第1話 【死】
俺の名前は道塚 浩太、高校一年生で、今はホームルームが終わろとしていた。
黒板の前で長々と話し込んでいた先生が、「最後に…」と言って最後の言葉を言った。
「ええ、それじゃこれから夏休みだがくれぐれも警察様のご厄介にはなるなよ、ホームルームはこれで終わりだ、級長挨拶を」
「はい、起立~、礼」
『ありがとうございました~』
俺は、いつもの挨拶と共に横に掛けてあるカバンに机の中に残っている教科書を詰め込み始めた。詰め込み作業をしていると前の席に座っている俺の中学からの友達の、間島 徹が話しかけて来た。
「おーい、みっち~、一緒に帰らないか?夏休みも始まったし、今日家でゲーム大会開こうかって話なってんだが」
「すまん徹、今日はちょっと用事が有るから一緒に帰れない」
みっちーとは俺のあだ名みたいなものだ、普通下の名前があだ名になるだろうが俺の場合苗字が珍しかったのでそこからあだ名が作られたようだ。
「え~、まじか」
「まじで、今日の用事は外せないんだ。明日なら予定は入ってないから良かったんだが…」
「ふむ…よし、なら明日にしようか、どうせあいつらの事だ明日も暇だろう」
徹が言ってる〝あいつら〟とは、別クラスに居る他の友人の二人の事だろう。俺は、徹と話しながらも進めていた作業が終わりカバンを肩に掛けた。
「あいつらにも、悪いと言っておいてくれ、それじゃ俺帰るな、また明日夜にでも連絡くれたら」
「うぃ~す、あっそうだ、みっちー最近ここらで通り魔が居るらしいから気をつけろよ」
「ああ、分かった。」
俺は、これがフラグとも知らずに教室のドアを開け、学校から出て行った。学校から出た後、俺は用事先の本屋へと向かっていた。本屋に到着した俺は目的の物があるコーナーへと行った。
「…よし、最後の一冊だったが有った。良かった」
俺は、最後の一冊になっていた本を手に取り、カウンターに持って行った。そして、お金を払い、「カバーは着けますか?」と店員から言われ俺は「はい」と答え、カバーを付け終わってから袋に入った物を貰い本屋から出た。
「ふふふ、やっと新刊手に入れたぜ、長かった…作者がまさか病気にかかって新刊出るまで一年、作者さんマジで帰ってきてくれてありがとう…」
俺は、そんな事をつぶやきながら大事な本が入った袋を手に持ち、目の前の信号が変わるのを待った。
「キャ―――ッ!!」
「ッ!なんだ??」
急に、 後ろの方から叫び声が聞こえ俺は後ろを振り向いた。そこには、黒いマスクに黒いジャージ、手には普段料理用とかに使ってるナイフではなくサバイバル系で使われるであろう切れ味が良さげのナイフを持った怪しげな奴が居た。
そいつは、突然ナイフを振り回すと近くに居た少女へと手を伸ばそうとした。
「ちょ、やばッ!オラッ!」
俺は、大事に持っていた本の袋を少女を助けるために男に向かって投げた。俺が投げた袋は運良く通り魔の後頭部に当たり通り魔がよろけた瞬間少女は逃げる事に成功した。
「ッ!何しやがる、小僧ッ!!」
「えっ、ちょっマジかよッ!」
男は俺に袋を投げられたことに怒り、俺の方へナイフを刺す持ち方をして走って来た。そこで、俺が計算外だったのは男は意外にも足が速く、周りの止めようとした大人達を振り切って俺のもとへ来た。
そして、俺の目の前に現れた男から逃げようと後ろを振り向いた瞬間、背中に今迄感じたことが無いような激しい痛みがした。
「あぁぁぁッ!!」
俺を刺した男は、そのまま信号機が変わったのをいい事に信号を渡って逃げて行った。俺は、背中を刺されたことに気が動転し地面へと倒れた。倒れた俺に気が付いた周りの大人が、ケータイを取り出し何処かへ連絡しているようだった。
「ああ、くっそ、明日のゲーム大会行けないじゃないか…こんな事なら用事とか言って断るんじゃなかったぜ…はぁ、神様、最後に子供助けたんだから異世界に連れて行ってくださいよ…」
俺は、そんな変な言葉と共に意識を失った。
☆★☆
「ッ!ここは何処だ?!」
俺は気が付くと、椅子に座らされていた。そして、さっきまで激痛が走っていた背中から何も感じなかったので手を当てると傷が無くなっていた。
「これは、どういう事だ?もしかして、俺が知らない間に医療はここまで発達してたのか?」
「いや、まず周りを見なさいよ」
「へっ?」
俺は、頑張って背中を見ようとしていた顔を戻すと、そこには女神と言えるほど美しい女性がこちらを見ていた。