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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第二章 リーファリアへの道編

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095 エヴァルシアへ

 ――三日後。


 俺は、セレナが“エヴァルシア”へ旅立つ前日までに、助けた女性たちがダンジョン踏破で得たスキルをすべて自分に複製しておいた。


 夕食後、翌日の“エヴァルシア”行きについてセレナから話があった。


「私は明日から“エヴァルシア”に向かうのだけど、残念ながら飛んで行くわけにはいかないの。道中の貴族へ挨拶回りをしなきゃいけないから、馬車でのんびり向かうことになるわ」


 本当なら、魔改造した馬車に乗り、ターリアにドラゴンになってもらって運んでもらえば、一時間もかからずに着く。だが普通に馬車で行くのなら、おそらく十日以上はかかるだろう。


「それで同行するメンバーなんだけど、今のところジーナとティアだけなのよね。見た目の問題もあるし、もう少し人数を増やしたいのだけど……誰か一緒に来てくれないかしら?」


 今回は俺は別行動を取るつもりだ。同行者は全員女性で、一人だけ男の俺がいると目立つため、妬み嫉みなど余計な感情を抱かれたりする可能性がある。それに、エヴァルシア到着前日にセレナから連絡をもらえれば、エリュシアかターリアがいればいつでもその日のうちに追いつける。


 ちなみに、〈迷宮の薔薇〉のメディアはリーファリア王国へ行き、魔法建築の技術を学んでくるらしい。あの国の建物はすべて魔法で作られているので、参考になるだろう。


 そこで俺は今回の同行者について消去法で考えることにした。


 まずルビナは鍛冶があるため無理。

 エリュシアは白虎族のシア、青龍族のリオナの面倒を見る必要がある。

 リンファは奴隷のメイド十七人を教育中。

 エルマは元食堂の母娘と元宿屋の母娘たちに料理を教えている。

 ターリアは服飾職人の母娘と服作りの研究中で、多くの人を運べる彼女は念のためこちらに残したい。

 〈蒼薔薇の刃〉の四人はエルセリオン王国の王都エルドラスへ向かい、『エルセリオン地下迷宮』で素材集めをする予定だ。ルビナが使用する魔物由来の武具素材が枯渇しているためだ。


