第174話 【従魔達・3】
歩き出して十数分程、俺は以前と比べてスライム族の住処まで遠い感じがしてエルダに尋ねた。
「エルダ。ライ達が住んでる場所ってこんなに、遠かったっけ?」
「う~ん、ほら前に邪信教の襲撃があったでしょ? その時に元々住んでた場所が荒らされたから、もう少し奥地の場所に住処を移したってスライム族の長が言ってたよ。流石にあのまま住むのは難しいって、悲しそうに言ってたよ」
「そうか、確かにあのまま住むのは色々と思い出して住みにくいだろうしな……」
エルダにそう教えて貰った後、俺はそれ以上の事は聞かず先に進んだ。
それから更に十数分後、先頭を歩いていたラルが立ち止まると、茂みや木の上からスライム達が現れた。
「こいつらは、ライの所の奴等か?」
「そうだね。そう言えばこの森に居るスライムは、あそこのスライム族の子達しか居ないって、スライム族の長が言ってたよ」
エルダはそう言うと、ラルの背中に乗ってピョンピョン飛んでたスライムにライが何処に居るか尋ねた。
すると、そのスライムはピョンピョンと飛びながら少し先に進んだ。
多分、ライの所へ案内をしてくれるようだ。
それから、俺達はそのスライムに先導されながらライの所へと向かった。
そしてついた先では、スライム族の長とライが対面している状況だった。
(お久しぶりです。レイ様)
「久しぶり……今、大丈夫か?」
(はい、既に儀式は終わりましたので大丈夫ですよ。ほら、ライ。貴方の主人が迎えに来ましたよ)
長スライムがそう言うと、対面してジッとしていたライがビクッと跳ねてこちらを振り向いた。
ライは俺の事を視認すると、行き成り〝氷の道〟を空中に作り頭に移動して来た。
「ハハッ、魔法の特訓の成果を見せたかったのか?」
俺はライを腕に抱えて、頭を撫でるとプルンッと喜んだように横に揺れた。
「ここに来るまでにエルダから、あんたが長の座を譲ると聞いて来たんだが」
(ええ、本当はそのつもりでしたがライの意思が強過ぎまして、私の方が断念しました。ライは、レイ様に着いて行く事だけを考えこの数カ月間、修行していたようですので)
「そうか、なら話が早くて済むなライ。これから、また一緒に頼むぞ」
(はいッ!)
「ッ!」
長スライム以外の念話が届き、俺は体をビクッと反応させて驚いた。
そして腕の中で嬉しそうにプルプルと震えているライを顔の正面に持ってきて「今のライなのか?」と尋ねた。
(うん、そうだよ。ご主人様! お母さんに教えて貰ったの!)
「教えて貰ったって、念話ってそんな直ぐに出来る物なのか?」
(素質が有れば、数日程度で出来る様になりますよ。それにその子は、リュアン様の元で修行をしたおかげで、普通のスライムとは異なった成長をしています)
「成程な……まあ、ライとも会話できるようになったんなら良いか。よく頑張ったな、ライ」
(えへへ~、ご主人様に褒められちゃった~)
俺はそう言いながらライの頭を撫で、俺の言葉を聞いたライは喜んでいる様子だ。
「さてと、ライとも合流出来たし、俺達はここから旅立つよ。ここの管理は、任せても良いか?」
(分かりました。元々は私達の森ですので、管理するのは構いません。しかし、人が襲ってきた場合はどうしますか?)
「あ~、そうか……」
長スライムの言葉に、どうしようか? と悩んでいると周りのスライムと遊んでいたエルダが思いもよらぬ提案をした。
「ご主人様が、ここの魔物達全部使役したらいいんじゃないの?」
(それは良い提案ですね。レイ様の従魔になれると言えば、この森の者達は喜んで従魔になると思いますよ。勿論、私達スライム族も含めてです)
「えっ? 何で、俺そんなに認められてるの?」
(それは、まあ……レイ様には、女神様の加護も有りますし、何よりあの時の襲撃で私達を助けてくれた事でこの森に残って居る者達は、レイ様へ感謝をしています)
長スライムがそう言うと、周りに居たスライムが一気に俺の元へ近寄って来た。
そして、よく見ると木の上や茂みの奥に、他の種族の魔物達が集まっていて、俺の事を見ていた。
「良いんじゃないですか、ご主人様? 別に減る物じゃないですし」
「う~ん……なあ、エルダ。この森ってどの位の種類の魔物が住んで居るんだ?」
「そうですね。スライム族、ウルフ族、ゴブリン族、コボルト族の4種族が主に今は住んで居ますね。襲撃前は、他にも居たらしいんですがあの時に大量に殺されたり、仲間が少なくなって別の場所に移動したらしいです。後は、外に出て来てませんが自分の住処で暮らしてる魔物も少し居ますね」
「それなら、その4つの種族の長を後で洞窟拠点の方へ呼んでもらえるか? 話し合いで決めたいから」
俺がそう言うと、周りに居たスライム族以外の魔物達が一斉に散らばって消えた。
話を聞いて、早く長達に連絡をする為に自分達の住処に帰ったのだろう。
(聞こえていたみたいですね)
「ああ、それじゃ俺達も拠点に帰るよ。また後でな」
(はい。私は、ウルフ族へ連絡をしてから向かいますね)
長スライムの言葉に俺は「頼んだ」と言い、頭にライを乗せラルとエルダと一緒に洞窟拠点へと帰宅する為に歩き出した。




