さんっ!
side倉城
私は龍牙と別れたあと、足早に職員室へと向かっていた。
いつもなら面倒臭がって、ゆっくり歩くところだけど、早く行かないといけない理由ができた。
それは、彼に出会えたから。
私を救ってくれた彼。
その彼の所へ、早く行きたいから。
………ねぇ、龍牙は覚えているのかな?
私はあなたに会った事があるんだよ?
ある冬の夜の路地裏で、
あなたは私を助けてくれた。
私を救ってくれた。
だからかな?
私は今日まであなたの名前を知らなかったけど、
あの時からあなたの事が…………好き。
何よりの証拠が、私はまだ生きているという事。
あなたに会いたかったから、
あなたの名前を聞きたかったから、
あなたに想いを伝えたかったから、
私は生きてこられた。
おおげさな話なんかじゃない。
私は死にたかった。
生きているのが面倒になった。
ちょっとしたトラブルで始まったいじめ。
友達は離れていき、
教師からも見放され、
親にも失望され、
あげくのはてには………
元彼に騙され、集団レイプされそうになった。
その日が、あなたが私を助けてくれた日、
あの日あなたが来なかったら、私は既に自ら命を絶っていたと思う。
でも、危機は去ったとはいえ、私の心にはずっしりと、
恐怖という重い鉛のような感情が居座っていた。
でも、そんな時、
私を助けてくれた時に見えた、
不意に通った車のランプに照らされた、
あなたの顔の記憶だけが私の心を癒やしてくれた。
心配する目
少し上がった息
汗で幽かに光る肌
……暗闇の中で目立つ、白の髪。
どうしようもなく胸が高鳴って、
一目惚れしたんだって気付くのに、そう時間はかからなかった。
この想いがあったからこそ、その後も続くいじめにも耐えれた。
全部、あなたのおかげ。
あなたはそんな私をまた助けてくれる?
おんぶしてくれる?
私が長い間、誰にも言う事が出来なかった我儘を、あなたは聞いてくれる?
………ずうずうしいのかもしれない。
でも、この想いを止める事は出来ない。
もしかしたら龍牙には彼女がいるのかもしれない。
だけど、この想いを伝えたい。
だから、私はあなたに素直な気持ちを伝えようと思う。
たとえそれが拒絶であったとしても、
どんな返答だとしても、
あなたが好きだという気持ちに、嘘は吐きたくはないから……………。
倉城「平気?」
作者「へ?何が?」
倉城「こんな恥ずかしい文章書いてて。」
作者「…………。」