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異世界を視る新米女神と  作者: 艾団子
3/4

プロローグ3 「転生者 イトウ・シンヤ」

目が覚めると、草原に寝っ転がっていた。体を伸ばしてみる。特に異常や変わりはないな。

手をグッパーグッパー。屈伸、アキレス腱伸ばし…、よし、調子も完璧だ。

当然全身の感覚もしっかりあるし、血を零すこともない……。

思い出しそうな、というか思い出してしまったトラウマにそっと記憶の鍵をかける。

何も自分から地獄を思い出す必要はないだろう。


しかし、おかしなところもある。天獄語、だっただろうか?ふと頭の中に新しい言語がインストールされているのに気づく。

今まで使ったこともない言葉が頭に無数にあるのだが、日本語と同じくらい使いこなせるのが自ずとわかる。不思議な感覚だ…。


「やっぱりここが…異世界、なのか。天獄とかいう名前には相応しくない清々しい雰囲気だ」


気温は20度くらいだろうか、涼しくて気持ちがいい。

そして、辺り1面は見渡せないほどの大草原だ。生まれてこの方見たこともないほどの緑に囲まれて、深呼吸をしてみる。

ムッと来るほどの緑の匂いは、慣れると落ち着くいい匂いだ。気持ちのいい空気が違和感なく鼻を突き抜け、肺を満たす。

空気が澄んでいるとはこんなことをいうのだろう。日本の都会とはえらい違いだ…。


「さて、と…、ここはどこだ?」


当然天獄にいるのだろうが、天獄のどこら辺にいるのだろうか、という問題だ。自分の体や環境に目立った問題はないが、場所が分からない。この世界の広さも分からない。

いや、待て、まずここから最寄りの人里はどこだ?

360°見渡す限り原っぱで、他にあると言えばちょっとした木がちょっとしかない。…アメリカの田舎クラスに人里間が離れてるところだったら、飢え死に待ったナシであろう。


「こんなことなら転生前にもっと色々聞いておくべきだったか…」


現代っ子にサバイバルスキルなど備わっていない。それこそ昨日(?)天界で聞いた異能があれば、話は別だが。


「まず、俺って異能持ってるのか?」


魔術は体系化されていて習得が必要と聞いたが、異能は既に使えるか使えないかが決まっているはずだ。

何かしらこの場面で使える異能を持ってるのが1番都合がいいのだが…流石にそんな可能性は低いか。

水や食料を生み出す異能が使えれば暫く困ることはないだろう、と考えられずにはいられない。

そんな異能があればとりあえず食い扶持には困らなさそうだ。


だが、そもそも自分が異能を持っているかの確認のしかたがわからない。

持っている人は自ずと持っていることがわかるのだろうか、それとも、何かしらの行動に応じて使えるようになるのだろうか。


「よし、息抜きに…ダメで元々だが」


何となく全身に力を込めてみる。何かしらの行動が異能を発現させないか試してみるのだ。特に変化はないが、他にもやってみることにしよう。


……

…………

他にも10分ほど色々やってみたが、特に変化は何もなかった。かめはめ波や霹靂一閃を放とうとしたり、黒棺やUBWも完全詠唱してみたが、完全に唐突に厨二行為をするヤバいやつと化してしまっただけとなった。

