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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第二章 リーファリアへの道編

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066 若返りの賢者と水色の騎士

 屋敷に戻り、さっそくリンファの剣術指導を始めた――が。


 すでに〈短剣術[8]〉を持つリンファの上達は異常に早く、あっという間に一通りの型を覚えてしまった。

 打ち込み稽古をしてもすぐにコツをつかむので、初日だというのにもう試合稽古まで進んでいた。

 一応、明日と明後日も教えてほしいと言われているが……正直、今日だけで十分なんじゃないだろうか。


 稽古が終わったあと、屋敷全体――外壁から地下の基礎部分までを空間魔法で包み込み、〈修復(空間)〉で一気に修理した。結果、屋敷は完全に新築状態になった。


「アレス様、こんなことまでできるのですね……」


 作業を見ていたリンファは、ぽかんと口を開けたまま屋敷の中を隅々まで見て回る。

 全体を修理したので、屋敷の中にあった家具や調理道具などもすべて新品同然になっている。


 しばらくして、ショッピングに出かけていた三人も戻ってきた。


「え? どういうこと? アレス、何かした?」


 エルマがそう言って屋敷中を調べ回る。


「全部新品になってるじゃないの……」


「ああ、スキルで修理しておいた」


「すごいスキルがあるもんだね……」


 エルマは呆れたようにため息をつく。ヒカルも同じく驚いていたが、エリュシアまで目を丸くしていたのは少し意外だった。


「あれ? エリュシアにはこのスキル見せただろ? 着てた服、新品にしたじゃないか」


「いや、規模が違いすぎるだろ……」


 せっかくなので、〈黎花(れいか)の翼〉の三人が着ていた冒険者装備も新品にすることにした。

 三人には一度ほかの服に着替えてもらい、預かった装備をすべて修復して返した。



 その夜。エルマの作る美味しい夕食を食べ、大きな風呂を堪能したあと、俺は自室で待機していた。

 この屋敷は買い取って《万紫千紅》の拠点としたので、広すぎて今まで誰も使っていなかった一番広い部屋を、俺が使うことになっている。

 十人が寝られるほどのベッドを置ける広さだが、例の巨大ベッドはアストラニア王都の屋敷に置いてきたままだ。特注でもう一つ作るか――そう考えていたとき、扉がノックされた。


「アレス。あたしだよ。入っていい?」


 声の主はエルマだった。扉を開けて中へ招き入れる。

 昨日のリンファと同じように、エルマもパジャマ姿だ。だが、彼女の身体は曲線がはっきりしていて、ただのパジャマでも妙に色っぽく見える。


「アレス、あんまりジロジロ見るもんじゃないよ。あたしだって恥ずかしいんだから」


 エルマは頬を少し赤らめ、気まずそうに笑った。意外とこういうのに慣れていないらしい。


 リンファのときと同じように、ベッドに並んで座って話をする。


「そういえばエルマは十歳くらい若返らせたけど、問題ないのか?」


 俺はもっと騒ぎになるかと思っていたのだが、


「ああ、どうやって若返ったのか聞かれるのがちょっと面倒なくらいさ。いずれ誰も気にしなくなるだろうし」


 エルマはあっけらかんとした口調で答える。

 若返れるなら、それくらいは気にならないらしい。体も軽くなって、動きやすいという。確かに以前よりずいぶん体が締まったからな。


 続いて、どんなスキルを望むのか尋ねると、ヒカルを支えるために「どんな状況でも魔法で解決できるほど強くなりたい」と言う。

 ならば、俺の持つ〈聖魔法〉以外の全魔法を渡すことにした。


「あ、エルマ。渡したいものがある。一つがこれ」


 俺は彼女に球形の宝石を手渡す。


「アレス、これは……?」


 アクアマリンに第九階梯水魔法〈獄波(メイルシュトローム)〉を魔法陣化して付与したものだ。杖の宝石をこれに換えれば、魔法が大幅に強化されるはずだ。


「あと、これも」


「銀の指輪?」


 それは第五階梯呪魔法〈禁能呪(カースバンスキル)〉を組み込んだ指輪で、一定範囲内にインキュバスがいた場合、インキュバスの〈催淫〉スキルだけを封印できるようにしてある。

 この指輪はその都度魔力を消費するので、本来なら地下四十階以降の宝箱で手に入る〈催淫無効の指輪〉が理想だが、それまではこれで代用してもらう。


「それと、これもあげる」


 先日のダンジョン攻略で手に入れた〈エレメンタルローブ〉だ。アストラニア王国にいる《万紫千紅》のメンバーも使用する予定だが、それはまた入手すればいい。まずは彼女に渡す。


「ありがとう、アレス!」


 そう言って抱きついてくるエルマは、年相応の落ち着きを持ちながらも、とても魅力的な女性だった。

 そのままそっとベッドに倒すと、急に落ち着かなくなったが……まあ、昨日のリンファのときと同じように、まずは恒例の“永久脱毛”から始めれば大丈夫だろう。


「じゃあ、あとは俺に任せて」



 エルマ ヒューマン 三十八歳

 Bランク冒険者


 所持スキル:

  火魔法[8] ↑UP

  水魔法[8]

