013 気の強そうな美人と実験
牢屋の中を見ると、騒ぎ疲れたのか、お姉さんは牢屋の壁にもたれて座り込んでいた。――先に〈鑑定〉しておくか。
イレーヌ ヒューマン 二十二歳
Cランク冒険者
所持スキル:
短剣術[4]
罠探知[3]
罠解除[3]
窃盗[4]
気配察知[3]
気配遮断[3]
イレーヌっていうのか。まさか冒険者とは思わなかった。
しかもスキルは〈短剣術〉以外、俺が持っていないものばかり。これは当たりを引いた気分!
「アンタ……アタシをどうするつもり? 何されても、絶対に口なんて割らないから!」
ん? 何の話だ?
「いえ、別にしゃべってもらう必要ないですよ」
「くっ……コイツ、拷問慣れしてやがる……」
なにか勘違いしているようだが、このあと“拷問っぽく”なるのは間違いではない。
「あ、そうそう。これからはお姉さんのこと『イレーヌ』って呼ぶね。呼び捨てでもいいでしょ?」
「……ちっ、〈鑑定〉持ちね。好きにすれば!」
「ふーん。じゃ、なにから試すかな」
「くっ……」
そういやもう一つ、拘束できそうな魔法があったな。たぶん今後使う機会がないから使ってみるか。
「――第六階梯性魔法〈触手生成〉」
いわゆる“触手がうにょうにょ”の魔法。ところが――
「ん? 範囲指定が必要なのか?」
仕方ない。牢屋の外から、イレーヌがいる床二メートル四方を指定して、もう一度。
「第六階梯性魔法〈触手生成〉!」
「な、何よこれ! 離しなさい! ふざけ――んぐっ!?」
百本くらいのスライムを細長くしたような触手が床から出てきたと思ったら、イレーヌの手足を空中に拘束して、さらに一本が勝手にイレーヌの口の中に入っていった。
「あ、あれ? おかしいな? 俺は拘束するイメージしかしていないはずなんだけど? あれ? 勝手に動く?」
触手は次第にイレーヌの服の中へ潜り込み、好き勝手にうごめき始める。
「ちょ、ちょっと待った! この魔法キャンセル! 止まれ! そこは入っちゃダメだって! 待て、動くな!」
なんなんだこの魔法! 全然言うことを聞かない!
――五分後。
魔力供給を止めても、触手はしばらく暴れ続け、ようやく消えてくれた。
解放されたイレーヌは、すでにぐったりしている。
「あ、ごめんイレーヌ……さっきのナシで」
「ナシってなによ!? しっかり喰らったじゃない! でもしゃべる気はないわ!」
あ、思ったより元気だった。
今度は〈部分収納〉で手首と足首だけ拘束して、俺も〈空間転移〉で牢屋の中へ。イレーヌをベッドに固定する。
「このエロガキ! タダで済むと思わないでよ! クソが!」
相変わらず口が悪い。
「とりあえず、服と下着は回収しますね」
「アンタ……絶対に許さないんだから……!」
ひょいひょいと亜空間に回収して、イレーヌはあっという間に素っ裸になった。
「ん? ムダ毛?」
「うるさいっ! ほっときなさいよ! 見るんじゃないわよ、このガキ!」
そういやヘレナさんも定期的に処理してるみたいなことを言っていたな。永久脱毛とかできたら楽だろうに……やってみるか。だいぶ寄り道している自覚はあるが、思いついたら試しておきたい。たぶん気軽に試せる機会は今しかない。
「――第七階梯性魔法〈感覚変更〉」
痛みを快楽へ変更。毛を抜いたらチクッとするからね。
それから〈空間把握〉でイレーヌの腕に生えているうちの一本の毛だけ毛根まで把握、第十階梯生活魔法〈念動〉で毛根ごと引っこ抜き、仕上げに第一階梯回復魔法〈治癒〉で毛穴の傷を治す。
「……一本抜くだけでけっこう面倒だな。範囲指定できる〈バッチ処理〉でも作るか」
ちゃちゃっと作った〈バッチ処理〉で顔の辺りから脱毛を開始。眉やまつ毛まで消えたら困るので慎重に。イレーヌの顔は赤くなってきたが、まだ睨む余裕はあるようだ。
「顔は終了っと。あとは面倒だから全部いっぺんでいいか。首から下全部範囲指定して……〈バッチ処理〉実行!」
「うわぁぁぁ!!」
全部いっぺんはさすがに刺激が強すぎたらしい。イレーヌは痙攣していた。
そして俺には――スキル〈美容[1]〉が生えた。こんなに簡単に生えるのは、勇者からもらった〈全スキル経験値アップS〉のせいかもしれない。しかし俺の場合、〈美容〉の使い道が脱毛くらいしかなさそうだ。
「さて、イレーヌ。だいぶ寄り道したけど、ここからが本番です」
「はぁ、はぁ……ふざけないで……! 絶対に……負けないんだから……!」
まずは「人がどこまで耐えられるか」の実験だ。もっと正確に言えば「この世界のヒューマンがどこまで耐えられるか」。こんな世界だ、元の世界の人間よりも耐久力が高いのではないかと思っている。元の世界の人間が何倍の快楽まで耐えられるのかは知らないが。
