第108話 【貴族へ・2】
「それにしても、俺が伯爵か…そう言えば、マグラットで一度見たあの豚男は公爵位の息子だったよな?あいつ、今頃なにしてんだろ」
俺はそんな事を考えながら、髪型をセットしているメイド達の作業をジッと待って居た。セットし始めて十数分後「終わりました。それでは、会場の方へ移動します」と言われ俺はメイドに案内されながら城内を移動した。
「レイディア様、到着しました。この先が会場になっております。数分後大臣様の合図と共にこの扉が開きますので心の準備をしていてください」
「はい、分かりました」
メイドさんはそう言って俺が待って居る扉ではない数m先にある扉から中に入って行った。それから、数分後俺が心の準備が終わった時扉が開かれていった。俺は、完全に開いたと同時に歩き始めた。
会場内に俺が入ったと同時に演奏が始まり沢山の人が居て驚いたが俺は真ん中を歩いて行き王様の前に着いた。
「それでは、これより【レイディア・マグラットの爵位授与式】を始める」
大臣様がそう言うと、演奏が止まった。そして、1人の執事が装飾された短剣を持って来てそれを王様に渡した。
「レイディア・マグラットよ。我が国の新たな貴族となり国の繁栄を担う事、そして国の危機が訪れた時剣となり国を守ることを誓える事ができるのであればこの剣を受け取った時其方を我が国の貴族と認めよう」
俺はここに来る前、メイドさん達に教えて貰っていた通りの事を王様が言い終わったので俺は王様から短剣を受け取り「誓います。」と言った。それから、直ぐに式典自体は終わったが挨拶参り?みたいなのが始まった。
「やあ、レイ君久しぶりだね」
「グランさん!お久しぶりです。来てくれたんですね」
「うん、甥の晴れ舞台だしね。それと、爵位的には僕と変わらない事になったから公の場では敬語を使うからレイ君も気を付けてね。」
「はい、俺も気を付けるようにします。あの、そう言えばディーが見当たらないんですが何処にいるか知りません?」
俺は先程から貴族の人にあいさつ回りをしている時からディーを探していたのだが何処にもいないから、もしかして今日来てないのかと思い始めていた。
「ああ、ディーならあっちの女の子たちが集まってる所に居るよ。あの子、結構貴族の子からモテてるみたいだから毎回こういう公の場ではああやって詰め寄られているんだよ。あの子には婚約者とか決めてないからそれも合って色んな所の貴族の子が寄って来るんだよ。まあ、でもこれからはレイ君の方にも分散されるからディーも安心していると思うけどね」
「そうなんですか、まあディーには悪いけど俺好きな人居るんで成人するまでにはその子に告白しますんでディーの苦労は婚約者が見つかるまで続きますよ」
「そうなのかい?僕はてっきりレイ君は色恋沙汰には興味ないと思ってたよ。魔法や剣術を極めようとしている人は恋なんてあんまりしないから」
「グランさん俺は別に極めようなんてしてませんよ?ある程度戦える力と知識を手に入れたいだけですからそのために今頑張ってるんですよ」
俺がそう言うとグランさんは、「色々考えてるんだね。でも、まだ成人前なんだから遊ぶことも大事だよ」と言って別の貴族の人に俺が呼ばれたので俺はそっちに行った。
あいさつ回りが大体終わった頃、サンドイッチや飲み物が置いてあるところにディーがやつれた様子で立って居たので俺はディーに近づいた。
「よう、ディー元気無さそうだな」
「まあねレイの晴れ舞台だから余り好きじゃない公の場に来たけど、来てなかった分女の子がパワーアップして押し寄せてきて今迄で一番きつかった。まあ、でもこれからはレイと言う盾があるから少しは大丈夫だな」
「おいおい、俺を盾にすんなよ…所でさディーって婚約者とか作らないのか?そんなに詰め寄られるのが嫌なら婚約者を決めたらいいじゃないか」
「…まあ、そうだよな、でも今の僕じゃそれは叶わないんだよ。今よりずっと強くなって貴族として立派にならないとね…」
「そうか…なら、貴族として立派になるのは俺も一緒に頑張るとして今より強くなる方は俺が一肌脱いでやろう。ディーの水魔法のうまさなら魔法使いとしても上を目指せるレベルだしな」
「ほんとかッ?!レイに教えて貰えるなら俺は何でも覚えれそうだよ。だが、僕はレイに何も返せないぞ?」
「良いって、俺達友達だろ」
俺がそう言うとディーは「レイ~!」と抱き着いて来て周りに居た貴族の人達から微笑ましい顔を見られ奥の方に居た女性の方々からは「マグラット家の分家と本家の男の友情…」と何かを妄想してそうな笑みで俺達を見ていた。