  土魔法[8] ※NEW

  風魔法[8] ※NEW

  闇魔法[8] ※NEW

  氷魔法[8] ※NEW

  回復魔法[8] ※NEW

  生活魔法[8] ↑UP

  隷属魔法[8] ※NEW

  空間魔法[8] ※NEW

  波動魔法[8] ※NEW

  性魔法[8] ※NEW

  植物魔法[8] ※NEW

  呪魔法[8] ※NEW

  身体強化[8] ※NEW

  魔法付与[8] ※NEW

  魔法陣付与[8] ※NEW

  魔法陣生成[8] ※NEW

  鑑定[8] ※NEW

  料理[8] ↑UP

  裁縫[8] ↑UP

  美容[8] ※NEW

  全スキル経験値アップS ※NEW

  アイテムボックスS ※NEW

  饗膳恩寵

  無詠唱

  強靭 ※NEW

  念話 ※NEW

  魔力常時回復 ※NEW



 《饗宴の賢者》の名に恥じないよう、〈聖魔法〉以外のすべての魔法を渡した。

 一気に増えた魔法を把握するのは大変だろうが、〈鑑定〉を付与しておいたので第八階梯までのプリセット魔法は確認できるはずだ。

 さらに〈身体強化〉で行動力も底上げしてある。〈複合魔法〉まで渡したらセレナに怒られそうなので、そこは自重した。


 翌朝。

 柔らかい感触に包まれながら目を覚ますと、裸のまま俺に抱きついて眠るエルマの姿があった。


「こうして見ると、俺と同じくらいの歳にも見えるな」


 童顔気味の表情がそう感じさせるのか、眠る彼女は十代後半にしか見えなかった。

 なんとなく頭を撫でていると、ぼんやりと目を開けたエルマが俺を見て――


「な、なにしてるんだい! こんなおばちゃんの頭を撫でるなんて!」


 顔を真っ赤にして抗議してくる。


「エルマ、今はもう“おばちゃん”じゃないだろ。早く慣れてくれ」


 軽く唇を触れ合わせると、彼女の顔は一気に真っ赤になり、布団にもぐり込んだ。


「と、年上をからかうもんじゃないよ!」


 ……どうやらエルマはかなり初心らしい。それは昨晩で十分にわかっていたけど。



 美味しい朝食を食べた後、俺はヒカルを呼び止めた。


「今日もリンファに剣術を教えるんだが、ヒカルも一緒にやらないか?」


「わ、私は剣は一切使えないから……習っても意味がないと思う……」


「ああ、〈全スキル経験値アップS〉のことも教えられていないのか」


 このスキルは通常の千倍の経験値を得られる。

 一日でも剣を振れば、ほぼ確実に〈剣術[1]〉が生える。三ヶ月でレベル6、一年半でレベル7、十年ほど続ければレベル8にも届く。関係を持たなくてもスキルを得ることはできるのだ。


「始めるなら今からでも全然遅くないぞ」


「わ、わかった。やってみる」


 ヒカルもリンファと一緒に、俺から剣術を習うことになった。



 リンファには〈短剣術〉、ヒカルには〈剣術〉を教える。

 リンファは基礎をマスターしているので、あとは実戦経験だ。エリュシアに模擬戦相手を頼み、俺はヒカルをマンツーマンで指導する。


 エルマはその間に料理のストックを作ると張り切っていた。


 ヒカルは完全な初心者なので、今日の内容は素振りと型の練習だけ。

 真面目な彼女は、俺の説明を真剣な眼差しで聞き取っている。この調子なら、今日中に〈剣術〉スキルが生えるだろう。


 屋敷の庭で稽古をしていると――


「こんにちはー」


 少しおとなしそうな女の子の声が聞こえた。玄関のほうで、どうやらエルマが応対している。


 しばらくして、エルマが一人の少女を連れてきた。


 まだ十代のあどけなさを残した顔立ちで、淡い水色の髪が陽光を受けてやわらかく揺れ、肩のあたりでふわりと跳ねる。まるで澄んだ湖面の波のように静かで、見る者の心を穏やかにする。

 青い瞳は誠実さを湛えているが、その奥にわずかな不安の影を宿していた。

 王国騎士団の装備に身を包んでいるものの、甲冑は最小限。磨かれた胸当ての銀がきらりと光っている。

 姿勢は真っすぐで、訓練を受けた者らしい凛とした気配を放っている――が、胸の前でそっと手を組む仕草は、どこかぎこちなく、初対面の緊張を隠せていなかった。


「この子はミリア。ヒカルのお友達だよ」


 エルマに紹介された少女は、俺を見ると少し肩をすくめて小さく会釈した。


「ミリアです。初めまして」



 ミリア・アズール ヒューマン 十九歳

 エルセリオン王国騎士団 騎士


 所持スキル:

  生活魔法[4]

  剣術[3]

  盾術[3]

  騎馬[3]



 (ん? 騎士にしてはずいぶん弱いな。王国騎士団ってこんなものなのか?)


 話を聞くと、王城に出勤した途端に急に非番を言い渡され、そのままここへ来たらしい。だから騎士装備のままなのだという。


「今、ヒカルとリンファに剣術を教えてるんですけど、よかったらミリアさんも一緒にどうです?」


「ぜひ!」


 ミリアは、太陽のように眩しい笑顔で答えた。

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