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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第三章 エヴァルシア開発編

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108 映像制作と岩山ひとつ

 翌日。

 朝食を終えたあと、ヒカルとミリアをエヴァルシアに向かっているセレナたちのもとまで送り届け、そのまま屋敷へ戻ってきた。

 ちなみに商会長のオルヴェナには、いつの間にか〈監督[1]〉と〈演出[1]〉が生えていた。レベルアップを頼まれてはいるのだが、これでスキルのレベルを上げたら注文の内容まで一段と高度になりそうで、正直かなり躊躇している。


 このあと俺は、昨日撮影した映像素材の編集作業に入らなければならない。

 もともと映像素材は、一秒間に百二十枚の画像データをパラパラ漫画のように並べた魔法陣として保存している。そのため、映像として不要な部分は、該当箇所の魔法陣を消すだけでいい。

 音データは一秒間に四万八千回のタイミングで保存されており、画像データ一枚につき、四百個の音データが紐づいている。だから映像の魔法陣をカットすれば、その場面の音も同時にカットできる仕組みだ。


 ただし、この編集作業はいまのところ俺の頭の中でしかできない。

 映像素材に対して〈バッチ処理〉をかなり複雑に構築しているからだ。これを他の人間にも扱えるようにするとなると、ボタンやスライダーが付いた専用装置を作り、さらに高度な〈バッチ処理〉の魔法陣を付与する必要がある。

 実現するとしても、だいぶ先の話になるだろう。


「しかし、テロップの指定までしてくるとは……」


 現状、テロップは手書きの文字を出すしかない。文字を打ち込む装置なんて作っていないし、そもそもフォントから用意しなければならない。これもまた、先の話だ。



 一時間ほどかけてヒカルとミリアの動画を完成させ、商会長のオルヴェナに見せたところ――


「うーん。ここはこの映像のまま、少しだけ停止できる? あと、ここで急に黒背景に白文字だけの画面に切り替えて、『あなたには使いこなせる?』って煽り文句を追加したいわね」


 まさかの追加・変更。

 なんだか元の世界で、こういう仕事をしていた気がしてきた。言われたとおりに作ったのに、「やっぱりここ、こう変えて」って言われるやつだ。


 さらに数か所の追加・変更依頼を受け、その場で編集しては見せ、また修正を加える、という作業を繰り返した結果、完成したのは夕方だった。


「ふぅ……。これで映像は完成かな。ひとまずは、この二本だけ流すんだよね?」


「いえいえ、とんでもないです。アレスさん。武具コーナーで流す残り八本の映像も、もう決まっていますよ。明日から撮影、お願いしますね」


 そう言って、残り八本分の絵コンテを渡される。

 ……うわ、マジかよ。


「それから、服飾コーナーで流す映像がこちらの十本。さらに、もう一つ大型の動画再生機を作ってもらって、店全体の情報を流す映像がこちらの十本です」


 追撃のように、さらに二十本分の絵コンテ。

 ……嘘でしょ。


 その日の夜の相手は商会長のオルヴェナだったので、仕返しとばかりに〈監督〉と〈演出〉をレベル8まで上げて動けなくしてやったのだが、後日、俺はこの行為を心から後悔することになる。


 ◇


 さらに翌日。

 ふと、ヒカルとミリアが今後一年間、ノワゼリア侯爵のもとで剣術指導と騎士団の訓練指導を行う予定だという話を、商会長のオルヴェナの前でしたところ――


「え? じゃあヒカルさんとミリアさん、一年間はダンジョンに入らないんですか?」


「そうなるね」


「それは困ります! 今のうちに、ダンジョンの撮影も終わらせましょう!」


 その日のうちに、またヒカルとミリアを迎えに行き、王城地下迷宮の地下四十一階でトロール相手に撮影を行った。

 商会長のオルヴェナは、他の魔物の映像も撮りたいと言っていたが、撮影しながら進めばその日のうちに帰れなくなる。結局、トロールと、次の階層のコカトリスだけで我慢してもらった。