冷静になって考えると恥ずかしくなってきたので、ここら辺で異能探しは打ち切ることにする。恐らくこのまま適当に色んな試行を続けても意味がないだろう。


「さて、どうするか…とりあえず歩いて最寄りの人里から離れると最悪だな。どこかにヒントがないものか…」

うーむ、何かいいアイデアはないか思考を巡らせてみたが何も思いつかない。

学校の勉強ってやつは、何故肝心なときに役立たないのだろうか。


「まぁ、せめて、山が遠そうなこっち側へ歩いてみるか」

普通人間は平野に暮らすものだからな。

野宿はしたくない。出来るだけ早く人里に辿り着くことを祈り、とっとと歩き出すことにしよう。


『ほ──、─です───ぇ』


ん?今何か聞こえただろうか?しかも聞いたことある気がする声だが…うーむ、気になるが、まぁいいだろう。

日が沈む前にできるだけ進んでおこう。野宿はできるだけ回避したい。


※         ※          ※


「ハァ、ハァ……くそっ、もう飲まず食わずで6時間は歩き続けているぞ…。何か食べるか飲むかしたいんだがな。

水辺はどこだよ、生き物も虫以外何も見ていないぞ…。」


昼前辺りから歩き始め、今は夕方だ。このままだと今日は野宿となってしまうだろう。

それに食料はまだしも、なんとか水を確保せねば。いつか脱水症状で死んでしまってもおかしくはない。

うーむ、水を集めるにはどんな方法があっだろうか…


「──グルルルルルル…」

「え?」


なけなしの知識から水の集め方を絞り出そうと思った。が、明らかに後ろから獣の声がする。

流石に無視する訳にはいかず、振り返ってみると、やはり四足歩行の獣の影がある。

野犬だろうか。犬らしき何かがいるところまではわかるのだが、暗くなってきて何がいるのかよくわからない。


「何だアレは…尻尾が、三本!!?」


アレは犬というよりは狼、オマケにかなり大型サイズのものに近いナニカだということに気づいた。

問題は、尻尾が三本もあることだ。明らかに地球にはいない存在、恐らくこの世界に生息する魔物のと言うやつなのだろう。

まさかこんな助けも何もないところで遭遇するだなんて…!


「ガアアァァァァッッ!」

「ッ!クソッ!!」


ヤツが魔物だと気付くと同時、狼(仮)がこっち走ってきた。ヤツも俺と同じで飢えているのか!?

当然俺は全力で逃げる。生身の一般人があんなのに適う訳がない、三十六計逃げるに如かず、だ。

しかしやはり、非常に速い。単純なスピードでは、俺がもし50mを6秒で走れても全く意味を成さないレベルだ。

しかも、このあたりには木はおろか岩や段差もない。

周りに障害物のないこの環境では、上手く立ち回って相手を転ばせたり何かに激突させることもできないだろう。

どう逃げ回ってもすぐに追いつかれる。この事実は変えようがないとしか思えない。


「くそっ、やっぱり襲ってきやがった!!このままじゃマジでやべぇぞ…どうするどうするどうする…!?いっそカウンターで返り討ちを狙うか!!?」


狼(仮)が飛びかかってきた瞬間に、しゃがみこむような姿勢で力を溜め、直後ボディにアッパーを叩き込み、完膚なきまでに返り討ちにするイメージが脳裏に浮かび上がる。

しかし、格闘技経験も何もない俺がそんなことできるはずもない。こんなものは所詮妄想だ。


それに飛びかかってくるとは限らない。もしそのまま飛びかかることなく突っ込んできて、ふくらはぎ辺りにでも噛み付かれたら、かなりの深傷を負ってしまうだろう。

治療する術がない今、いずれ腐敗して死に至ってもおかしくないレベルの傷を。


『──!このま───シンヤ──が!!』


──今、誰かに名前を呼ばれたような気がした。今はそれどころではないのだが…!


『シンヤさん!───右に曲がっ─く──い!!』


やはり聞こえる!誰の声なのか分からないが、天啓とでも思って信じるしかないか!?


「右!?右に行けばいいんだな!!」


すぐさま進路を右に変更する。しかし、やはり辺りは1面原っぱだ。障害物も何もないがこれでいいのだろうか。あるとしたら右手前にあるちょっとした茂みぐらいだが…


ガサガサガサッ!

「ガアアァァァァァァァッッ!!」

「ッッ!!?」


右に曲がって数秒、件の茂みから少々色が違う狼(仮)が飛び出してきた。コイツも尻尾が3本ある。マズい、このままだと挟み撃ちにされてしまう。益々死ぬ確率が上がったと言えるだろう。異世界に来て1日もせずに死ぬとは、全く以て笑えない。

クソ、謎の声に従って右に来なかったらコイツにも追いかけられることはなかったかもしれない。

騙されたのか…?


