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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第二章 リーファリアへの道編

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073 偽装と新生

 夕方。剣術指導も終わり、全員でリビングでくつろいでいると、王城に調査に行っていたエルマが戻ってきた。

 彼女は「昔の知り合いに会う」という口実で王城へ向かったのだが、実際に知人と再会したところ若返ったことに驚かれ、その話題ばかりになってしまい、なかなか騎士団長の件を聞き出せなかったらしい。

 それでもなんとか情報を掴んできたようで、エルマは深刻な顔をして口を開いた。


「騎士団長と一緒にいた二人の騎士、禁止薬物の使用と所持で捕まったって。常習してたらしいよ……どういうことなの、アレス?」


「ああ、それはね――」



 ――昨晩、騎士団長の執務室で。


「これは……だいぶ脳がやられてるな」


 床に倒れていた騎士団長と二人の男を調べながら、俺は呟いた。

 〈スキル複製(性)〉はレベル8でも脳に負荷がかかるが、ヒカルは例の指輪を使っていたはずだ。レベル8は〈脳状態復元(ブレインリストア)〉で修復されているはずなので、この損傷はレベル9の複製によるものだろう。

 ヒカルはレベル10のスキルを得たと言っていた。つまり最低でも、レベル9で得られる“8万640倍の快楽”を九回分受けている計算になる。三人とも同じ症状で、ヒカルが得たレベル10のスキルが三つということは、それぞれからスキルを得たのだろう。


 俺はメディアに〈念話〉を飛ばした。


『メディア、今話せるか?』


『あ、アレス様……! お久しぶりです。私は毎晩さみしく――次こそは子種を――』


『あー、すまん。急ぎの用件だ。そういう話はまた今度な。メディア、“脳にダメージを与えるけど気持ちよくなる麻薬”みたいなもの、作れるか?』


 メディアは今でこそ〈土魔法〉を応用して建築の研究をしているが、本来は〈薬調合[10]〉を持つ世界屈指の薬師だ。


『ええ、可能ですけど……禁止薬物扱いになりますよ? 所持だけでも逮捕される類の薬です』


『構わない。今すぐ作れるか? できればストックも含めて複数ほしい』


『手持ちの材料なら……二十本ほど作れそうです』


『助かる。それをセレナ経由で俺に送ってくれ』


『了解しました。少々お待ちくださいね。……ご褒美、期待してます』


 ご褒美って、子種のことじゃないよな。俺はまだ子どもを作る気はないぞ。


 その後、セレナにも〈念話〉を送っておいたら、十分ほどで薬が届いた。

 一回の使用で一本使い、それだけでも脳に軽いダメージが出るが、一本だけならさほど支障はないとのこと。ただし常習すれば脳が壊れ、生活に支障をきたすレベルになるらしい。


「エリュシア、これを一本ずつそいつらに握らせて飲ませてくれ。空瓶は床に置いておくんだ。ただし、エリュシアは瓶に直接触るなよ」


「わかった」


 俺は執務室の壁に埋め込まれた金庫を〈罠解除〉で開け、十一本の薬を中に入れた。

 残り六本は中身を別の容器に移し、内容物を亜空間で元素分解。六本の空き瓶が残った。


 それを見ていたエリュシアが首をかしげる。


「その空き瓶、どうすんの?」


「ああ、人目につきにくくて、本気で調べれば見つかる――そんな場所に隠す」


「どこだよ、それ」


「さて、どこにするかな」


 部屋を見回していると、エリュシアが何かを発見した。


「アレス! 壁の中に何か隠してある!」


 ……騎士団長、すでに何か隠してたのか。


「なんだ、これ?」


 取り出して確認すると、犯罪の証拠書類らしい。なぜ壁の中に?


