Story1-2
彼の姿を見て、一目で東欧系だと感じた。どこが東欧系かと言われると、ほとんど勘だと言われるようなものである。
???「あ、大丈夫ですよ。私はあなたを殺そうとなんて思ってはいませんし。」
アリス「・・・『お姉さんも』ってことはあなた、吸血鬼なの?」
アレクサンドル「はい。あ、僕はアレクサンドル・アントネスクと言います。ルーマニアのピテシュティ出身です。」
アリス「で、この死体はどう説明するのかしら?」
アレクサンドル「単純に酒場で撃ちあいになって、走って逃げた私のうしろを追撃してきたので殺しました。鉛玉で死ぬ吸血鬼なんていないのにバカですよね。」
アリス「まあ、人間を殺すのには十分な力は持っているから撃ったんじゃないかしら?見た目はあなたも私も人間だし。」
アレクサンドル「そうかもしれませんね。あ、お姉さんはどこの出身ですか?ドイツですか?それともアイルランド?」
アリス「私はボストンよ。アメリカのボストン出身。あと、私は厳密には吸血鬼じゃない半端者よ。」
アレクサンドル「あ、ダンピーラの方でしたか。」
アリス「ええ。私の父はドイツ生まれの吸血鬼だったけど母は普通の人間だったわ。」
アレクサンドル「ところで・・・あの音が聞こえますか?」
アリス「ええ、聞こえるわね。たくさんの靴の音と銃器の当たる音が。」
アレクサンドル「とりあえず場所を変えませんか?」
アリス「同感ね。とりあえず私の泊まっている安ホテルにでも来るかしら?」
アレクサンドル「いいですね。案内してもらえますか?」
アリス「こっちよ。」
そう言って私は彼を安ホテルに案内した。部屋についてから私は一応ついている頼りないチェーンをかけてから再び話し始めた。
アリス「ところで、あなたはいくつなの?」
アレクサンドル「生まれは今からおおよそ700年前です。お姉さんは?」
アリス「私は1640年生まれ。ボストンにほど近いアーカムで魔女狩りにあったこともあるわね。」
アレクサンドル「魔女狩りですか。」
アリス「あなたはあわなかったのかしら?」
アレクサンドル「私はちょうどシベリアに行っていたのであっていないですね。」
アリス「そう。・・・かなりの人数ね。」
アレクサンドル「ええ。屋根の上に2人、廊下に10人以上、向かいの屋根に5人ですね。」
アリス「武器はあるかしら?」
アレクサンドル「一応は。G18とRPGを持ってはいます。お姉さんは?」
アリス「M92FSと特殊武器を2丁持っているわね。・・・弾は12かしら。」
アレクサンドル「12mm弾ですか。少し心細いかもしれませんね。」
アリス「12mmじゃないわよ?それと、そろそろ突入準備していそうだから1発お見舞いしようかしら。アレックス?窓側をお願い。」
アレクサンドル「勝手に短縮しないでください。・・・3秒ですよ?」
そう言って私は12と言った弾丸が装填されている銃を撃った。撃った瞬間、周りの音がかき消されるくらいの轟音が鳴り響き、扉が吹き飛んだ。理由は簡単だ。私が撃ったのは12mm弾ではなく、120mm滑空砲だからだ。使った銃はCal-50と同じオーダーメイド品のABS-63だ。バレルをスイッチ1つでありとあらゆる弾に適合可能なものに変更することのできる特殊な銃器だ。今回は対戦車用の120mm滑空砲が入っていたので使ったまでなのだが、そのおかげで好都合な結果が生まれた。
アリス「飛び降りるわよ!」
アレクサンドル「弁償代、いくらなのかな。」
そう言いながら床に開いた大穴に飛び込んだ。床から降りると下には敵がいなかった。代わりに首から下がないロシア人らしき死体が転がっていた。そしてその顔には見覚えがあった。
アリス「こいつ・・・NYのマフィアじゃないの!どうやってここに・・・」
そう。その顔は、私がFBIと共同で展開したマフィアの掃討作戦で捕まえた1人だった。記憶では懲役300年という、人間にはふざけたような年数だったはずだが、脱獄でもしたのだろうか?
アレクサンドル「とりあえず逃げますよ!」
そう言って彼は不用意に道に出ようとした。
アリス「待ちなさい!スナイパーがいるかもしれ・・・」
そう言ったが、遅かった。重々しい銃声が鳴ったかと思うと頭に1発の銃弾を受けて倒れた。