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怠惰な魔本使いの見聞  作者: 炬燵天秤
第4章 鷲獅子の雛鳥とイル・グレイナイト
58/64

58話目 転勤……違うか

暑い!




……どうぞ!

________





「アーデ様のことですから、いつでもお戻りになれるとは思います。ですが途中で引き返すことがないよう、忘れ物はなさらないで下さいね?」


「わかってる。いざという時はこいつを取りに帰らせるから大丈夫」



 場所はベイレーンの正門前。この街に降り立った時にも利用した発着場で諸々の準備をしていた。


 見送りに来ていたサクの懸念に対し、呑気に菓子を頬張る妖精を小突いて肩を竦める。地味に食べカスが服に掛かってるからヤメロ。


「酷いですぜアーデさん! あっしは妖精族ですけどあんまり長距離飛行は得意じゃないですよ!? 精々が街の端から端まで往復するのが限界なんです!」


「地味に役に立たないのですね」


「サクっちまで酷い!? 拗ねて引き篭もりますよ!?」


 サクっちとは。いつの間にそんなあだ名が付いていたのやら。


「また珍しいのが入ったみたいだねえ。あんたのところは種族の博物館か何かかい?」


「……変なのを呼び込んだ自覚はありますが」


 一人と一匹のじゃれ合いを横目に、もう一人の見送り人へと向き直る。意外なことに、俺が分割払いで購入した家の家主こと、オウビ婆さんが見送りに来ていた。


 白髪(しらが)混じりの黒髪から生えた双角に、上腕から手首までを覆う蜥蜴の鱗。

 人ならざる姿を持つ年齢不詳の怪婆だが、普段は我が家を訪ねては緑茶をたかり、リリィと歓談して帰るだけの無害な婆さんである。


「ケイから聞いたよ。ディーリス王国に行くんだって?」


「はい。まあ大した理由じゃないので、七日も経てば帰る目処もつけられるかと」


 公爵からはクーデターを阻止しろとか言われたが、拒否したし。エイドリックの想い人を救出して適当な安住の地を探すくらいなら大した日にちは掛からないだろう。



 ――暫く後に、この見積もりが甘過ぎたことを痛感するのだが、出発前のアーデは知る由もない。



「ならそのついでで良いさね。この手紙をとあるババアに届けてくれ」


 オウビ婆さんが投げて寄越した一通の手紙を受け取る。


 紙質はそれなり、しっかりと蝋で封がされており、裏面には紅いインクでオウビの直筆サインが刻まれているごく一般的な手紙だ。魔力の気配はしないから、突然飛んだり喋り出したりはしないと思う。


「それは構わない。けど誰に?」


「グィニアスアルペンドウリス。この老いぼれと同じ竜人族さね。燃えるような赤の髪色に双角が生えてるから、一目でわかるはずだよ」


 ……は、なんて? 


「なんて?」


「グィニアスアルペンドウリス。二回も言ったんだからもう覚えたろう?」


 無茶言うな。脳が人の名前だと認識してくれなかったんだが。せめてメモの準備してから教えてく欲しい。


「で、グなんたらさんは何処に住んでる?」


「ディーリス王国の何処かに住んでいること以外は分からんね。だから渡すのは偶然出会うことが出来たらで良いさね。会えなかったら誰かに託したりせずに、そのまま持ち帰れば良い」


 なんとも望みの薄そうな配達依頼だ。国という範囲からヒントも無しに婆さん一人を探し出せとは、難易度が高い。


「一応受ける。けど期待はしないで欲しい」


「構わんよ。何をやらかすつもりか知らんが、無事に戻って来なされよ。リリィの悲しむ顔は見たくないからね」


 頷いて手紙をローブ裏のポケットに仕舞う。ストレージに入れておけば紛失の可能性は無くなるが、むしろ存在を忘れかねない。常に身に着けておけばその心配も無用だろう。


「妖精、そろそろ出ないと正午に間に合わない」


「かしこまり! いやぁ、グリフォンに乗るのなんて初めてですから楽しみですよ! まあ、座るのはアーデさんの肩なんですけどねー」


 鼻歌交じりに襟の中へ潜り込む妖精。いつの間にか昼寝スペースにされてしまったが、まあ振り落とされなければ別に良いか。


「よろしく、ピー子」


 キュィイ! 


