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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第三章 エヴァルシア開発編

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132 家と仕事と夜の店

 エヴァルシアに戻った俺は、午後から農家の家屋の設置と畑作りに取りかかった。今日を含めて四日あれば、農業区の整備は終わるだろう。

 イレーヌとリディアには、農家用とは別に居住区用の家屋が二百以上共有空間に入っているので、それを使い、居住区に住宅展示場を作ってもらい、農家を希望しなかった百十世帯に家屋を選んでもらうことにした。ひとまずテント生活からは脱してもらい、仮住まいとしてそこへ移動してもらう形だ。

 それぞれの家屋を建てる最終的な場所は、農業区の整備が終わってから決める。指輪や腕輪を渡す前に移動されると、何かと面倒になるからだ。しばらくは住宅展示場で我慢してもらうことにした。


 森から救助した住民のうち、二十人は森へ避難するまでは街の衛兵をしていたらしい。

 避難計画の際には、護衛として自分たちの家族と一緒に参加していたそうだ。セレナは彼らをそのままエヴァルシアの衛兵にすることを決めたが、衛兵隊長が十八歳のジーナだと聞いて、当初はかなり舐めた態度だったという。

 だが結局、ジーナは模擬戦で彼らを力でねじ伏せ、隊長としての地位を確立したらしい。もっとも、衛兵としてのノウハウは彼らのほうが豊富なため、その意見も十分に取り入れながら、これからエヴァルシアの衛兵としての規則を定めていくそうだ。


 また、避難計画一回につき、一人の僧侶が同行していたという。第六次まで実行されたため、救助した住民の中には六人の女性僧侶がいた。

 彼女たちはそのままティアのもとでエヴァルシアの教会に勤めることが決まったが、精神的な意味で“治療”が必要な状態だという。いずれその際には〈回復魔法〉と〈性魔法〉を与えておこうと思っている。

 メディアの作った教会は、まだ外観しか見ていないが、おそらくアストラニア王国一の規模だろう。王都の教会でさえ、ここまで立派ではなかった。それに付随する孤児院も、二棟合わせて百部屋を有する元貴族屋敷だ。これほどの教会と孤児院の組み合わせは、大陸中探してもここだけだと思う。

 すでに子供たちはこちらへ引っ越してきており、先生役をしている〈緋桜(ひざくら)守人(もりびと)〉の三人も移り住んでいる。そのため、現在王都の《万紫千紅》の屋敷に残っているのは、レオンの家族三人だけだ。


 ルビナはエヴァルシアの屋敷に部屋をもらい、今後は転移魔法陣を使って王都へ通うことにしたそうだ。


 商会長オルヴェナが率いるエヴァルシア商会は、五人の子供と十六人のエルフを含め、総勢二十五人になる。彼女たちの住居はまだ用意できていないため、現在は空いている孤児院の一棟を丸ごと使わせている。こちらも早めに、従業員用の建物を建てるべきだろう。


 リンファが率いるメイドたちは、メディアが屋敷とは別に建てた使用人用の建物に部屋が用意されており、そこに住んでいる。ただし、奴隷メイドについては、俺が魔改造した馬車のほうに押し込んでいるらしい。

 奴隷メイドはすでに二十五人おり、地下牢には違法奴隷商四人と、モルドレイおよびその男性使用人計三十一人、さらにモルドレイの妻が残っている。

 セレナは、これを全部娼婦にするつもりなのだろうか。さすがに多すぎる気もするが。


 そんなことを考えていると、セレナから〈念話〉で執務室に来るよう呼び出しがあった。部屋に入ると、夕方にもかかわらず、書類と格闘しているセレナの姿があった。


「ああ、アレス。ソファにでも座って待ってて。すぐ行くから」


 ソファに腰を下ろすと、文官と思しき女性が紅茶を淹れてくれた。昨日、雇うと言っていた元モルドレイの文官だろう。他の四名もよく見ると、揃いの綺麗な制服を着ている。

 ボロボロの服を着ていた彼女たちを見かねて、ターリアたちが大急ぎで用意したのだろう。髪型まで綺麗に整えられている。もしかすると、イレーヌの手も入っているのかもしれない。


