今日は折角集まったから、このまま一緒に寝ようという話になり、星空の下で皆と一緒に星を眺めながら眠りについた。