 となると――。


「イレーヌ、リディア。それとヒカル、ミリア。セレナに同行してやってくれないか?」


 するとイレーヌとリディアが口を開く。


「アタシは構わないんだけど……奴隷って見栄えが良くないでしょ?」

「ご主人様、私もイレーヌと同じ意見です」


 なるほど、そういう問題があるのか。


「ヒカルとミリアはどうだ?」


「私は同行してもいいわよ」

「私も問題ありません」


 ヒカルとミリアは快く承諾してくれた。

 あと数人増やしたいところだが、となるとイレーヌとリディアになる。しかし――。


「なあ、イレーヌ、リディア。もう奴隷やめてもいいんじゃないか?」


 奴隷解放条件はとっくに満たしている。ゾンビ討伐の褒賞で残りの奴隷契約期間はゼロになったからだ。


「アタシはこのままが楽なんだけど」

「私もこのままで構いません」


 どうして二人は奴隷のままでいたいのだろう。


「もしかして、奴隷じゃなくなったら俺が変わると思ってる? 俺は何も変わらないぞ?」


 二人は黙り込んだ。

 特別な理由があるわけではなく、単に変化を恐れているだけなのだろう。


「仕方ない。今まで主人として命令したことは一度もなかったが、これが最初で最後の命令だ。俺の奴隷から解放されろ。これは命令だ」


「アレス!」

「ご主人様! そんな……」


「そして、よかったら二人は今晩俺に付き合ってくれ……セレナのあとになるけどな」


 セレナに頼んで解放手続きをしてもらい、二人はようやく黒いチョーカーを外した。しかし終始浮かない顔だった。


***


 その晩、まずはセレナにスキルを複製した。

 結局渡したのは〈雷魔法〉〈変身魔法〉〈調査〉〈分析〉〈契約眼〉〈駆け引き〉〈観察眼〉と、先日セレナが望んでいた分だけだった。


「アレスありがとう。じゃあ、イレーヌとリディアが待っているだろうから、部屋に戻るわね」


 そう言ってセレナは戻っていった。


 数分後、部屋のドアがノックされる。


「あ、アタシだけど……」

「ご、ご主人様、入ってもよろしいでしょうか?」


 二人はやや緊張した様子で部屋に入ってくる。奴隷でなくなっただけで、それ以外は何も変わっていないはずなのに、二人にとっては大きな変化なのだろう。


「あー、一応確認するけど、もう奴隷じゃないんだから、無理に夜付き合う必要はないぞ?」


「なっ!? 誰もそんなこと言ってないでしょ!」

「そうです! ご主人様、その言い方は意地悪です!」


 二人が本気で怒ったので、思わず笑いそうになるのを堪えながら言う。


「ああ、ごめん、ごめん。それとリディア、もう奴隷じゃないんだから『ご主人様』じゃなくて『アレス』な」


 そう言うと、リディアは急にどぎまぎした。


「あ、アレス……さま」


「『さま』はいらないんだけどなあ」


 途端に真っ赤になったリディアが怒る。


「やっぱり“アレスさま”は意地悪です!」


 そう言ってリディアは俺に抱きつき、熱いキスをしてきた。


「イレーヌもこっちにおいで」


 イレーヌともキスを交わし、右腕でイレーヌ、左腕でリディアを抱き寄せる。


「これまで俺を支えてくれてありがとう。イレーヌとリディアのおかげでここまでこれた。だが、俺がやりたいことはまだまだあるんだ。これからもよろしくな。できればこれからも俺と……一生一緒に居てくれ」


 一瞬驚いた表情で固まった二人だったが、


「あ、アレス……それって……」

「……はい。私はあなたと一生添い遂げます」


 イレーヌも慌てて「アタシも一緒に居てあげるわよ!」と言い直したが、その顔は真っ赤だった。


 ◇


 ――翌日。


 今日からセレナたちは領地“エヴァルシア”へ向けて出発する。

 使用する馬車は、セレナ用の普通の箱馬車と、俺が20LDKの広さに魔改造した箱馬車の二台だ。


 屋敷の外で《万紫千紅》全員で見送ると、ヒカルが首をかしげた。


「ねぇ、アレス。イレーヌとリディアに何か言った?」


「え? なんで?」


「あの二人、昨日までと雰囲気が違うのよ。なんか……余裕があるっていうか」


 そうだろうか?

 俺にはよく分からないが、女性から見ると違いが分かるのだろう。


「あんま火遊びすんなよ、アレス!」

「あ、アレスさま、たまに遊ぶくらいなら許しますよ?」


 イレーヌとリディアがそう言うと、ヒカルはさらに詰め寄ってくる。


「やっぱり! 昨晩何かあったでしょ!?」


 とりあえず誤魔化すようにヒカルへキスとハグをし、続いてセレナ、ジーナ、ティアへもキスとハグをする。


「イレーヌ、セレナたちを頼むぞ」


「任せとけ!」


 イレーヌとも軽くキスとハグ。


「リディアも。守ってやってくれ」


「もちろんです」


 リディアにも軽くキスとハグをすると――


「やっぱり……あの二人、余裕がある……」


 ヒカルがぶつぶつ言っていた。


 セレナを残して、“エヴァルシア”組は馬車へ乗り込む。セレナの箱馬車にはジーナ、魔改造した方はリディアが御者を務めるようだ。


「じゃあアレス、行ってくるわね。“エヴァルシア”に着く前日には〈念話〉で連絡するわ」


「ああ、セレナも気を付けてな。まあ、セレナたちに勝てる相手はいないだろうけど」


 セレナが乗り込むと、二台の馬車は連なって北門へと進んでいく。

 馬車の姿が見えなくなるまで、俺たちは手を振り続けた。


「さて、俺はエルセリオン王国の王都エルドラスだな」


 俺はこのあと、〈蒼薔薇の刃〉の四人とターリアのドラゴンの背に乗ってエルドラスへ向かう。

 六人で行く予定だったが、素材不足で手が空いているルビナも三日間の休みを取り、同行することになった。


 エルドラスでは四人へ屋敷の案内と、『エルセリオン地下迷宮』の最初の踏破を説明を兼ねて手伝うつもりだ。ついでにルビナとターリアも踏破に参加させ、新たなスキルを得てもらうつもりでいる。


「アレス様、私はリーファリアに行って参りますね」


 メディアはそう言うと転移魔法陣へと向かった。


 リンファは引き続きメイド教育、エルマは料理指導。助けたヒューマン女性たちは、エヴァルシアですぐに動けるよう準備中だ。すでに彼女たちも《万紫千紅》の一員なので、準備資金はすべてクラン持ちである。


 こうして俺たちは、セレナの領地“エヴァルシア”の発展へ向け、それぞれ動き始めていた。



 現在の《万紫千紅》所属メンバー


 〈百花繚乱〉アレス、イレーヌ、リディア、ルビナ、エリュシア

 〈迷宮の薔薇〉セレナ、ジーナ、ティア、メディア

 〈黎花の翼〉ヒカル、リンファ、エルマ、ミリア、ターリア

 〈蒼薔薇の刃〉カミラ、ヴァレリア、イザベル、リシェル

 〈蒼華白蓮〉シア、リオナ


 商人 オルヴェナ、フィーネ、ソフィア、イリナ

 宿屋 マリサ、サリナ

 服飾職人 エリシア、リリーナ

 食堂 アリシア、リサ

 酒蔵 カトリナ、ノエル

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