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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第三章 エヴァルシア開発編

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122 新たな迷宮とSランク

 ――アンデッド迷宮 ダンジョンコアルーム


 まず、俺たちは新たなスキルを得た。


 【貰ったスキル】


 アレス

  スキル:〈時間操作(空間)〉 亜空間内の任意領域において、時間の流れを自在に操れる。その区画に限り、小さなものであれば生命体を生きたまま格納することも可能。


 イレーヌ

  スキル:〈美療[1]〉 肌・髪・体型を美しく整えるための施術を行うスキル。


 リディア

  スキル:〈???〉 ???


 エリュシア

  スキル:〈覚醒進化〉 特定の条件を満たすことで上位種族へと進化する。進化が完了すると、このスキルは消失する。



 ふと横を見ると、リディアが何かに慌てた様子を見せていた。


「リディア、どうした?」


「あ、アレスさま、見ないで! 見ないでください!」


「どうしたんだ、リディア」


「と、とにかく目を! 目を(つむ)ってください!」


「わ、わかった」


 言われるがまま、俺は目を(つむ)った。

 しばらくしてから、


「もう大丈夫です」


 と声がかかり、目を開ける。


「……何があったんだ?」


「その……誰にも見られたくないスキルを入手してしまったのです。〈ステータス情報改竄〉で隠しました」


 なるほど、そういうこともあるのか。

 〈ステータス情報改竄〉で隠された情報は、俺にも見えない。つまり、誰にも知られないというわけだ。

 本人が隠したいと言うのなら、無理に詮索するつもりはない。



「レオン、セレナ。待たせたな。ダンジョンコアに触れればいいのか?」


『そうよ。ダンジョンコアに触ってみて』


 マイクはセレナが持っているらしい。

 ダンジョンコアに触れると、半透明のスクリーンが空中に出現した。


 ……すげえ。未来の技術みたいだな。


「結構、細かく設定できるみたいだぞ。ダンジョンの外観は石造りでいいのか?」


『そうね。それが一番ダンジョンポイントが少ないんでしょ?』


 ダンジョンポイント?

 疑問に思いながらスクリーンを見ると、確かに外観の種類ごとにポイント表記がある。

 ダンジョン全体で使用できる上限があるのだろうか。まあ、その辺は向こうに任せておこう。


 セレナの指示通り、ダンジョン構成を調整していく。しかし――


「……え? 地下四十一階から、極端にきつくないか? これ、ほとんどの冒険者が踏破できないだろ」


『そういうふうに、国のお偉いさんから言われたのよ。“ほとんど踏破できないダンジョン”にしてくれって』


 マジか。

 これ、踏破できるのは俺たちくらいじゃないか……?


「あ、ちなみに聞きたいんだが。このダンジョンを最初に踏破した人間は、未踏破ダンジョンの踏破扱いになるのか? 例えば、俺たちでも」


 少し間を置いて、セレナから返事が来た。


『なるそうよ。アレスたちが踏破しても未踏破扱いになるって。だって、どう考えても“アンデッド迷宮”だった頃より難易度が上がってるでしょ』


 確かに。

 これよりきついダンジョンとなると、ヒヒイロカネゴーレムやアダマンタイトゴーレムが出現する『石喰いの巣』くらいだろう。


「そういえば、このダンジョン、名前は決まったのか?」


『“エヴァルシア迷宮”。別名《七色竜のダンジョン》よ』



 その後、セレナからマイクを借りたガルドが、


『Sランクの手続きをする。近いうちに王都に来い』


 と言ってきたので、


「じゃあ、ダンジョンを出たら〈空間転移(テレポート)〉で王都に向かう」


 そう告げ、カメラの魔力を切った。

 それを聞いていたイレーヌが、首をかしげる。


「あれ? “転移魔法陣”は使わないの?」


「使うけどな。“転移魔法陣”の存在は、まだ秘密にしておく。誰でも使えると知れたら、依頼が殺到するのは目に見えてるからな。それに――誰もが使える転移魔法陣を設置したら、仕事を失う人も出てくる。例えば、冒険者が請け負っている貴族や商人の護衛任務なんかは、真っ先になくなるだろう」


