第130話 【前の住人】
昨日は帰って来て母さん達に家の事を聞かれ、中は綺麗にされていて結構広かったみたいな感じに伝えた。母さん達も付いてくればよかったのにと言うと「パーティーの時に皆と一緒に驚きたいもの」と言われ俺は母さんがそう言うならと言って無理に家に連れて行こうとはしなかった。
しかし、一応従者として働く場所と言う事でクリティには今日一緒に家に行く事は伝えてある。まあ、その前に昨日開かなかった扉の鍵を貰いに王妃様の所に行く事になった。朝、学校について直ぐにシフォンに「王妃様に今日合えるかな?」と聞いてみたら、「今日は仕事は何も無いと言ってたから大丈夫かな」と言われた。そして、放課後シフォンの送り迎えをしている馬車に俺は少し気まずそうに乗り込みシフォンに改めて行っても良いのか聞いた。
「本当に急に行っても大丈夫なのか?この間も急に行ってしまったし…」
「大丈夫ですよ。お母様、レイ君の事気に入っているみたいなのでレイ君が来たい時はいつでも連れて来なさいってお母様が言ってたんですよ」
「そ、そうなのか?それなら良いんだが」
「はい、あっそう言えば昨日家も見に行ったんですよね?どうでした」
シフォンは俺の家の事を聞いてきたので俺は台所が広かったとか地下室が思ったより広かった事を話をして最後に開かずの部屋の事も話した。
「あれ?おかしいですね。お母様が入れ忘れ何て、本当に鍵合わなかったんですか?」
「全部試したよ箱に入ってた鍵は、だから今日王妃様に聞きに行く事にしたんだ」
「そうだったんですか、う~ん最近お母様も色々と疲れてましたからそのせいでしょうか?」
シフォンは未だに王妃様が入れ忘れしたことを不思議に思っていた。それから十数分後、王宮に着いた俺達は馬車から降り城の中に入り王妃様の部屋に向かった。途中でメイドにシフォンが「お母様はどちらに居ますか?」と聞くと「王妃様は現在、庭園にてお茶をしています」と教えて貰ったので俺達は庭園へと少し早歩きで向かった。
庭園に着いた俺達を王妃様は少し驚いた顔をして「どうしたの、そんなに急いで?」と俺達の近くに来て俺とシフォンの顔を見た。
「あの、王妃様ちょっと昨日自分の家に行ってきたんですけどそこで鍵が開かない部屋があったんですよ」
「あら?確か全部入れたはずよ?」
「お母様、疲労が溜ってて物忘れをしたんじゃないんですか?最近、色々と忙しい様子でしたが、それで私も心配になって…」
「う~ん、私もそれに関しては反論出来ないわ…ちょっと、私の部屋に移動しましょう」
俺とシフォンの話を聞いた王妃様は俺達を連れて王妃様の仕事部屋へと向かった。仕事部屋に着いた王妃様は直ぐに机の中を探し始めた。
「…あっ、もしかしてこれかも」
王妃様はそう言って机の中から折れた鍵見たいなのを取り出した。俺はそれを見て「それって、壊れてて使えないんじゃないんですか?」と王妃様に聞いた。
「いいえ、これはね。っと、その前にシフォン貴方稽古の時間じゃない?」
「あっ、そうでした。すみません、レイ君私これから魔法の稽古がありますので又明日学校で」
「ああ、稽古頑張ってな」
シフォンは少し慌てて部屋を出て行った。でも何で今このタイミングで王妃様はシフォンにこの部屋から出て行かせるような事を言ったんだ?
「それで、レイ君説明の続きだけどこの鍵にはね〝神の使徒〟の魔力を与えると鍵先が出る仕組みになってるのよ。この事ついさっきまで忘れてたわ、やっぱりシフォンの言う通り疲労で忘れっぽくなってるようね」
「あのそれってどういう事なんですか?神の使徒じゃないと鍵先が現れないって…」
「あっ、これも説明するの忘れていたわあの屋敷前の住人は転生者なのよ。それも、私達より先輩の料理とか戦闘とかの面では後の世代には残せてなかったみたいだけど風呂や衛生面の事を後の時代に残したのがあの屋敷の前住人の転生者なのよ」
「ま、マジですか…」
俺は考えもしなかった事を王妃様から言われ少し驚いた。確かにあの屋敷何故だが実家より風呂の設備が良かったし台所なんかも今迄グランさんの家の台所や実家の台所を見て来たがそれのどれよりも設備が整っていた。俺の中では「前の住人は風呂と料理が好きな人だったのかな」と思っていたがそんな理由だったのか…と言うか王妃様それ忘れてたらダメな奴ではと思い王妃様の方を見ると「レイ君、私も人間なのよ。忘れる事はあるわ」と言われた。