 主人が話を終えるまで大人しく待っていた鷲の頭と翼を持つ獅子の幻獣、鷲獅子(グリフォン)の首筋を撫でる。


 薬剤師ギルドに所属しているが故に、普段は街の外に出掛ける仕事がない。だから専ら朝方の散歩のみで我慢してもらっていたが、今回は思いっきり羽を伸ばさせることが出来そうだ。


「じゃあ、行ってくる」


「ご無事で、アーデ様」


 きゅ、とサクに軽く抱擁される。女性特有の柔らかい感触に若干テンパるが、その感触はすぐに消えて、不安げな表情を拭いきれないサクが俺の瞳に映る。


 同行させればこんな顔もさせずに済んだのかもしれないが、最早今更の話だ。それに、車椅子生活を余儀なくされているリリィを放って置くわけにもいかない。


「(リリィのこと、よろしく。魔族が、俺と似た姿をした誰かを探している。瓜二つな彼女も狙われる可能性があるから、気を付けて)」


「(……っ、畏まりました。アーデ様が不在の間、必ずリリィさんをお守りしてみせます)」


 俺を魔王の娘と勘違いしていた二人の魔族の内、ガメスオードは散々に痛めつけたので暫くは動けないだろう。


 魔族の自己治癒能力がどれ程のものか分からないが、元密偵であるサクが街全体を精査しても見つからなかったので、少なくともベイレーンには居ない筈。

 願わくば、そのまま二度と再会しないような遠くに旅立っていただきたい。


 そして、オリベル。ダンジョン攻略では孤児のマロンを救出するために共闘した骸骨の魔族。奴もあの一件以降、地下の隠れ家からも姿を消し、全く音沙汰のない状態が続いている。


 結局、彼がベイレーンに滞在していた理由は聞けずじまいだが、敵対はなるべくしたくない。だから何とか接触する機会が欲しいのだが……今のところ、影も形も見当たらなかった。


 そんな不安要素を残したまま出発する訳だが、何とかなる、と思う。


(何かあったら『妖精窟への誘い』でとんぼ返りは可能……。といっても、その「何か」を遠方で知る手段がないからな。リリィの念話も国を越えたら届かないだろうし)


 隠居したヤグード子爵にもそれとなく伝え、警護の約束も取り付けておいた。「保険」もこっそり彼女に渡している。これで今出来る襲撃対策は全て施した。少なくとも命に関わるような怪我はしない、はず。……仮定ばっかりで嫌になるな。


「ピー子」


 キュイッ! 


 鐙に脚を掛けて一息に跨がる。申し訳程度に備えられた手綱も握っておくが、実質姿勢保持としてしか使っていない。繊細な「操縦」に関しては、「何となく」で勝手にピー子が飛行してくれるため、必要ないのだ。


 だから、見かけというか等級だけは高い馬? 具でしかなかったりする。……鞍を除けば、だが。


「いってきます」


「お土産に期待しといてくださいね〜!」


 バサリ、バサリと翼幅8メートルもの巨大な翼が羽ばたく度に、強烈な上昇気流が生じてアーデの視界が高くなり、それを追うようにして高揚感が込み上げてくる。


『飛翔』の重力を消失させて得られる浮遊感とは異なる、力尽くで重力の支配を振り切って空へと翔け上がるこの感覚が、堪らなく好きなのだ。


 キュイイッ! 