「アレス、こっちにもあるぞ」


 別の場所を調べると、今度は帳簿が出てきた。


「ああ、なるほど。賄賂を受け取って犯罪をもみ消してたんだな。……いや、それだけじゃない、脅迫までしてるな」


 思った以上に腐ってるな、この騎士団長。

 空き瓶はこの壁の中に一緒に隠しておこう。壁の蓋はわずかにずらしておく――誰か、気づけよ。


 男たちの服を着せ直し、倒れた位置を整えて、


「あとはこれだな。第九階梯隷属魔法〈記憶改竄(メモリーリライト)〉」


 ほんの一部しか改竄できないが、“ヒカルはここに訪れたがすぐに帰り、その後三人で薬を使用した”記憶を植え付ける。

 すでにだいぶ脳がやられている三人には、やらなくてよかったかもしれないが、念のためだ。


「アレス、それ、えげつない魔法だな……」


「そうだな。第九階梯と第十階梯の魔法はほとんどが禁呪だし、これもそうだろうな」


 まあ、使える人がほぼいない魔法だから、バレないだろう。

 あとは俺とエリュシア、ヒカルの痕跡を完全に消して部屋を出た。ドアは開けたままだ。


 以後は二人とも透明化し、会話は〈念話〉で。


『エリュシア、可愛い悲鳴とか出せる?』


『は? 無理に決まってんだろ!? そんな恥ずかしいことできるか!』


 全力で拒否された。仕方ない、俺がやるか。

 〈バッチ処理〉で“アリス”に変わり――


「きゃー! 騎士団長が! 騎士団長が倒れてるー!」


 と叫んでから、“アレス”に戻る。


『アレス……よく恥ずかしくないな』


『こういうのは思いっきりやれば、案外平気なもんだぞ?』


 その後、王城の門番の部屋にある帳簿に“ヒカルがすぐに帰った”ように退城記録を追記して、俺たちは屋敷へ戻った。



 ――そして、現在。


「……ということを、エリュシアと一緒にやってきたんだ。うまくいったみたいだな。その日ヒカルが入城するところを門番に見られているから、もしかしたら事情聴取はあるかもしれないが、このままいけば、ヒカルは無関係で処理されるはずだ」


「ありがとう、アレス!」


 ヒカルは勢いよく抱きつき、唇を重ねてきた。……この子、案外大胆だな。

 そこへミリアが割り込む。


「こらー、ヒカルー! 今日は()()()でしょ! とらないで!」


「いいじゃない、キスくらい。けちー」


 これがヒカルの素の姿なのだろう。ようやく笑顔が戻ってきてくれて、本当に良かった。


 ――そしてそのあと。

 俺が持つ〈技巧(性)〉スキルの存在をヒカルとエリュシアに暴露され、さらに〈絶倫〉スキルの存在までリンファとエルマからバラされた。

 結果、全員にそれを分け与えることを約束させられた。



 その夜。


「あれ? ミリアもローテーションに入ったのか?」


「えへへ。よろしくお願いします、アレスさん」


 ……“私の番”って、そういう意味だったのか。

 そして……リンファやエルマと同じように、魔力量を倍にしてほしいと言われた。


「んー、リンファは平気だったけど、エルマは途中でギブアップしたぞ。その後、無理やり倍にしたら、朝からめちゃくちゃ怒られた」


「私は大丈夫です! 最後まで絶対ギブアップしません! もし無理そうなら〈強制終了フォースドターミネーション〉でお願いします!」


 約束どおり〈絶倫〉と〈技巧(性)〉を渡し、〈強制終了フォースドターミネーション〉なしで進めたのだが――


「あ、アレスさん……こ、これ以上は、無理かも……」


「じゃあ残りは〈強制終了フォースドターミネーション〉で」


「あ、いや、待って……もう少し……」


 翌朝。ミリアの魔力量は見事に倍になっていた。

 そして彼女は満面の笑みで「またお願いします」と言ってきた。……なんか、変な方向に目覚めさせた気がする。



 翌日。

 俺たちは全員でエルセリオン地下迷宮の地下三十一階にいた。


 〈黎花(れいか)の翼〉のメンバーは全員が強化済み。

 今回の目的は、途中の野営を挟みつつ迷宮の完全踏破だ。


 ヒカル以外の女性陣には、一定範囲内にインキュバスが出現した際、自動で〈催淫〉スキルだけを封印する第五階梯呪魔法〈禁能呪(カースバンスキル)〉を組み込んだ“銀の指輪”を配布済み。状態異常対策は万全だ。ちなみに、地下三十四階から、男性に〈魅了〉を使うサキュバスが登場するが、〈全状態異常無効〉を持つ俺には効果がない。

 全員がSランク上位のスキルを揃えており、この階層の魔物はもはや雑魚同然。

 特にヒカルの成長は著しく、放っておくと一人で全部片付けてしまう。


「ヒカル、そんなに頑張らなくていいぞ。この辺の魔物なら、全員余裕で倒せる」


「なんだか、みんなの役に立てるのが嬉しくて……もう少しだけやってもいい?」


 上目遣いでそう言われたら、断れるわけがない。


「アレス、ちょっとヒカルに甘いんじゃないの?」


 エリュシアに突っ込まれる。否定はできなかった。



 そして地下四十階、ボス――バルログ。

 炎と闇の化身と呼ばれるが、実際は物理戦闘が主体。右手の大剣と左手の鞭で巧みに攻撃し、高速移動に加えて〈火魔法〉を織り交ぜてくる、本来なら厄介な相手だ。


 前回はエルマの第六階梯魔法で瞬殺されたが、今回は――


「アタシが相手だー!」


 と飛び出したエリュシアが、そのまま瞬殺していた。あっけなさすぎる。


 今回はバルログをドロップに変えず、亜空間に収納。新たに〈鞭術〉と〈咆哮(魔)〉のスキルを入手した。


 さらに地下三十一階から三十九階までの宝箱から、宝石類のほかにローブが三着も出た。

 この階層で手に入るローブは「魔法使いのローブ」「強化魔導ローブ」「エレメンタルローブ」の三種だが、入手したのはすべて最上位のエレメンタルローブ。

 すでにエルマが着ているため、残りはアストラニア王国のセレナたちへ送っておいた。

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