さて、前にも言ったが快楽の倍率はスキルレベルごとに以下のとおり。
レベル1:等倍
レベル2:2倍
レベル3:4倍
レベル4:12倍
レベル5:48倍
レベル6:240倍
レベル7:1440倍
レベル8:1万80倍
レベル9:8万640倍
レベル10:72万5760倍
まずは2倍から試すが、念のため、毎回始める前に第五階梯回復魔法〈脳状態保存〉で脳の状態のバックアップは取っておく。
そして普通にはしない。第八階梯性魔法〈強制終了〉を使う。
これは強制的に中断・終了するというものではなく、強制的にフィニッシュさせるという無理やりゴールさせる魔法だ。
〈スキル複製(性)〉は「二人ほぼ同時にフィニッシュしないとスキルが発動しない」という仕様があるので、〈強制終了〉をイレーヌにかけ、俺にもかける。これを使えば一度の〈スキル複製(性)〉が秒で終わる。
そして毎回最後に、不可抗力で作ってしまった〈精力回復〉をイレーヌにかける。俺はオークからもらった〈絶倫〉がレベル6にまでなっているので不要だ。
今回は〈スキル複製(性)〉の他にいろいろスキルを使うので、すでに〈バッチ処理〉は準備済。実行する前に「どのスキルをレベルいくつで複製するか」選ぶだけで、あとは自動で処理される。
それと、これは後でやるメインの実験の肝になるんだが、〈スキル複製(性)〉は双方向でできるのだ。つまり俺からイレーヌにも渡せる。しかし、この時も快楽の倍率を受けるのはイレーヌのみ。……がんばれ、イレーヌ。
すでに第二階梯性魔法〈排卵調整〉で避妊はしてある。
――では、実験開始だ。
◇
結論から言うとレベル8(1万80倍)まではいけた。
ただし、この段階で初めて脳にダメージがあったので〈脳状態復元〉してある。なのでレベル9以降は試していない。
そして〈脳状態復元〉されると、バックアップしたときの脳の状態に戻る――記憶もその時点に戻るのだ。イレーヌにとって「レベル8の実験」は存在しなかったことになっている。
この魔法は……犯罪に使えてしまう……いや、被害者がまったく被害を認識していない状態を犯罪と言うのか? だが、加害者(俺)が加害を覚えている以上、これは確かに“加害”だよな……。バレなきゃ犯罪じゃないって考えはよくないぞ、アレス。自分を戒めよう。
ただ、今後もイレーヌに対して使うことは変わらないが。
あと、途中で「イレーヌに〈絶倫[6]〉渡せばいいじゃん」と気づいたので、レベル6の実験はそれでやっている。たしかレベル6のときは声も出さずに凄まじく痙攣していた……と思う。
ここまで、実験開始から二十分もかかっていない。
イレーヌの息が整うのを待つ時間のほうが長いので、それを無視すればもっと短縮できる。ただ、次の実験のほうがメインなので、大事に扱わないと。
「さてイレーヌ。次の実験だよ。さっきまでのはまだ序の口なんだから」
「……あ……う、嘘……でしょ……」
なにせまだ七回しかしていない。次の実験はこんなもんじゃない。
◇
『〈スキル複製(性)〉は双方向で行える』
この仕組みを利用すれば、スキルレベル上げは、もっと簡単にできるはずだ。
ヘレナさんのときに試さなかったのは、単純にどこまでのレベルに耐えられるか未知だったこと。そして――「相手のスキルレベルも上がる」からだ。これに気づかれたら〈スキル複製(性)〉の存在を隠せなくなる。
具体的に何をするのかというと、例えば俺が持っている〈料理スキル[5]〉の場合――
1.アレスからイレーヌへ〈料理スキル[5]〉複製。イレーヌが〈料理スキル[5]〉を得る。
2.イレーヌからアレスへ〈料理スキル[5]〉を四回複製。アレスの〈料理スキル〉が『6』になる。
3.アレスからイレーヌへ〈料理スキル[6]〉複製。イレーヌが〈料理スキル[6]〉を得る。
4.イレーヌからアレスへ〈料理スキル[6]〉を五回複製。アレスの〈料理スキル〉が『7』になる。
……というサイクルでレベルを上げ続けられるはずだ。
ちなみに、今まで通りヘレナさんが相手だと、レベル6までに後二十日かかる。さらにレベル6からレベル7にするには、ヘレナさん相手だと三百日かかる。だが、この実験の方法だとイレーヌの休憩を入れても三十分くらいで終わるのだ。
試すしかない。
脳へのダメージを考えると、まずは俺のスキルレベルが『8』になるまで。
この実験がうまくいくなら、今日は初日だから控えめに……あと二十四回くらいでいいかな――。




