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ボッチのボマー青年  作者: N・大八
第二章 ボッチ、友達ができる
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第八話 ボッチ、友達ができる①

第八話です




 声が聞こえた所を探す。……どうやら、このビルの「真下」の裏路地らしい。

 下を覗くと、男――恐らく青年――が6名の人間に囲まれていた。

 

「てめぇ……「フーリガン」のメンバーだよなぁ?」

「い……いや、その……。」

「あの時は世話になったぜ? 何せ、てめぇのリーダーには酷い目に遭わされたからなぁ?」


 ……「フーリガン」? 何だそりゃ? 英語で不良を表すスラングだったような……。

 

「か……金はあるからさ……は、ははは……。」

 青年が震える声で、そう言う。


「金だぁ……? そういう問題じゃないんだ……よッ!!」

「ぐっげぇ!!」

 男の殴りが怯えている青年の顔面に入った。……あれは、クリーンヒットしたな。

 

「てめぇらの正義気取りには、ウンザリしてんだよ! 同じ不良のくせに……偉そうに善気取りやがって……。」

「たかだか強えだけで、能書きたれやがる……てめぇらの偽善は、犬の糞より目障りなんだよ!」

 そう言って、別の男も怯えている青年の顔面を殴った。偽善、ねぇ。

 

「菅原の野郎も、所詮「俺ら」と同じだろうが。社会のゴミってところは。」

「いや、この後輩が理不尽にボコられる原因作ってんだ。俺ら以上のクズだ!!」

 そう言いながら、男たちはゲラゲラ笑っていた。……何だそりゃ。

 

 あまり目障りかつ不愉快な一連の行動に、僕は不快感以上の感情を持ちつつあった。

 ……どうせ、あいつらもゴミだ。このまま降りて殺そうか。そう考えていたら。

 

 

 

「……な、何が……同じ……不良……だ……。」




 殴られていた青年が、そう言った。

「ああ?」


「お前、ら……とは……違う……んだ……! ……「ヤス」さんは……お前ら、みたいな……ゴホッ……クズとは……!!」

「……何だ? 急に調子づきやがって……。さっきは、金はやるから見逃せだの言ってたくせによ。」

「「ヤス」さん……は、ゴホッゴホッ…………俺の、「恩人」だ……! ……俺みたいな奴でも……手を差し伸ばして……くれたんだ……!!」

「だから、何だこの雑魚が!!」

 そう言って、男はさらに青年を殴りつける。

 

「ぐぅっ!!!」

 青年が呻く。それでも青年は続ける。

 

「……「ヤス」さん、は……お前らが……馬鹿にされる……ような、人間じゃ……ない……! 絶対、に……!!」

「……チッ!! ゴチャゴチャうぜぇ奴だ! とっととボコボコにしようぜ!!」

 そう言って男達は一斉に殴りかかる。

 

 

 

「――おい、待てよ。」

 無論、そんな場面を見逃す「俺」じゃなかったが。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――






「ああ?」

「……なんだてめぇ?」

 ガラの悪い男達がこちらを向く。

 

「雑魚共が群がって弱いものいじめとは……まさに、滑稽だな。」

「何だと?」

「てめぇ、急にしゃしゃり出てきたと思えば何カッコつけてべらべら喋ってんだ?」

「それに俺らの事を、雑魚だぁ? 聞き捨てならねぇな? ああ? おいッ!!」

 不良共が、こちらに近づいてくる。ふん……セリフが見事に三流だな。

 

「雑魚に「雑魚」と言って何が悪い? 本当の事だろ?」

 俺はさらに挑発する。


「てめぇ……!! いい度胸じゃねぇか!!」

「こいつの仲間かどうかは知らねぇがどうでもいい!! ぶっ殺してやるよ!!!」

 不良達が、そう言っていきり立つ。敵は、「たったの」6人だ。本気を出すまでもないが……。

 やれやれ――

 

 

 

