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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第三章 エヴァルシア開発編

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115 アンデッド迷宮(1) リアルタイム

 エヴァルシア開発四日目。


 セレナの屋敷は完成した。だが、残念ながら細部まで見て回る暇はない。実はセレナ自身も、今日と明日は王都で用事があり、屋敷をじっくり確認できないのだ。メディアはティアを連れ、仮屋敷のすぐそばに教会を建てると言っていた。その仮屋敷は、今後そのまま孤児院になる予定である。おそらく大陸中で一番巨大で、一番立派な孤児院になるだろう。


 そして俺は〈百花繚乱〉として、エヴァルシアに存在するダンジョンに潜る。

 一応、このダンジョンは仮称で『アンデッド迷宮』と呼ぶことになっている。まあ、明日には踏破するつもりなので、そう呼ばれるのも明日までだが。

 今回潜るメンバーは、俺とイレーヌ、リディア、エリュシアの四人だ。この四人だけでダンジョンに挑むのは、実はこれが初めてになる。


『レオン、準備できたぞ』


 今回のためにレオンへ渡していた腕輪には、〈念話〉スキルを追加しておいた。


『おお。じゃあダンジョンの前で待っててくれ。セレナと一緒に冒険者ギルドに行く。こっちの準備が整ったら連絡する』


『了解。そっちは頼んだ』


 俺たちは、エヴァルシアのダンジョン――『アンデッド迷宮』の前で待機することになった。



 一方、王都では――


 レオンとセレナは王都の冒険者ギルドで、ギルド長のガルドを呼び出していた。


「おう、ガルド。ちょっと大事な用事だ。会議室で話せないか?」


「おう、新米ギルド長のレオンじゃねぇか。先輩の俺が何でも教えてやるぞ? ……お? 後ろにいるのはセレナ騎士爵様じゃねぇか。珍しい組み合わせだな?」


「ガルドさん、ご無沙汰しています。大事なお話があるので、会議室でお時間をいただけませんか?」


「ふむ? わかった。とりあえず会議室に行こう」


 会議室に着くと、レオンはマジックバッグから横二メートル、縦一メートルほどの板状の物体を取り出した。元の世界でいう八十インチテレビほどのサイズのモニターだ。それを会議室の壁に掛ける。


「ガルド、ひとまずこれを見てくれ」


 そう言ってモニターを起動すると――


「ん? レオン、これは……ダンジョンの入口の絵か? いや、違うな。これ、あれか? 最近オープンした店に置いてある、“動画”とか“映像”って呼ばれてるやつか?」


「おお、ガルド。理解が早くて助かるぜ。そうだ、“映像”だ。そして、現在のエヴァルシアの様子だ」


 そこへセレナが畳みかける。


「ガルドさん。エヴァルシアでダンジョンを発見しました。それが、今このモニターに映っているものです」


 ガルドは目を見開いた。


「おお! そいつはめでたいな、レオン! お前のギルドは安泰だぞ! じゃあ早速、調査するパーティに指名依頼を――」


「ああ、ガルド。それは大丈夫だ。今から、このダンジョンを発見した当人たちが調査に入る」


 そう言って、レオンは一本のマイクを取り出した。


「アレス、ダンジョンアタック開始だ」


 レオンがマイクに向かって声をかけると、モニターの向こうに〈百花繚乱〉の四人が映し出され、すぐに返答があった。


『了解。準備が整い次第、開始する』


 その光景を見ていたガルドが、わなわなと肩を震わせながら口を開く。


「な、なんだこれは!? エヴァルシアにいる連中と、直接やり取りしてるのか!? まさか……このままダンジョンアタックの様子を見られるのか!?」


「おう、ガルド。察しがいいな。そういうことだ。これからアレスたち〈百花繚乱〉がダンジョンアタックを行う。お前はそれを観察してくれればいい」


 しばらく呆然としていたガルドだったが、ふと何かを思いついたように動き出した。


「レオン! この……モニター、だったか? これ、他にも用意できないのか?」


「あるぞ」


「なら、もう一つを冒険者ギルドの掲示板の横あたりに設置してくれ。冒険者たちにも見せたい」


「そうか? アレスたちの動きは、あんまり参考にならん気もするけどな。まあいい、設置してくる」


 レオンが設置を終えて戻ってきた頃、モニターの中からアレスの声が響いた。


『レオン、こちらは準備完了だ。ダンジョンアタックを開始していいか?』


「ああ、存分にやってくれ」


『了解。〈百花繚乱〉、『アンデッド迷宮』のダンジョンアタックを開始する』



 ――アンデッド迷宮 地下一階。


 ダンジョンの第一階層は、墓地だ。湿った空気が漂い、床一面には土と石が混じった地面が広がっている。そこかしこに並ぶのは、元の世界で見られる西洋風の、背の低い墓石だ。胸ほどの高さもない平たい石板や、丸みを帯びた小さな墓標が、規則正しく地面に突き立てられていた。