 十分な高度を稼いだピー子が一際強い上昇気流を巻き起こす。それを目一杯広げた鷲翼で受け止め、――一息に高空へと舞い上がった。


「おおっ、凄いっ! アーデさん! 街がもうあんなに小さく見えますよ!?」


 街がミニチュアのように、行き交う人々が豆粒サイズに見える光景に、妖精が歓声を上げた。それにつられて俺も眼下の光景を見下ろす。


 小高い山の麓、扇状地に築かれたベイレーンの街は、二度の騒動にもめげず変わらぬ活気に満ち溢れていた。この際、半壊した白亜の領城は見なかったことにする。


(ほんと、良い街だ……)


 俺にとってはもう見慣れた光景だが、初めてこの街を訪れた時は似たような感動を覚えた。模型みたいな自宅を空から見下ろす機会は前の世界でも無かったから、言葉では言い表せない感慨深さがある。


 離れる期間こそ短いが、それでも暫くは戻れないであろう街の光景を目に焼き付けておく。


「さあアーデさん! いざ見知らぬ果てを目指して、レッツゴーですよ!!」


「そうだな」


 翼と胴体から垣間見えるサクに向けて手を振り返し、ピー子の首筋を撫でる。それだけで意を察した鷲獅子は一つ大きく羽ばたき、クシャ山脈へと進路を取った。




 ________





 ベイレーンを発ってから一時間弱。俺と妖精を乗せたピー子は、国境付近のクシャ幽谷を飛行していた。


 朝方とあってかなり霧が濃い。しかし猛禽の瞳は不明瞭な視界を意にも介さず、悠々と山間の隙間を縫って滑空してのける。


 ただ、鷲獅子の主人たる俺は霧の先を見通す目を持っていない。だからピー子がそんなヘマをするわけがないと頭の中では理解していても、木々に衝突しないか気が気でなかった。


「あ、そうだ。アーデさん、魔導書は使わない方が良いですよ」


「ふーん。……ん? ……えっ、何故?」


 しれっと、とんでもないことを宣った妖精を思わず二度見する。

 何しろ俺から魔導書を除いたりしようものなら、ただの案山子(かかし)……魔法を使えない魔力タンカーの出来上がりである。相応の筋力と瞬発力は残るだろうが、動体視力が全く追いつかないから宝の持ち腐れだ。


 例えば、剣帝や勇者に近接戦闘を挑むとする。この場合、間合いを詰める姿すら視認出来ず、腕を上げる前に斬り伏せられるのがオチだ。肉体が追いついても、脳の処理が追いつかないのである。


 それを補うのが、肌身離さず隣に浮かぶ魔導書。


 使い手の俺が反応不可能な攻撃すら自動的に防ぎ、特に意識を研ぎ澄まさずとも複数同時攻撃(マルチロックオン)が可能で、九割方のスキルが無詠唱・硬直無し・無制限の連射と、これ一冊で万事足りる万能兵装となり得ている。


 無論これを扱うにはそれ相応の魔力が求められるが、その為のアーデフェルトで、身に纏う衣装(最高ランク装備)なのだ。


 純魔法職としての莫大な魔力(MP)保有量でも容易く枯渇する魔力を補うために、衣装に付与されたMPリジェネ。髪を結ぶリボンも、ハーフパンツ、ワイシャツ、ストッキング、ブーツ、手袋、紫色の上着、腕輪(バンクル)の全てが、魔導書運用のためだけに誂えた逸品なのだ。


「何故ってアーデさん。これから無断で国境線を越えるんですよね?」


 俺の抗議に構うことなく、妖精は現状確認のためそんな質問を問い掛けてきた。当たり前だが事実だ。そもそもあの空域には国境守備を担う部隊は存在しないが。


「しかも同行者は国から追われている反逆者。まあ犯罪者と行動を共にするわけです」


 そうだな。


「アーデさんは戦闘スタイルどころか、性格も隠密に向いてません。同行者も元騎士という話ですし、潜入捜査は難しいと思います」


 反論はしたいが、妖精の言っていること自体は分かる。確かにエイドリックが反逆者である以上、ディーリス国の諜報機関を相手にして常に身を潜めるのは些か部が悪い。俺は勿論、エイドリックだって諜報機関の人間に比べたら、国の情報に精通しているとは考えにくい。


