第10話 【街へ】
俺は湖で着替えた後、洞窟拠点へと戻る前に山の窪みの隠れ家に行った。窪みの中にはちゃんとラルとライが待って居た。
「よーし、良い子達だ、今人間が洞窟拠点に居るからまだもう少し待って居てくれよ」
「わう~」
「ぴ~」
俺は、ラルとライの頭を撫でた後、一応長くなるかもしれないので燻製肉の補給と寒さに耐えれる様にと洗って乾かしておいたローブを敷いて洞窟拠点へと向かった。
洞窟拠点に戻ると、グランさんと盗賊に捕まっていた集団が馬車の辺りで固まっていた。俺は、グランさんの隣に行き何を話していたのか聞いた。
「どうしたんすか、グランさん?」
「ああ、レイ君お帰り、いやねこの人数を私の街に送るのには私が乗って来た馬車ではこの人数を乗せるのに広さが足りないんだよ」
「分けて送るとかは?」
「それが一番いい考えなんだけど、レイ君も見ればわかるけどこの人達結構疲労と精神的に疲れてるからさ早く街に送って上げたい所なんだ、それに女性に関しては早く行かないと手遅れになる人も居るみたいだし…」
「なるほど…」
たしかに、この集団の人達は誰一人として無傷な人が居ない、何処かに鞭の跡や痣が残っていたり、女性に関しては盗賊から何をされているか分からないしな、俺がここで、回復してもいいんだが流石にそれはこの人に見せすぎな気もする。
グランさんには、今までに【火魔法】【調理】【剣術】は多分バレているだろう。それに、俺の大工スキルも薄々感づいてるはずだ…ここで一番の得策はやはり、アレしかないか
「グランさん、まずこの人達の疲労を少しでも和らげるために小屋の中で安静にさせてもらっててもいいっすか?その間に僕が馬車をどうにかしておくので」
「レイ君、馬車を作る事も出来るのかい?」
「まぁ、今回は横に完成した見本が有るんで何とかなると思いますよ。最悪車輪が着いた板を作ってこの馬車に繋げば良いですし」
「そうだね。それじゃ、レイ君頼んだよ。それじゃ、皆さんはあちらの小屋の中に入っていてください」
俺と話し終えたグランさんは、男女の集団を小屋の中へと入らせていった。俺は、まずグランさんの馬車から荷物を降ろした。
「さてと、まずは【大工:コピー】」
大工スキルを使い、この馬車の作り方を全て頭の中へインプットした。そして、少し森の中へと入って大きな木を切り取り、あの人数が乗れるような荷台部分の作成を始めた。まぁ、作るの何て実際【大工】スキルがレベル7の俺からしてみれば簡単で数分で作り終わった。次に、車輪を作り荷台の板にはめて軽く前後に引いてみたがガタつきは無かったので四方に棒を立てて上から葉っぱで出来た天井を作った。後は前に馬を繋ぐ場所を作り馬車つくりは終わった。
作り終わった後、俺は小屋に行きグランさんを呼んだ。
「これだけ、大きかったらあの人数は乗って行けるよな?」
「そうだね。しかし、この短時間でここまでの物作れるなんてレイ君は凄いね」
「そうか?まぁ、俺この場所で3年間位自給自足してるからこの位普通になってたかな?」
「3年ッ!?あの、レイ君って見た目と反して魔族とか獣人とかエルフとかの長寿な種族だったりするの?」
「いや、普通の人間族の一般人から生まれた今は8歳の男の子だよ?」
「…レイ君、1つだけ聞きたいことが有るんだけど一体どうしてここの洞窟で暮らすようになったのか、聞いてもいいかい?」
「う~ん、説明が難しいからなあ、まあ、1つだけ言うと俺は捨てられたとかじゃないからそんな悲しそうな顔はしなくてもいいよ。それに、人の街に行こうと思ったらいけたけど行かなかっただけだしね」
「そうなのか…ごめんね。変な事を聞いてしまって」
「いいよ。それに、早くあの人達連れて帰った方がいいんじゃない?」
「そうだね」
グランさんは、馬車の確認をした後、小屋の中に入って集団の人を呼び出して新しい馬車へと乗り込んでいった。そして、グランさん達は馬車を走らせて帰って行った。
「ふぅ~、やっと人が帰って行ったかあんな大人数を相手するのは嫌だったから早く帰らせて正解だった…さてと、ラルとライを呼びに行くか」
(さっき、一応行ったがあいつら結構な寂しがり屋だから長時間放置してしまったから何か持って行ってやるか)
俺は、小屋の中からクッキーを持ってラルとライの所へと行った。付いた途端、ラルとライが俺の腹と顔に飛び込んできて俺は山から転げ落ちた。俺は、ラルとライに少しだけ説教をした後、洞窟拠点へと帰ろうと思ったが、小屋は、あの集団を入れるスペースは作ったが寝れるような所は小屋には作って無いし、洞窟内部は盗賊が荒らしまくっていたので使えない、それに女神様の像も壊されているのを見てまだ片付けてないので、戻る気が無くなり今日はこの隠れ家で過ごすことにした。
