いちっ!
キーンコーンカーンコーン
遠くからチャイムが聞こえる。そう、遠くだ。つまり……
「遅刻だ……。」
理由は簡単。ただの寝坊だ。
だが、俺は遅刻をしていても堂々とコンビニでいちご・オレを買って飲んでいる。
これ、俺のポリシーね。
朝はいちご・オレじゃないと始まらんよ、うむ。
そして、大して早歩きもせずに、ぼーっと歩いていると、
「嫌。離して。」
「いいじゃんよー遊ぼうよー。」
「そうそう。学校なんかより俺等と遊んだほうが楽しいって。」
うむ。ナンパですな。朝から盛ってんじゃねぇよチャラ男共が。
まぁ見過ごすわけにもいかないので、助けに入るとしますか。
「ちょーちょーその娘嫌がってんじゃん。離してやれよ。」
やる気の無さそうな声で抗議する。
「はぁ?お前関係ねえじゃん。ひっこんでろよ。」
「そうそう。俺達今からこの子と遊ぶんだから邪魔しないでくれる?」
「あー、んじゃお前の言い分は?」
俺は女の子へ視線を向ける。
「助けて。」
短っ。ま、いいや。理解は出来たし。
「だ、そうだけど?」
「くっ…あぁもう!邪魔なんだよお前!」
男は激昂して、殴りかかってくる。が、軽く止めて、
「いいのか?俺に喧嘩を売っても?」
俺は苛立つ記憶を思い出し、感情を昂らせる、俺の正体をさらす。
「ヒイッ!あ、あんたまさか“灰色龍”?」
男は震えながら俺に疑問をかけてくる。もう一人はもう逃げだしている。
そう。俺は裏の方面ではそんなあだ名がつけられている。
理由は俺の病気の“アルビノ”と言ったものだ。
普段はいつも通りの黒髪なんだけど、感情が昂ったりすると、白髪になってしまう。
でも、半分だけのせいで、半分黒、半分白と言う変な髪になってしまっている。
灰色龍というのはそのせいだ。
ちなみに、表ではブラック・ジャックとかで呼ばれている。
「見たら解んだろ、で、どうする?殺る?」
「す、すいませんでした!ゆ、許して下さい!」
男は泣きそうになりながら言う。
「別に俺はいいんだけど、お前は?」
女の子へ視線を向ける。
「別にもういい。」
「そーかい。
んじゃ、そゆ事だ。消えろ。」
俺は男の手を離し、やや強めに言う。
「あ、ありがとうございます!」
男はそのまま全力で走ってすぐに視界からいなくなった。
「ん~一件落着かな?それじゃ、俺行くわ。」
ガシッ
「あの?何をされているのでしょうか?」
女の子が急に服を掴んできましたよ?
「名前。」
「え?」
「教えて。」
「……桜井龍牙だけど?」
「学年は?」
「何でそんな事まで……ああ、そゆ事か。」
この子うちの高校の制服着てます。ていうか今まで気づかなかったことにびっくりだ!
「2年だよ。B組。」
「ん、私も。」
「……じゃあ知ってたんじゃねぇのかよ?」
俺はほとんど覚えてないが。
「私、転校生。」
「それでか。……で、俺にだけ自己紹介させといて終わりか?」
あれ?聞くつもりなんて無かったのに。
もしかして
惚れた?
無い無い。
でも
可愛い、よな。
「!…倉城瑤子。」
「ん、倉城ね。……それじゃ用も済んだし、俺先に行くぞ。」
……………あの
「服を離しなさい。」
「待って。」
「ハァ…今度は何だ?」
「歩くの面倒、おんぶ。」
「何故だ。」
「面倒。」
「………。」
「おんぶ。」
「ああ、もうわかったよ!ほら乗れ!」
別に下心があって言ったんじゃない。“………”の時引っ張ってみたら万力の如く掴まれて絶対に離さないという確固たる意思が伝わってきちゃったんだよ……。
「……よし、ちゃんと掴まってろよ?」
「ん。」
この時まぁこうなるとは思ってたけど、全体重を委ねてきたせいで、その、なんだ、あれだ
倉城サンのツインマウンテンが背中に押しつけられて非常に困った。
べ、別に喜んでなんかいなんだからね!?
とゆーわけで学校です。当然誰も見当たりません。遅刻してますからね。
「てゆーかお前今日転校初日じゃねーのか?」
「…………。」
「無視か!?さっきから自由すぎるぞこの野郎!」
「……すぴー……。」
寝てんのかよ………
「こら!起きろ!着いたぞ!」
「んみゅ………すぴー。」
「こーらこら!今絶対起きたよね!?
あーもう!早く起きろ!そして降りろ!しまいには落とすぞ!?」
「………うるさい。」
「誰のせいだと思ってるんだ!誰の!」
「龍牙。」
「今解った!お前に一番求めてはいけないものは常識だ!」
「龍牙、遅刻。」
「それは今お前が一番言ってはいけない言葉だ!
いいから降りろ!そして靴を履きかえろ!」
「このままでいい。」
「無茶言うな!
ほら早くしろって。」
倉城は渋々といった様子で俺の背中から降りた。
……が、座り込んで動きやがらねぇよこの面倒臭がり屋。
「靴を履き替えんか!」
「嫌。面倒。」
「俺にその要望をしても無駄だ!最低限のマナーさえ守れんのかおどれは!?」
いかん、若干言葉使いがおかしくなってきた。
「じゃあ、龍牙がやって。」
倉城が俺に上履きを差し出してくる。
「拒否すると言ったら?」
「龍牙の背中に乗って行動する。」
「ほら、右足だせ。さっさと変えるぞ。」
ちゃんと変えてあげましたよ?何か文句あっか!