 墓石と墓石のあいだには、十分な幅を持つ道が設けられている。人が数人並んで進み、剣や槍を構えても窮屈さはない。だが道の左右には必ず低い墓石が連なり、視界の下半分を埋め尽くすため、足元と動線は常に制限される構造になっていた。


 低い墓石は、遮蔽物としては中途半端だ。完全に身を隠すことはできないが、剣を振るえば刃が当たり、跳躍や踏み込みの邪魔になる。敵も味方も等しく動きを縛られ、派手な立ち回りは自然と封じられていく。回り込もうとすれば墓石の列が進路を区切り、距離を取ろうにも後方には同じような道が続くだけだ。


 これまで俺たちが潜ってきたダンジョンは、石造りの迷宮ばかりだった。だがここは違う。壁はなく、墓地と墓地のあいだの道でなければ戦いづらいように、最初から作られていた。


「全員の武器と防具に〈光魔法〉を付与するぞ。エリュシアはドラゴンの爪な」


 俺は全員に〈光魔法〉を付与した。


「最初の数体はドロップに変えてみる。死体回収でも問題なさそうなら、その後は“全滅バッチ”を組んで走り抜ける。フォーメーションは、さっき話した通りだ」


「了解」

「承知しました」

「りょーかい」


「じゃあ、進むぞ」


 ちなみにフォーメーションは以下の通りだ。


 前衛 エリュシア、リディア

 中衛 イレーヌ

 後衛 アレス


 本来なら俺も前衛に立つのだが、エリュシアとリディアがいれば十分だ。それに、撮影用のカメラを常に俺の頭上に浮かせることにしたので、今回は後衛に回ることにした。



 ――一方、王都アルトヴィアにあるエヴァルシア商会店舗の大型モニター前。


「なんだあれ? 誰かダンジョンアタックしてるぞ!」

「あれ、リディアさんとエリュシアさんとイレーヌさんだ! 〈百花繚乱〉じゃないか!」

「いきなり墓地から始まるダンジョンなんて、聞いたことあるか?」

「これ、もしかして未発見だった新規ダンジョンなんじゃないの?」

「すげぇ……他のパーティのダンジョンアタックを生で見るのは初めてだ!」



 ――一方、王都アルトヴィア《万紫千紅》の屋敷。


「こら! 興奮するのはわかるけど、騒がない! みんなでおとなしく見るのよ!」


 〈緋桜(ひざくら)守人(もりびと)〉の三姉妹は、子供たちを落ち着かせるのに必死だった。


「リオナ、エリュシア姉ちゃん、やっぱりかっこいいね」


「そりゃそうよ。私たちのお姉さんだもの」


 シアとリオナも、リビングのモニターに映る〈百花繚乱〉のダンジョンアタックの映像を、興奮を隠しきれない様子で見つめていた。



 ――アンデッド迷宮 地下五階。


 前の階層までに現れたゾンビは、いずれもドロップがなかった。そのため、“全滅バッチ”で一気に走り抜けてきた。ここから新たにスケルトンが出現し始めたが――


「ドロップなしか。スキルも大したことないな。ここも“全滅バッチ”でいいか。……あ、レオン、聞こえてるか?」


 カメラに向かって話しかけると、カメラからレオンの声が返ってきた。


『どうした、アレス』


「まだ先だが、一応先に聞いておきたくてな。地下十階のボスの映像、必要か? どうせダンジョン構成を変えるなら、今のボスが何かって情報は、あまり意味がない気もするんだが」


 少し間が空いてから、返答があった。


『ガルドが、一応見ておきたいそうだ。ボス部屋に入ってしばらく撮影したら、倒しちまっていい』


「了解」


 俺たちはスケルトン相手に“全滅バッチ”を組み、そのまま地下十階を目指して駆け出した。

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