次の日の朝、俺は洞窟拠点の方から何か音がしたのを聞き取り、目を覚ました。
(んっ?何か、人の話し声がするな…)
俺は、探知魔法で洞窟拠点の方を見ると、そこにはグランさんの馬車と他に人が1人いた。
(またあの人か、今日は何の様なんだろうな…)
俺はラルとライを起こして、人間が来てるから相手してくるから大人しくしておくように言って、グランさんが待って居る洞窟拠点へと向かった。
洞窟拠点に着くと、俺の事を見つけたグランさんが近づいてきた。
「レイ君、昨日振りだね。洞窟の中に居なかったから何処か別の場所に行ったのか心配してたんよ」
「ああ、昨日盗賊に荒らされて眠れる気が無かったから違う拠点で寝たんだよ。それで、今日は何しに来たの?それに、後ろの人は?」
「貴方がレイ様ですね。私はマグラットのギルド職員です。今回来たのは、レイ様に討伐金の報酬を渡しに参りました」
「報酬金?ああ、昨日の盗賊か、でもそれならグランさんに渡せば良かったんじゃない?」
「いえ、ギルドの報酬金は職員が直々に渡さないといけない規律ですので、領主様でもこれだけは出来ないので」
「そう言う事で、今日は私はこの方たちをここに案内しに来た感じだよ」
「なるほどね。それなら、仕方ないか、まあでもお金貰っても使い道は無いんだけどね~」
俺は、職員から報酬金が入った袋を受け取った。貰う時予想以上に多くてビックリしたが、掛けていたアイテムバックの中に入れた。
「ああ、そのことなんだけどレイ君、私の街に来ないかい?」
「街ですか?…」
(サバイバル生活もそろそろ飽きてきたしな、丁度いいのかな?でも、街って事は魔物は連れていけないよな、俺にはラルとライが居るしな…)
「グランさんの街に従魔持ちの人っていますか?」
「従魔かい?そりゃ、沢山いるよ。従魔は冒険者のお供みたいなものだしね。私の街は、多分レイ君が知らないと思うけど【迷宮】というのがあって、そこに従魔や奴隷話連れて行く冒険者が多いから」
(なるほど、それならラルとライは連れていけるな…行ってみっか、街)
「そうですね。それじゃ、今日1日で準備しますので明日迎えに来てもらえませんか?あっ、それと俺従魔持ってるんで、さっき聞いたのはそう言う理由です」
「ああ、そうか分かったよ。それじゃ、また明日ね」
俺はグランさんに返事をして、それを聞いたグランさんは嬉しそうに馬車に乗って帰って行った。俺は、グランさんが行ったのを確認してラルとライが待つ隠れ家へと向かった。
そして、ラルとライに話をしてから、明日の準備へと取りかかった。まず最初にこの隠れ家から燻製肉をアイテムバックに入れて、次に洞窟拠点に帰ってきた俺達はまず洞窟内部にある大切な物、俺一番最初に作った。盗賊に唯一壊されていなかった。小さな女神像と外してて今の今迄忘れていた、赤ん坊の時から首にかけていたペンダントを首に掛け服の中に仕舞い、洞窟内部の持ち物を全て炎をで燃やし尽くした。
「女神様、またいつか女神像を作りますのでそれまでこちらの小さな像で我慢してください…」
と俺は言いながら、壊れた女神像も火の中へと放った。小屋の中に戻り、隠し倉庫から砂糖やら塩を入るだけアイテムバックに入れた。そして、小屋のなかに寝れるスペースを作り今日は小屋で眠りについた。
次の日の朝、朝いつもより早くから俺はラルとライを起こして湖で体を洗っていた。
「お前達、今日から人間の街に行くんだ、いつも以上に綺麗にするぞー!」
「わうー!」
「ぴー!」
俺の掛け声とともに、俺達は湖でバシャバシャと体を洗い、俺は貰った服を傷まないように気を付けながら洗い火魔法で俺自身と服を乾かして、ラルにはブラシもしながら乾かした。ライに関してはスライムなので、水を浴びたらピカピカになっていた。
湖から小屋に帰ると丁度良くグランさんの馬車が着いた。
「おはよう、レイ君」
「はよっす、グランさん早いっすね」
「うん、朝早くに来て荷物の整理を手伝いに来たんだけどその様子だともう全部終わったのかい?」
「ああ、はいそうですね。ほとんどこの、アイテムバックに入れたんで手に持つはこの首飾りと女神像だけですね」
「そうかい、準備が終わってるなら早く街に向かおうか私の家族も待って居るし、さっ荷台に乗って街に向かおうか」
「はーい」
俺は、グランさん馬車の荷台に乗り、後ろからライを頭に乗せたラルが乗り、グランさんの街へと向かった。