『いいですよ!左!その──左に行っ──ださい!』


謎の声がだいぶハッキリ聞こえるようになってきた。…が、しかし俺はあの声に騙されたかもしれないのだ。正直あまり頼りたくはない。先程の声を無視して真っ直ぐ進んでいれば、今頃二匹目の狼に追いかけられてはいないかもしれないのだから。

しかし、右手前と後方から狼(仮)に追われている今、左に進む以外の道はないだろう。前後左右のうち3つは、一方の狼(仮)との距離を縮めることにしかならない。


仕方なく進路を左に切り、全力で走り続ける。


「ハァッ、ハァッ…あれ?」


少そろそろ追いつかれるのではないかと思ったのだが、どうにも様子がおかしい。何かが追いかけてくる気配がなくなっている。

走りつつも振り返ってみると…


「ガウッ!!バルルルルゥゥゥ…!」

「ガルルルルルゥゥ…!バウァアァァァ!!」

二匹の狼が、俺には全く目もくれず、争っているのが見えた。


「共食い?縄張り争いか…?いや、そんなことどうだっていい、さっさとこの場を離れないと…!!」


※         ※          ※


「ハァ、ハァ、ここまで来ればもういいだろ…」

その場を離れ、何とか難を逃れた。あの二匹が争っていた場所から1kmは離れたのだ。見晴らしのいい原っぱとはいえ流石に大丈夫だろう。


『何とかシンヤさんが生き残ってくれました、良かった!』


さっきの声がまだ聞こえる。もう完全にクリアな音声だ。脳に直接語りかけてくるとはこんな感覚のことを言うのだろう。なんと言うべきだろうか…ASMRの上位互換?

というかこの声、やはりどこかで聞いたことがある気がする。具体的には天界で聞いたような声だ。あの、少しだけ慣れ親しんだ声。


『いやー、それにしても、天界を発ってから1日もせずに死んでしまうかと思いました。折角始めて送り出した方なのですから、そう簡単に死なれてしまっては困ります。』


間違いない、今のでハッキリした。この声の正体はセレスだろう。彼女は新米の女神だったのだろうか。それならばどこか威厳がなく、少々残念女神なところも合点が行く。


いや、今はセレスのキャリアなんざどうだっていい。彼女は俺を見守るどころか、しっかり俺がどこで何してるのか監視してアドバイスまでしてくれているのだ。実際彼女アドバイスのおかげで生き残れたのだからまず感謝しておくべきなのだろう。


しかし…文句は言えないのだが、必殺技のポーズやら呪文の詠唱も見られてた、もしかしたら聞かれまでいてたってことになるのか…?最悪だ。それに、もしこれが続くとなると、1人で夜ゴソゴソすることすら落ち着いてできないぞ、なんて生き地獄だ。


「セレス様ーー!?あのー、アドバイスありがとうございます!!もしかして、ずっと監視なさっていたんですかーー!!?」

どの程度監視されているのかについて聞かない訳にはいかないだろう。セレスに、カラカラに乾いた喉を全力で張って呼びかけてみた。


『はい、そうですよ〜!それが新米女神としての私の仕事なのです!!ところでシンヤさん、先程から心を読んでいて思ったのですが、私の声、届いてますよね?』


やはり聞かれていた…というか心まで読まれていたのか。心を読んでいるなら声を張り上げたのも無駄だったな…。


そうです、聞こえていますよ。おかげで助かったのですし。改めて、ありがとうございます。


『いえいえ、女神として転生者を案ずるのは当然のことです!

それにしても…そうですか、本当なら女神が天界から何を言っていようが聞こえることはないらしいのですが。もしかしたら、これがシンヤさんの異能かもしれませんね!私、女神セレスの天啓が聞こえてくるという!』


む、むむむ、結構重要なことが今聞こえたが…今のセレスとの会話は、俺の異能によるものなのか?そうなのか?…なんというか、とても重大なネタバレを食らった気分だ。


「でも、もし本当に俺の異能がセレス様の声を聞くことなら、中々いい異能ですね!今回のように事前に危機を察してくれたり、とても有難いです!」


『ふふふ、もっと褒めてくれてもいいのですよ!シンヤさんは出会ったときから私に対する敬いが足りないのです!やっと私の有難みがわかったようですね…!』


はいはいありがとうございます(3回目)。ところで、どうやって俺を助けてくれたんですかね?


『敬いかたがやはり雑、というか、まず敬っているのでしょうか…?うーむ…まぁ、そうですね…シンヤさんの周りを見てたら三叉狼(トリデントウルフ)がもう1匹いるのに気付きまして。

彼らは別の群れの個体同士の争いを何よりも優先する魔物なので、互いに争わせようとシンヤさんに呼びかけてみたんです。まさか本当に声が届くとは思っていませんでしたが。』


拗ねながらも教えてくれるセレス様優しい!