「となれば、捜索隊に発見されて戦闘になる可能性も、限りなく高いわけです」


 せやな。


「……どう考えたって、それ(魔導書)で戦うの目立ちますよ」




 ………………。




 ……確かに。


「大竜巻を何本も巻き起こしたり、ビームぶっぱしたり、果てには聖剣の雨を降らせようとするのは、この世にアーデさんただ一人ですから。いつものフードで顔を隠してもすぐに特定されますって」


 それはどうだろうか。ツバキを始め、俺以外にもチートを貰った転移者はいるみたいだし、中には一人くらい似たようなチート持ちがいてもおかしくない気もするが。


「いませんから! 貴女みたいなトンデモびっくり火薬庫が何人もいたら世界が滅んじゃいますよ!」


「流石にそこまでやれないから」


 自分で生活拠点を滅ぼしてどうする。それに、いくらランク15の武器を使い捨てたとしても、世界を滅ぼす程の威力は出ないと思う。


「……こほん、話が逸れました。兎にも角にも、魔導書じゃない得物を使ってください。ほら、アーデさん武器だけはたくさん持ってるでしょう? 邪剣でも聖槍でも何でも良いですから、何か別のものでお願いします」


「仕方ない、か。……これなら大丈夫か?」


 装備選択のため思考に耽り、暫くの後に魔導書から錫杖とネックレスを取り出して妖精に見せる。


 錫杖は俺の身長より長い1.5m(メートル)強の金属製で、その割には異様に軽い。杖の先端の円環には様々な色・材質の組み紐が結ばれ、今は持ち手に絡まるようにして留められている。


「まあそれなら普通の魔法使いに見えますけど……、そっちのペンダントはどんな曰く付きの代物なんですか?」


 妖精が興味を示したペンダントは、中央の無垢な白色宝玉と、それを八つの宝石が囲む、太陽を模した装飾が施されたものだ。

 宝石はどれも中心に暗色の澱み――凝縮された魔力を内包しており、思わず魅入ってしまうような妖しさを湛えている。……外見こそ禍々しい呪具の類だが、これでも歴とした『聖遺物(レリック)』だ。


「名前は……何だったかな。普段使わないから覚えてない。これの効果は『八度まで一定量のダメージを肩代わりする』だけ」


 要は『詩篇城塞』のアイテム版。有限で、防げるダメージ量も少ないなど、劣化版なのは否めない。


「だけって……。どう考えてもこの世界なら一級品の護りなんですがそれは」


「あくまでダメージにしか発動しないから、毒とか麻痺みたいな状態異常は防げない」


「状態異常以外を防げるだけでもおかしいと思いますが。あれ、でもどうして普段は使っていないんですか? 他の装備と競合する……わけでもないですよね?」


 妖精の疑問はもっともだ。『詩篇城塞』とこれを併せれば殆どのダメージをカット出来る。なので短い期間だが俺も併用して使っていた、のだが。


「単独で使うには頼り無さ過ぎて、そのくせ製作コストが馬鹿にならないのにアプデで弱体化されて……まあ兎に角、被ダメージを軽減するスキルと併用すると、どちらの効果も打ち消される。だから普段は使えない」


 結局修正が入り、産廃と化した。以来、倉庫の肥やしになっていたのだが……、まさかこんな形で再び日の目を見ることになるとは。


「よく分かりませんが大変なんですねぇ。まあ武器さえ変えていただければバレないと思いますし? 良いと思いますよ」


 キュィッ! 