「あ、アレス。待たせたわね。明日の朝なんだけど、娼館に使える建物を商業区に建ててほしいの」


「え? もう娼館を建てるのか? まだ救助した住民しかいないだろ?」


「それがね、住民からの要望なの。まあ、当たり前だけど男性からのね」


 そうなのか。避難民も奴隷も家族単位だったから、妻のいる男性ばかりだと思っていたんだが……。


「森に避難していた人たちは七年も森で暮らしていたでしょう。その間に大人になった独身の若い男性もいるわ。まあ、希望しているのは既婚者もいるんだけど。男って、食欲や睡眠欲が満たされると、次は性欲になるのね。呆れたわ……」


 なぜか俺が責められているような気分になるが、まあ、そういうものなのかもしれない。危険な状況を乗り越えると、安全になった途端に子孫を残さねば、という心理が働き、性欲が高まると聞いたこともある。


「でも今は、食料の現物支給だろ? 娼館の利用料はどうするんだ?」


「少し手間はかかるけど、現金支給に切り替えるわ。配っていた食料は、商会の店舗で購入してもらう形にするの」


「なるほどな……。でも、あの奴隷メイドたち、いきなり娼婦なんてできるのか?」


「ああ、それはね。自分が女性にしてきたことを、率先してやるよう命令してあるから、なんとかなるはずよ」


 それって女性にエグイことしていたやつは、自分からエグイことやることにならないか? 本当に大丈夫なんだろうか。


「客が気に入らなければ、チェンジすればいいだけよ。代わりはいくらでもいるわ」


 たしかに、地下牢の残り全員を娼婦にするなら、合計六十一人か。やっぱり多いな。


「なあ、セレナ。地下牢の連中、全員娼婦にするのか?」


「まだ悩んでるわ。多少増やしてもいいけど、今、六十人もいらないと思うし。メイドにしておけば他の仕事も頼めるから、とりあえず奴隷にしてメイドにするところまでは進めるつもりよ」


 なるほど。細々した雑用も多いし、奴隷メイドも意外と役に立っているのかもしれない。


 ◇


 翌朝。

 早朝から俺とセレナ、リンファ、そして商会長のオルヴェナは、エヴァルシアの商業区に集まっていた。

 俺は今日は一日、農家の家屋と畑作りの続きをしなければならないため、時間が取れるのは早朝だけだったのだ。


「たぶん、貴族の屋敷か大きな商会の店舗を改造すれば、娼館にはできると思う。とりあえず、目ぼしいものを出すぞ」


 俺は商業区の空き地に、元貴族の屋敷や店舗を次々と並べていった。


「アレス、まだこんなに持っていたの? ずいぶん集めていたのね」


「ああ。古い建物を壊して、新しく建て直したいってところが多かったからな。結構集まった」


 二十棟目を出したところで、セレナが俺の手を止めた。


「もういいわ。これ以上あると目移りしちゃう。この中から選ぶわ」


 セレナ、リンファ、オルヴェナの三人が外観と内部を確認し、娼館に使えそうな屋敷を選び出した。


「これをね、本通りから少し裏に入ったところに置きましょう」


「ん? どうしてだ?」


「娼館に入るところって、あまり人に見られたくないんじゃないの?」


 たしかに、その通りかもしれない。もっとも、今はこの建物だけがぽつんと建っているから、逆に目立ちそうだが。


「アレス、あとはこっちで準備するわ。ありがとう。次はリンファとオルヴェナのお願いを聞いてあげて」


 どうやら、まだ用件があるらしい。


「リンファのほうは?」


「はい。以前お願いした、音楽関連のスキルを持つメイドのエルフ四人ですが、王城地下迷宮の地下四十階まで到達しました。地下四十一階以降のサポートを、どこかでお願いできないかと」


「それなら、今日リディアとイレーヌに頼んでみるか。たぶん、今日中に踏破できると思うぞ」


「本当ですか! ぜひお願いします」


 俺はその場でリディアとイレーヌに〈念話〉を送り、エルフのメイド四人のダンジョン踏破のサポートを頼んだ。


「で、オルヴェナのほうは?」


「はい。先ほど出していただいた屋敷の中で、一番大きいものを、商会の寮として使わせていただけませんか?」


 娼館候補として出していた屋敷や店舗は、まだ亜空間にしまっていなかった。


「ああ、構わないが、居住区に建てるんだよな?」


「はい。そこから転移魔法陣で王都に通いますので、できればセレナ様の屋敷の隣がいいのですが」


 元貴族の屋敷なら、隣に並んでいても違和感はないだろう。


「わかった。これから居住区に行って建てておく」


「ありがとうございます」


 俺は使わない屋敷と店舗を亜空間にしまい、居住区へ戻って、エヴァルシア商会の寮となる屋敷を建てた。

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