なるほど。それにしてもあの狼(仮)、三叉狼(トリデントウルフ)とか言ったか、やはり魔物だったのか。この世界には他にもあーいった感じで魔物が生息しているのだろう。

さて、ありがたいことにセレスのナイス判断で助かったのだ。せっかくだし、ここからどっちに向かえばいいかの判断も仰ぎたい。

セレス様、ここから最寄りの人里はどこか分かりますか?


『あー、うーん、その、ごめんなさい。どっちに人里があるかはわからないんです。私が見えるのはシンヤさんの周りだけ、せいぜい半径100メートルってところでしょうか。』


そうなんですか。でも、半径100メートルと言っても、洞窟やダンジョンでもあったら便利そうですね。暗所で見通せて貰えたらとても楽に進んでいけそうです。


『あ、私視力1.0ですし、夜目が利く訳でもないので暗闇は普通に見えませんよ?』


正直、使い道が正直薄い異能な気がしてきましたが、気の所為ですかね?この異能でやれることは、今の状況みたく暇つぶしにセレスと会話することぐらいとなってしまいますね。

セレス様、せっかくだし野宿する場所でも探しながら、この世界について色々教えて貰えませんか?


『女神と話せるとこをもっとありがたく思って欲しいところなのですが…異能ももっと賞賛してくれてもいいと思いますし。全員が持ってるものではないのですよ?

ですが…まぁ、私も暇してたのでお話くらいはいいでしょう。野宿するなら、ほら、向こう…左に少し大きめの木がありますよね?そこを使うといいと思いますよ。』


「あ、ホントだ、いい感じの木がありますね。丘に隠れて気づかないところでした。」

それにしてもセレスのノリが思ったよりも良くて助かる。聞かなきゃいけないことはいくらでもあるしな…いつでも思考を覗かれて、行動を監視されてるのでは落ち着いて夜ゴソゴソ1人でするすることもできない。やはり、健全な男子にしては死活問題なのだ。


『先程も言ってましたが、ゴソゴソして何をするんですか?遊びでしょうか?私もできるなら混ぜてください。暇なんです〜。』


元々少なかったが女神の威厳マッハで崩れ去っていきますね。というか察してください。えーっと、その、オ○ニーのことですよ。


……


…………あれ?セレス様?おーーい。


『っ〜〜!んなっ……!い、言いたいことは色々ありますがっ…ハ、ハレンチですよ!!そんな、オ、オオ、ナ……なんてっ!!!』


え、その、女神なのにそこで恥ずかしがられるとこっちまで恥ずかしくなってくるんですが…。何か女神だったら、そーゆーのは達観して軽く流して欲しいところなんですけど。

というか、普通の男子にとってはどう足掻いても死活問題なんですって。せめて3日に1度くらいは自由が欲しいところです。


『だから、えっと、そそ、そんなこと言われても…シンヤさんのヘ、ヘヘ、ヘンタイ!!

それに、先程も言いましたが、シンヤさんの監視が私の女神としての仕事なんです!新米女神は初めて転生させた相手の一生を監視する任に就くんです!』

い、一生!?一生監視され続けなきゃいけないって言うのか!?


「ぬぬぬ、じゃ、じゃあせめて夜だけでいいですから、こっちが見るなっていったら見ないような感じにできませんか!?」


『ま、まぁそれくらいなら…こっちもずっと視てろと言われても困ってしまいますし…。』


あ、いいんだ。仕事で見続けなきゃいけないとかなら結構困ったぞ…。ま、まぁそれなら最悪どうにかなるか?話の通じやすい女神で助かった。どうにか夜の平穏は保たれるだろう。日中については今後相談していくこととしよう。



※         ※          ※



さて、セレスの言っていた木の下にまで来た。確かに何もないところで眠るよりは、木の下で眠る方がいいだろう。さて、野宿の準備に取り掛かるとしよう。とは言ってもキャンプ用具もない今、このまま眠ってしまう以外の選択肢はないのだが。

そして、まず水を集めなきゃいけないが…たしか水を集めるために朝露を集めるという方法があったような。うーむ、それぐらいしか知識がないな。

全く、やはり学校で学んだことは役に立たないじゃないか。体育じゃなくてサバイバル術を教えて欲しかった。

食料、は…水以上に全くわからん。まずここら辺異様に生き物が少ないからな。草を食べたとしても、いい具合なタンパク質の取りようがない。そして見つけても三叉狼みたいに捉えようのない相手な可能性が高いだろう。


