始まり ―白い野牛―
この話にはアメリカンインディアンが出てきます。その為、彼らの風習・文化についてなるべく調べた上で書くようにしていますが、調査不足の点や話の都合上、創作した部分もあります。しかし、私はアメリカンインディアンが好きで彼らを侮辱したり貶めたりする意図はありません。また、白人によるアメリカンインディアンの迫害も出てきます。そういったことを不快に感じる方はこの小説を読むのをご遠慮ください。読んでからの苦情は受け付けません。また、この作品は史実を参考にした部分もありますが、あくまでこれはフィクションであり、実際の歴史ではありません。以上のことを承知の上で読んでください。
夢の中では僕は美しい白いバッファローだった。アメリカの大草原を悠々と渡り、草を食んでいる。
けれども現において僕は貧弱でチビでいつだっておどおどしている。
夢の中の僕はきっと僕の理想なのだ。何者にも恐れることはなく、大きな体に、矢さえはじき飛ばす強靱な筋肉とまでは行かずとも若さと力に充ち満ちた僕の毛皮はピンっと張り詰めていて、それでいて柔軟だ。僕の周りには僕より大きなバッファローたちがいて、僕と同じようにゆったりと草を食んでいる。
僕はまだ大人になりきっていないのだ。
僕のすぐ隣のバッファローの背中に止まっている白い烏が僕に話しかけてきた。
「坊ちゃん、坊ちゃん。あの人間と会うのはもうお止しなさい。きっと後悔しますよ。」
「いやだよ。あの人は僕の友達だもの。」
僕は草を食むのを止めてすぐさま言い返した。べろり、と下で口の端についた草を舐め取る。最近、僕には人間の友達が出来た。そのことを烏は言っているのだ。
「人間というのはバッファローを殺すもの。坊ちゃんもきっといつか殺されてしまいます。」
「馬鹿な烏め。僕は白いバッファローだぞ。白いバッファローがどうして殺されるというの。」
僕はおもしろくなってクスクスと笑った。きっとこの烏は自分も白いのに優遇されないから僕を羨んでいるのだ。
「坊ちゃんはご存じない。白い人たちにとってあなたは神でもなければ神聖な生き物でもないのです。白い人にとってあなたは邪教の化身のようなもの。」
あのねえ、と僕はこの馬鹿な烏に言い聞かせるように返した。
「僕の友達はね、赤い人だよ。白い人なんかじゃないの。どうして僕が悪魔になんかなるもんか。」
僕はまた食事を再開した。現実では草なんて食べようとは思わないけど、今の僕はバッファローなんだ。これが普通で、更に言うと成長期真っ盛りの僕にとって食事はとても大切なんだ。
隣のバッファローの背中に停まっていた烏が僕の背中に移って更にごちゃごちゃ言っていたけど僕が聞く耳を持たないでいると、怒ったようにグァー、グァーと言ってどこかへ飛び立ってしまった。
ついに連載を始めてしまいました。
これはまだ、インディアンたちが馬を得る前の話、そして完全な狩猟民族になる前のお話です。つまりは白人たちが新大陸に上陸し、インディアンの迫害が始まるころのお話です。しかしながら、もちろん、このお話は前書きに書いたようにフィクションです。
更新は遅くなるかもしれませんが気長に待ってくだされば、と思います。