 さらに言えば、この能力はエヴァルシア商会が軌道に乗るまでは、商会長であるオルヴェナが独占すると言い出すはずだ。

 他人に使わせたら、烈火のごとく怒られる未来しか見えない。


 ◇


 ダンジョンを出た俺たちは、そのまま転移魔法陣で王都の《万紫千紅》の屋敷へと移動し、冒険者ギルドへ向かった。


 ギルドの扉を開けた瞬間、盛大な拍手が巻き起こる。

 だが、それはすぐに、


「エリュシアさーん!」

「エリュシアー!」


 という声援にかき消された。


 そういえば、王都はもともとエリュシアのファンが多い場所だ。

 今日の映像で、さらに増えただろう。


 あまりにも恥ずかしそうにしているエリュシアを見て、俺たちは急いで指定されていた会議室へと入った。


「お? レオン、セレナ。待っていてくれたのか?」


「ああ。Sランク昇格の瞬間なんて、滅多に見られないからな」


 レオンと堅く握手を交わし、指定された椅子に座る。

 そこで、ガルドが口を開いた。


「さっきまでエヴァルシアにいたと思ったら、もう王都か。〈空間転移(テレポート)〉は本当に便利だな」


「まあな。これには、かなり助けられている」


 この話題は長引かせたくないので、軽く流す。


「では本題だ。アレス、エリュシア。お前たちは見事だ。Sランク昇格条件を満たした冒険者が出たのは、十年ぶりだ。おめでとう」


 そう言って差し出されたのは、プラチナ製のSランクカードだった。


「それから――イレーヌ、リディア。お前たちもだ。ゾンビ討伐の戦果が、ダンジョン踏破一回分と等価だと国が認めた。よって、お前たちもSランク昇格だ。おめでとう」


 ……なんと。

 イレーヌとリディアまで、同時にSランクになった。


「本来、Sランク冒険者が一人でもいれば、そのパーティはSランクパーティと呼ばれる。だが、一つのパーティに四人Sランクがいるのは、久々かもしれんな」


 ん? そうなのか? 疑問に思った俺はガルドに聞いた。


「普通、パーティ全員が同時にSランクになるもんじゃないのか?」


「お前たちが全員強すぎるだけだ。普通は、メンバー間の実力差が大きいもんだ。Sランクになるような活動を続ければ、死人や引退者が出るのが当たり前なんだ」


 だから、とガルドは続ける。


「今この国のSランクパーティでも、一パーティに二人いれば多い方だ」


 なるほどな……。

 無茶をして、ようやく辿り着く場所がSランクというわけか。


「さて、昇格の話はこれで終わりだ。何か質問はあるか? 今日は機嫌がいいから、何でも答えてやるぞ」


 どうやら本当に機嫌がいいらしい。


「じゃあ、三つほど聞きたい」


「いいぞ。なんだ?」


「一つ目。ヒヒイロカネ、アダマンタイト、オリハルコン。これをダンジョン以外で入手する方法はあるのか?」


 ヒヒイロカネまでは、今ならダンジョンで何とかなる。

 だが、アダマンタイトまであれば、『石喰いの巣』の攻略は格段に楽になる。

 ガルドが答える。


「ヒヒイロカネは火山地帯で産出される鉱石だ。以前は、ドワーフの国ヴァルグラント王国で採掘されていたらしい」


「以前は?」


「ああ。今は掘られていない。理由までは知らんが、現在は誰も入手できない金属だそうだ」


 そこまで希少なのか。


「アダマンタイトとオリハルコンについては、残念ながら不明だ。王城の宝物庫に欠片があるという噂くらいしか聞かん。武具が作れるほど保有している国はないだろう」


 なるほど。

 だからこそ、ダンジョンで採れるようにしたのかもしれない。


「情報ありがとう」


 俺は続けて質問した。


「二つ目だが、うちのクランに、《竜騎士》の称号を持つ子がいるんだが――」


「はあ!? 《竜騎士》だと!? そんな伝説級の称号持ちがいるのか! 今度ここに連れて来い!」


「一年ほど用事があって無理だな。それより、ドラゴンの飼育について知りたい。必要な敷地とか、何でもいい」


「知らん!」


 即答かよ。


「ただな、その手のノウハウがあるとすれば、北のドランヴァール王国だろう。昔から『竜騎士団』を擁している国だ。ドラゴンも飼っているはずだぞ」


 ドランヴァール王国……。

 青龍族のリオナの故郷だな。


「最後の質問だ。冒険者になれるのは十五歳からだが、それ以下の子供をダンジョンに入れる方法はあるのか? 何か申請がいるとか。俺はエルセリオンのダンジョンに潜ったとき、十五歳に満たない子供たちを先導している冒険者を見たことがあるんだ」


 エルセリオンで見た光景を思い出しながら尋ねる。


「魔法学園の実習だな。学校から申請があれば、許可するダンジョンもある。判断は各ギルド長次第だ」


「この王都は?」


「禁止している」


「理由は?」


「冒険者が多すぎる。子供向けの魔物もいるにはいるが、成長した生徒がオークを狙い始める。そうなると、学校と冒険者で揉めるんだ」


 確かに、王都ダンジョンのオークは冒険者同士でも取り合い状態だ。


「つまり、揉め事が多すぎて禁止にしたと」


「そうだ。毎日クレーム処理なんてやってられるか」


 なるほど。

 エヴァルシアでは許可してほしいものだ。

 ギルドが稼働したら、レオンに相談してみよう。


「ありがとう。質問は以上だ」


 そう言うと、ガルドがニヤリと笑って、


「じゃあ今度は俺から――今日、ドラゴンゾンビを倒したあと、エリュシアがポーズ取ってただろ? ああいうの、今後も――」


 次の瞬間。


 ガルドの前にあった机が、ドラゴンの爪で深くえぐられた。


 真っ赤な顔で睨みつけるエリュシア。


「す、すまん。冗談が過ぎた」


 室内に、重苦しい沈黙が落ちた。

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