 背の上での会話を余所に、短く鳴いたピー子はゆっくりと高度を下げ始めた。妖精に向けていた視線を戻すと、クシャ山脈に連なる山の一つが、霧の切れ間からひょっこり顔を覗かせていた。どうやら目的地に到着したらしい。


 野営地はあの山の中腹、小さな滝壺の近くに設営してある。野営地といっても、虫除け用の『虫喰らいのドス』が木々に刺さっている以外は、何の設備も無い空き地でしかない。


(……見えた)


 その野営地に、疎らな木々の隙間に見覚えのある人影と、その隣で首を擡げる飛竜を見つける。どうやらエイドリック達は既に準備を整えたらしい。


「おっ、あの男性が件の殿方ですか。中々イカした面構えですね〜。あれは絶対浮世を流していますよ」


「そうか? あいつの話を聞く限りゾッコンみたいだが」


 事情を聴いた時も、顔も知らないレオノーラという女性がいかに素晴らしいか、小一時間くらい聞かされたのだが。


「いえいえ、その一目惚れした女性と出逢う前! 竜騎士ともなればお嬢様方にモテモテでしょうな! ……ふむ、アーデさんはこの手の話に興味がおありではない?」


「ないな」


 顔を隠すためフードを被り直しつつ答える。しかし、妖精には俺の否定がお気に召さなかったらしい。何やら薄気味悪い笑みで俺を見上げている。


「へー、ほー、ふーん?」


 ぐぃ、と襟に掴まり、俺の顔を覗き込む妖精の表情はニマニマ笑顔。これは……何か良からぬ事を企んでいる顔だ。何か碌でもない発言をする前に止めるべきか? 


「アーデさんて処じぃっぁ! ぶべっ!? したっ、舌噛んだっ……」


 が、口を開く寸前でピー子が手頃な空き地に着地し、その衝撃で妖精が舌を噛んで悶絶する。何やってんだこいつ。


「……アホ」


 自滅して肩の上で器用に転げ回る妖精に呆れつつ、翼を折り畳んだピー子から飛び降りる。送還は……別に良いか。すぐに出発するかもしれないし。


「見事な着地だ。それに、この濃霧を突破するとは、アーデ嬢は鷲獅子の扱いも見事な腕前なのだな」


 鷲首を撫でて長距離飛行を労っていると、エイドリックがゆっくりと歩いて近付いてきた。体調は……良さそうだな。少しふらついているが、あまり等級の高くない水薬(ポーション)を使った所為だろう。厳しそうなら、追加で渡しておくか。


「どうも。……それで、レオノーラさんを助ける意思は変わっていない?」


 俺の問いに一瞬息が詰まり、俯くエイドリック。握り締めた拳を震わせ、瞳には燃え盛る炎の意志が宿る。


「――無論だ。未だレオノーラを救う方策も、道筋すらもこの目には映らない。だが、それでも私は彼女を救いたい……!」


「なら、手伝う」


 なっ、と困惑顔で俺を見るエイドに、手を差し出す。


「せっかく助けたのに、あっさり死なれるのは困る。だから彼女を助けるところまで手伝おう」


「しかし、これ以上迷惑を掛けるわけには……」


「死なれる方が迷惑だ。……安心して欲しい。これでも私は、強い」


 今回色々制限されてるけど。


「勿論、私にもディーリス王国で活動する理由がある。けれどそれは国家間の利害に関わる事ではない。私自身の目的のために、エイドリック、貴方を助けよう」


 逡巡し、少女を巻き込むことを躊躇ったエイドはしかし、覚悟を決めた眼差しで俺を見つめ返す。その瞳には既に、迷いは消え失せていた。


「感謝する、アーデ殿。見ず知らずの者へ手を差し伸べる貴女に、最大限の敬意を払わせていただく。……よろしく頼む」


「よろしく」


 ほっそりとした俺の小さな手のひらと、鍛え上げられたエイドリックの大きな手が合わさる。性別も、生き様も、何もかもがバラバラな二人の奇妙な共闘が、見届ける者のいない山の深奥で成立した。

(●ω|「フィギュアヘッズが終わってしまった……」


ア「リアルタイムでサービス終了を見届けたのはこれが初めてかー」


(●ω|「フィギュアヘッズの世界に行けない不具合が」




残念。


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