「しょーがない、明日以降は虫を食べるのも視野に入れるか…。」


『虫を食べるんですか!?うわぁ……』


「今日は草でも食べて飢えを凌ぐとしよう……うわぁ、マッズ……」


『草はもう食べてますね!?うっっわぁ……』


酷い言い様だ。こっちだって好きで食べようとしている訳では無い。栄養を摂らねば歩けなくなるから苦渋の決断を敷いたのだ。

全く、もっと人里に近いところに飛ばしてくれれば、今頃水くらいは手に入っていたと思うんだが。


『理不尽ですね…こっちからは転移先の座標もあまり干渉できないんですよ!頑張って普通の陸上にしただけ有難く思ってください!!』

そうかそうか、確かに深海や大空のど真ん中よりは全然マシだろう。セレス様には感謝せねば──


─と、思う訳がない。それぐらいは前提ではくては困るのだ。

そんなところに飛ばされたら、水圧か落下の衝撃で即天界に後戻りだ。そうなったら、また3つの選択肢からどれか選ばされるんだろうか?

それは勘弁して欲しい。この世界が地球と同じつくりなら、いい感じの陸地とかに辿り着く確率は限りなくゼロに近いだろう。

そんなことでは異世界に辿り着くには何回も天界でRe:ゼロから始める必要が出てきてしまう。心が折れるのが先に違いない。


『ぬぬ、言わせておけば…いや、たしかにそうなのですが…あ、その、魂というモノの性質上、2回連続で天獄へ転生することは出来ません。』

尚更ダメですよね。転生に成功できる者はうんと減りますし、そしたら天獄が元に戻る可能性も大きく下がっちゃうと思うんですけど。


『そ、そうですよね…うぅ…』

…そんな声をしないでくださいよ。まるで俺が悪者みたいじゃないですか。美人や美少女は好きですけど、お生憎様、虐めて楽しむ趣味なんて持ち合わせてないんですから。


『…び、美人?私、美人に見えましたか!?』

おや、嫌味だろうか?それとも本当に、セレスは自分の見た目に自信と自覚がないのだろうか?美人というよりは美少女といった見た目だったが、彼女の容姿は、例え天界にいなくとも女神と喩えられてもおかしくない程ものだった。願わくばもう一度会いたいものである。


『……、……//』

はて?セレスは今何か言っただろうか『な、何も言っていませんよ?』


そうですか。それならいいんですが。女神の言を聞き逃すとは何と不敬な人ですか!!とでも言われるかと思ってしまいました。

『わ、私を何だと思っているのですか!?』

勿論、女神セレス様ですとも。


さて、今日はもう疲れたし、空は既にこれ以上先に進めるほど明るくはない。今夜はもう寝るしかないだろう。セレスに色々聞きたいことはあるが、今の状況では早めに寝て体力を温存する方がいいと思う。溜まっていないわけではないが、するのは体力があるときでいいだろう。


『えっと、その、聞こえているのですが……それしか頭にないのですか?』


申し訳ございません、ちょっとからかいたくなってしまっただけですよ。

「というか監視だけで別に心は読まなければいいじゃないですか。いちいちこっちだって心覗かれたくはないんですけど。」


『貴方がもっと普通のことを考えて普通に私を敬えば、覗かれたところで問題はないはずですが!!』


この女神、傲慢である。何故そこまで俺の心を視たがるのだろうか。

ハッ!セレス、もしかして俺の事……///


『もうあなたに話すことは何もありません。一方的に視ていますね。では。』

くっ…もう冗談は言いませんのでお許しを…!


まぁとにかく、おやすみなさい、セレス様。また明日、この世界や転生についての話を聞かせてくださいね?

セレスにおやすみを言いつつ(思いつつ)座りながら木にもたれかかる。横になると草がモゾモゾして寝れたものではないだろう。


『全く……はい、おやすみなさい、シンヤさん。あなたに月女神(アルテミス)様の御加護があらんことを』


セレスは女神っぽくないが、こーゆー節々にどうも女神らしさを感じ『女神な私をずっと舐めてると明日何も教えてあげませんからね』ごめんなさい。


はやく寝るのが吉だろう。

異世界に、おやすみなさい。

次回は、今回のセレス視点ver.です、よろしくお願い致します。

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