「少し遊んでやるとしますか。」

 そう言って、俺は戦闘態勢に入った。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――






「ぐ……ぐぅっ…………。」

「ば、馬鹿な…………6人相手に……む、無傷、で……。」

「ば……「化け物」……。」

 結果は言うまでもなかった。

 

「す……すごい……。」

 青年が唖然としながらこっちを見ていた。

 

 ……さて、どうしようか。

 僕は今、不本意だが指名手配の人間だ。「姿」を変えてるからといって、顔を覚えられたくはない。

 このボコボコにしたゴミはどうせロクな人間共じゃない。後々この青年の見ない所で始末しておくが……青年の方はどうしようか……。

 

 記憶を操作できる能力……そういうものを使いたい所だが、前に一度殺す目的の不良に試した所、やはりそういう能力は使えなかった。

 ……どうやら、補助能力等は自分にしか効かず、他人には攻撃的な能力しか与えられないようだ。

 

 ちなみに、今も超能力で「姿」を変えている。今は、「久井俊介」ではなくただの「名もなき青年」である。

 ……名前が面倒でつけてないだけだが。一応色んな「姿」に変えれるが、この青年の姿が一番落ち着く。

 さて、ここで疑問を持つ人がいるだろう。「何故、警察に見つけられた時は「姿」を変えてなかったのか?」と。理由は色々あるが要約すると、「慢心」だ。

 

 入る前は「姿」を変えてはいなかった。その前に、一定時間能力を使っていたため、解除が必要だと思ったからだ。

 ……実の所、この能力の効果時間は今でも不明だ。ある程度、長く保つ事はわかってはいるが、限界はいつかは分かってはいない。

 なら、すぐに戻せば……とは思うが僕の泊まっていたのはネットカフェだ。即ち、人がある程度いる場所だ。その上、監視カメラもある。

 そんな所で、それを実行すれば怪しまれるのは確実だ。能力だってばれる。

 それに、ネットカフェは大多数が会員制だ。別の人間が僕のを使えば……言うまでもない。

 

 そんなこんなで、能力を解除していたのだが……見つからないと高を括っていた。そもそも探してないだろうとも思っていた。

 とことん自分の愚かさに気付かされる。そもそも、警察も僕を捜しているのは分かるだろうに……。あの現場では、僕の痕跡もあったんだ、なのに……。

 ……というか、「思考も良くなる」とか僕そんな事書いたよな? 効果がそんなに無いような「あの……」

 

「ッ!!」

 急に声をかけられ、僕は振り向く。

 

「あ、あの、ありがとうございます!!」

「え、あ、その……。」

 ヤバい。キョどりそう。ボッチの宿命かなコレ。

 

 分かってるだろうけど、はっきり言って僕はコミュニケーションは嫌いだ。人と喋る事ほど苦痛な事は無い。とりあえずは人と話す時は当たり障りのないようにしていた。

 だけど……こういう親しいというか、仲よくというか、今のこういう感じの状況は好きじゃない。

 ……僕は一人が慣れてる。ボッチを自覚してても。

 

「あの……じゃ、じゃあ僕はこれで……。」

 僕はそばに置いてあった荷物を取って、さっさとその場を立ち去ろうとした。

 

「ま、待って! ッ……!」

 しかし、即座に手を掴まれた。クソ、一体何なんだ?

 振り向くと、青年が顔を抑えながら、喋りかける。無理するなよ……。

 

「あの……旅人か、何かッスか……?」

 青年は、僕の荷物を見た。

「ああ、まあ……そんなもんかな……。」

 僕はそう答える。

 

「……今更だけど、顔大丈夫なの? ちょっと腫れてるっぽいけど……。」

「ああ……大丈夫ッスよ。骨はいってないだろうし、慣れてますから。」

 はは、と笑う青年。慣れてるって……。

 

「……ところで、何すけど――」




「お礼したいんで、ちょっとついて来てもらっていいッスか?」




「…………は?」

 これが、後に僕の運命を変える出来事の一つだった。

 

 

 

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