第11話 【豪邸】
「レイ君、ほら私の街が見えて来たよ」
グランさんがそう言って、俺は荷台の方から顔を出してグランさんが指を指している方を向いた。そこには大きな外壁がグルンッと街を囲んでいた。それも、ここからでもかなり広い範囲を囲っているのが分かる。
「すっげー、ねぇグランさん、あの外壁作るのにどれだけ年数がかかったの?」
「ああ、あの外壁は昔私の父が魔法使いを数十人雇い街を作る範囲と【迷宮】を一気に囲んだんだ」
「へぇ、魔法使いを使って外壁作ったんだ~」
(というか、この大きさまで上げるのに魔法使いの人はどのくらいの魔力を使ったんだ?俺が思っている以上にこの世界の魔法って進んでんのかな?)
俺は、そんな事を考えながら後ろの荷台に戻りラルとライを撫でながら街に着くのを待った。
外を見て荷台に戻ってから10分位経ち、馬車が止まった。
「レイ君、街に着いたからちょっと降りて来てくれるかい」
「はーい」
俺は、グランさんに呼ばれ外に降り、降りる時ラルとライも一緒に降りた。降りるとそこは門の詰所?的なところで俺の仮の身分証明書を作ることになった。
「えっと、レイ君の生まれた場所って覚えてる?」
「う~ん、覚えてるって言ったら約8年前位に竜に襲われた村かな?」
「ッ!レイ君、それは本当かい!!」
「わわ、本当だよ。グランさん」
横に立って居たグランさんはいきなり大声を上げると俺の肩を掴みグラグラと揺らしてきた。俺は揺らされながらもちゃんとグランさんに答えた。
「レイ君、ちょっとこれから行く場所が決まったんだけどいいかい」
「あっ、ああ別に俺街初めてだから行く場所もないから別にいいっすよ?」
「ありがとう。それじゃ、早く証明書を作って移動しようか」
俺は、グランさんに急かされるように証明書を作り、詰所を出てからまたグランさんの馬車の荷台に乗って移動をした。
馬車で移動すること数十分、グランさんから降りて来てと言われ外に出ると、そこはさっきの場所とは全然違う、同じような作りの木造の家が並んだ通りに着いた。
「えっと、ここは何処ですか?」
「ここは、8年前の黒竜の襲撃で被害が出たクルリット村の被害者の人達に貸している家なんだよ。それでね、レイ君、君がさっき言った黒竜に襲われた村って言ったけど、ここ数十年の間この村の人達しかないんだよ。」
「と言う事は、グランさんは俺の家族を探すためにここに連れて来たんですか?」
「そうだね」
「それは、ありがたいんですけども、グランさん多分無理だと思うよ。俺があの時黒竜に襲われたのは生まれて間もない赤ん坊の頃だったし俺のステータスには家名が付けられてないんだよ。探す方法がないんだよね」
「えっ?レイ君、家名が付けられてないの?」
「うん、というか村の人だったから家名が無かったのかもしれないしね…」
(この世界の常識とか、今だ全くと言っていい程知らないしな、家名が平民だけ無いのかもしれないしな)
「そうか、レイ君ずっと山暮らししてたから知らないのか、この世界の家名はね生まれた子供の場合一週間以内に教会に行って両親と同じ家名を付けられるんだよ。でも、その前に黒竜に襲われて離ればなれになったのか…」
「そう言う事、だから探す手がかりないんだよね」
(というか、さっきからグランさん俺の家族を探すのに頭使ってるのか、俺に対して違和感ないのかな?だってさっきから、俺が赤ん坊の時の話って言ってるのに、そのことに全く触れてないし)
「そうか、なら仕方ないかもし手がかりがあれば探せたのに、すまないレイ君」
「ああ、いいっすよ。俺も8年前の事だし赤ん坊で家族の顔もほとんど覚えてませんでしたし…」
(本当は、嘘だけどな、はっきりと覚えてる。無精髭を生やした親父にその親父に似ていた2人の兄、そして乳を吸うのに躊躇うほど美しい母親、8年経った今でも頭の中にくっきりと残っている。今でも、探す手段が有ればすぐにでも探したい気分だ)
「そうか、それじゃあ仕方ないか、今日は取りあえず家に帰ろうか」
「はい、そう言えば俺ってどうしたらいいんですかね?」
「そうだね。まだレイ君8歳なら家で息子達に付けてる家庭教師に一緒に勉強でもしてみるかい?」
「勉強ですか…ねぇ、グランさんギルドって何歳から登録できるの?」
「んっ?ギルドの登録は年齢制限は無いよ、ある程度の実力があれば加入はできるよ。でも、ギルド別に実力の測り方が違って、冒険者ギルドなら戦闘力、商人ギルドなら算術と礼儀作法、魔術ギルドなら魔法の腕を試させられ、工房ギルドなら作品の出来を見られるよ」
「なるほど…」
(そうだな…家族を探すのにも都合が良いしやっぱここは冒険者に成るのが基本だよな)
「グランさんの提案もいいと思いますけど、俺冒険者になってみるよ」
「やっぱりかい?まぁ、レイ君の実力は分かってるから安心だけど工房ギルドで大工とかにはならないの?馬車とか直ぐに作れてたって事はそれ系統のスキルも持ってるって事だよね?」
「あっ、バレてました?まぁ、そうなんですけどやっぱり男の子何で、冒険者に憧れるんですよね。それにギルドって1つしか入れないんですか?」
「そんなことは無いよ。でも制約が1つあって、最初に入るのには重要にならないんだけど2つ目からは最低でもCランクの腕を持ってないと次にいけないんだよ。そうじゃないと、ギルドに加入する時にも教えて貰うと思うんだけど加入時の金とギルド別そのギルドに年間で税も払わないといけないんだよ」
「なるほど、それじゃ最初冒険者なってから後々の事は考えてみようと思います」
「そうだね。レイ君はまだ若いから時間はたっぷりあるから時間をかけて考えるといいよ。でも、今日はもう遅いから私の家に行こうか」
「はい」
俺は、その後グランさんの馬車で移動すること数十分今度はさっきの場所が霞むような豪邸の前に停まった。
「ここが、私の家だよ。これでも、一応ここの領主だから一番大きな家の作りをしてるからビックリしちゃったかい?」
「そうっすね、ビックリしました。」
「まあ、余り気にせず寛いでくれてもいいよ。あっ、ラル君とライ君は従魔専用の小屋が有るからそっちに行かせてもらってもいいかい?」
「はい、分かりました」
俺は、ラルとライを荷台から降ろしてグランさんの案内の下、従魔専用の小屋に着きそこにラルとライを入れて、グランさんにまた付いて行き玄関から中に入った。中は、外の作りに負けず劣らず豪華な作りだった、壁には絵が十数枚飾られていたり、廊下の端に高級そうな花瓶も置いてあった。
「旦那様、お帰りなさいませ」
「うん、ただいま、ごめんレイ君をお風呂場に連れて行ってあげてくれるかな?」
「はい、分かりました。それでは、レイ様こちらに」
「えっ?あっ、は、はい」
俺は、グランさんに「先にお風呂に入って、疲れを流していてね」と言われ、俺はメイドさんに付いて行き風呂場でメイドに俺の体を洗われた。本当は、自分で出来ると言ったのにメイドさんが「旦那様からの指示ですので」と言いながら洗ってきた。その時、メイドは小さな声で「ショタ最高」と言っていて、この屋敷来てものの数分で危険を感じた。