 その日も時間ぎりぎりまで撮影が続き、夜はまたヒカルとミリアの相手をすることになった。



 さらに日が変わり、朝からヒカルとミリアを送り届けて戻ってくると、今日も撮影をするという。


「オルヴェナ、ちょっと待ってくれ。昨日撮った映像、まだ編集していない」


「アレスさん、オープンまで時間がないんです。今日撮影しないと間に合いません」


 どうしても撮影すると譲らないので、三十分だけ待ってもらうことにした。


「お待たせ。今後、カメラマンはリンファに任せる。リンファと一緒に撮影してくれ」


 俺はさきほどの三十分でリンファに〈撮影[8]〉を渡し、俺の代わりにカメラマン役をお願いした。


 ◇


 三日後。

 リンファが撮影してきた素材をひたすら編集し、商会長のオルヴェナから、さらに高度になった追加・変更の指示を受ける。

 しまいには、最初に作った映像にナレーションと音楽を入れると言い出し、ナレーションを録音させてみれば、完成済みの映像よりナレーションのほうが長い始末で、「映像のほうを伸ばして」と言われたり……。


 正直、かなり泣きそうな毎日を繰り返した結果、ようやくすべての映像が完成した。


 ちなみにナレーションは、商人の四人とリンファ、それから〈緋桜(ひざくら)守人(もりびと)〉の長女アリエルが担当している。声質や話し方の特徴を活かし、映像ごとに商会長のオルヴェナが割り振ったそうだ。

 アリエルは今回の動画用に三十曲も作曲させられているが、本人は特に苦ではなかったらしい。なお、この三十曲は音データとして別途録音され、店内に設置した魔導スピーカーから流すBGMとして使われることになっている。


 撮影モデルには、先日のヒカルとミリア以外にも子供たちやレオンが参加しており、服飾コーナーのモデルにはエルマとレオンの妻も参加している。

 実際のところ、俺以外はみんな、なんだかんだで楽しかったらしい。



 ようやく少しはゆっくりできるかと思ったところで、リーファリア女王フィオレルから〈念話〉が入った。


『アレス、いいかげん岩山を取りに来るのじゃ。文官が処理が進まぬと怒っておる』


 実は、俺がもらう岩山自体は何日も前に決まっていたのだが、この動画編集地獄のせいで身動きが取れなかったのだ。


『承知しました。すぐに伺います』


 俺は“アリス”に変装し、転移魔法陣でリーファリアの王城へ向かった。



「ようやく来たか、アリス。さっさと岩山を持っていくのじゃ」


「承知しました……その、岩山はどこにあるのですか?」


「ああ、ここからも見えるぞ。あの山じゃ」


 謁見室の窓の外を指さす女王フィオレル。

 確かにその方向に岩山はあるが――


「あの山、かなり大きいようですが……本当に持って行って大丈夫なんですか?」


「ああ、構わぬ。むしろ、あの山のせいでその先の街へ行く道が大きく迂回しておってな。邪魔なのじゃ」


 そういうことなら、遠慮なくもらおう。


「わかりました。では、さっそく収納してきます」


「待て、アリス。おぬし、ドラゴンに変身して飛んでいくのであろう? わらわも乗せて――」


 女王がそう言いかけた瞬間、近くに控えていた近衛兵たちが一斉に動き、フィオレルを取り囲んだ。


「なりませぬ、女王様! この後も執務が控えております!」


「なぜじゃ! わらわも、たまには息抜きをしたいのじゃ! 離すのじゃ!」


 どうやら、ただのフィオレルのわがままらしい。


「えーと……とりあえず、一人で行ってきますね」


「アリス! 待つのじゃ! アリス!」


 近衛兵に囲まれて動けないフィオレルをそのままにして、私は岩山へと飛んでいった。


 近づいてみると、城から見ていたときよりも、はるかに大きく感じる。

 数日前から周囲は立ち入り禁止にしてくれていたらしく、このまま岩山を亜空間に収納しても問題ないよう、手配されていた。そりゃ早く取りに来いと言われるわけだ。


 さっそく岩山全体を〈空間魔法〉で囲み、そのまま亜空間へ収納する。

 岩山が消えたあとには、広大な平坦な土地が広がり、その先には女王が言っていた街もはっきりと見えた。


「あれ? この岩山、鉱石も混じってる……?」


 どうやら、ただの岩山ではなかったらしい。あとで調べてみよう。


 リーファリア王城に戻ると、女王は執務に捕まっているのか、謁見室にはいなかった。文官から「このままお帰りになったほうがよろしいかと」と言われ、そのまま転移魔法陣で、アストラニア王国の《万紫千紅》の屋敷へ戻った。



 王都の店舗オープンは明日。

 そして明後日、セレナは自身の領地であるエヴァルシアに到着する予定だ。

 俺と、現在リーファリアにいるメディアも、それに合わせてエヴァルシアへ向かうことになっている。そのため、メディアは明日、アストラニア王国王都の《万紫千紅》の屋敷へ戻ってくる予定だ。

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